国内バイクメーカーの歩み概説:戦後多くの2輪メーカーが誕生するも現在は4大メーカーのみ【バイク用語辞典:バイクメーカーの歴史編】

■エンジンを動力源とするエンジン搭載自転車で始まったバイク

●誕生や生い立ちの歴史を背景に個性的なバイクを提供する4大メーカー

日本では、欧米から40年ほど遅れて戦後の10年間に100社以上のバイクメーカーが誕生しました。急速に技術が進んだ一方で、激しい競争と厳しい淘汰によって国内4大メーカーを残してほぼすべてのメーカーが消えてしまいました。

バイクの歴史と国内バイクメーカー4社の歩みについて、概説します。

●2輪車の始まり

1885年のリートワーゲン(ゴットリープ・ダイムラー発明)
1885年のリートワーゲン(ゴットリープ・ダイムラー発明)

世界で初めて自動2輪車を作ったのは、自動車を発明したゴットリープ・ダイムラーです。1885年、左右に補助輪が付いた木製の「リートワーゲン」で現在の2輪車とは異なるスタイルでした。ただし、最初に市販化したのは、1894年のドイツ「ヒルデブラント&ヴォルフミュラー(H&W)」でした。

1913年発売のアサヒ号(宮田製作所)
1913年発売のアサヒ号(宮田製作所)

一方日本での市販化は、1909(明治42)年の「島津モーターNS号」、1913(大正2)年には宮田製作所の「アサヒ号」が量産化されました。本格的にバイクが普及したのは戦後になってからです。4大メーカーのホンダ、スズキ、ヤマハ、カワサキが創業することで日本の2輪車市場が一気に勢いづきました。

国内4大メーカーの歩みの概要は、以下の通りです。

●ホンダ

1949年発売のドリームD型号
1949年発売のドリームD型号

ホンダの起源は、1946(昭和21)年本田宗一郎が静岡県浜松市に創立した「本田技術研究所」です。まず、1947年にエンジン搭載自転車用の「A型エンジン」、1949年に自社開発の本格バイク「ドリームD型号」の生産を開始します。1952年には、白いタンクに赤いエンジンカバーが特徴の「カブF型」を発売し、爆発的なヒットを記録します。

開発当初からレースに積極的に参戦、マン島TTレースを制覇するなど好成績を残し、ホンダの名は世界に知れ渡ることになります。以降も、ロングランヒットの「スーパーカブ」やファミリーバイク、ロードスポーツと全方位でヒットを飛ばし、現在世界N0.1のバイクメーカーに君臨しています。

●スズキ

1952年発売のパワーフリー号
1952年発売のパワーフリー号

スズキの起源は、1909(明治42)年に鈴木道雄が浜松市に設立した「鈴木式織機製作所」です。将来を見据えて自動車事業への参入を決断、まずはエンジンを動力とするエンジン搭載自転車の開発からスタートしました。1952(昭和27)年に発売したエンジン搭載自転車「パワーフリー号」、「ダイヤモンドフリー号」は大ヒット。この成功を受け、社名を「鈴木自動車」と改めます。

戦後本格的な2輪車の開発に取り組み、1955年に発売した「コレダ号」は、技術力をアピールして大ヒットします。その後も、原付バイクや小型バイクを主力として、また大型についてもスズキらしい個性的かつ先進的なバイクを提供しています。

●ヤマハ

1954年発売のYA-1 (赤トンボ)
1954年発売のYA-1 (赤トンボ)

ヤマハは、楽器メーカーから生まれたユニークなバイクメーカーで、その起源は「日本楽器株式会社」です。第二次世界大戦中は、軍需工場としてプロペラなどの軍事品を製造ます。戦後1953(昭和28)年になって、川上源一社長が2輪車事業への参入を決断し、1955年日本楽器製造から分離独立する形で「ヤマハ発動機」が設立されます。

1954年に初めて市販化した「YA-1(通称、赤トンボ)」は、高性能と洗練されたスタイリングで爆発的な人気となり、ヤマハの記念すべき第1号になりました。その後も、パッソルのようなファミリーバイクから、モトクロッサー、ロードレーサー、電動バイクなど多種多様なバイクを世に出しています。

●カワサキ

1954年発売の川崎号
1954年発売の川崎号

カワサキ(川崎重工)の前身は、川崎正蔵が1896(明治29)年に設立した「川崎造船所」です。

川崎造船所は、造船だけでなく機関車や戦闘機、さらにトラックやバス、乗用車も製造しました。戦後になって、分離した川崎航空機が「メイハツ」という車両製造の子会社を作ってバイクの製造を開始します。

1954(昭和29)年、カワサキ初のスクーター「川崎号」を生産しますが、販売は低調でした。その後、1965年にメグロを吸収して「カワサキ500メグロK2」を発売します。これを機に、高性能の大型バイクで人気を集め、大型バイクの硬派なカワサキのイメージが定着しました。


本章では、国内4大バイクメーカーのホンダ、スズキ、ヤマハ、カワサキの起源や歩みについて、それぞれ個別に解説します。

Mr.ソラン

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この記事の著者

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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