カワサキの歩みとは?:造船会社を起源とする川崎重工から分離してバイク事業に参入【バイク用語辞典:バイクメーカーの歴史編】

■第二次世界大戦後、川崎航空機(川崎重工)が戦闘機からバイク事業に転身

●初めてのバイクはスクーターだが、その後は大型バイクの製造が中心

カワサキは、川崎重工でバイクの製造・販売を事業とする社内カンパニーのひとつです。川崎重工の起源は古く、1896年に設立された川崎造船所ですが、事業の多角化によって日本を代表する重工業メーカーに成長します。

大型バイクの国内トップシェアを誇るカワサキの歩みについて、解説します。

●起源

カワサキ(川崎重工)の前身は、川崎正蔵が1896(明治29)年に設立した「川崎造船所」です。

川崎造船所の初代社長には、松方幸次郎が就任しました。その後、造船だけでなく機関車や客車なども手掛け、1918年には戦闘機、さらにトラックやバス、乗用車も製造しました。

事業の多角化によって、戦前は造船の川崎重工、鉄道車両を製造する川崎車輛、航空機の川崎航空機へと分離します。戦後、川崎航空機は軍需から民需に転換し、最初は二輪用エンジンの供給を行っていましたが、「メイハツ」という車両製造の子会社を作ってバイクの製造を開始。そして、1954年カワサキ初のスクーター「川崎号」が誕生します。その後1969年に、川崎重工、川崎車輛、川崎航空機が合併して川崎重工となりました。

●川崎正蔵の創業までの生い立ち

川崎重工業の創始者である川崎正蔵は、造船所からスタートして世界の川崎重工業へと発展させました。創業までの略歴は、次の通りです。

・1837(天保8)年、鹿児島の呉服商人の子として生まれる

・1854(嘉永6)年、長崎で貿易商の修行に励む

・1869(明治2)年、薩摩藩士が設立した琉球糖を扱う会社に就職

・1874(明治7)年、日本国郵便蒸気船会社の副頭取に就任

琉球航路を開設、砂糖の内地輸送を成功させる

・1878(明治11)年、東京築地に「川崎築地造船所」を設立

造船所は、同郷の先輩であった松方正義(後の総理大臣)の援助によって設立

・1896(明治29)年、「株式会社川崎造船所」を神戸に設立

社長には、松方幸次郎(正義の三男)が就任、その後川崎重工という大企業へ成長

●カワサキのバイク史概要

カワサキのバイクの歴史は1954年発売の「川崎号」で始まりましたが、カワサキの2輪車が有名になったのは、大排気量のバイクを製造し始めた1960年代に入ってからです。

1954年発売の川崎号
1954年発売の川崎号

・初めてのスクーターバイク
カワサキが初めて市販化したのは、スクーター型バイクの「川崎号」。性能は優れていましたが、バイクメーカーが乱立していた時代に販売ネットワークを持たなかった川崎航空機では、販売を伸ばすことはできませんでした。

1965年発売のカワサキ500メグロK2
1965年発売のカワサキ500メグロK2
1972年発売のZ1
1972年発売のZ1

・メグロ(目黒製作所)を吸収、W1シリーズによってスポーツバイクメーカーの地位を確立
1965年にメグロの伝統を引き継いだ「カワサキ500メグロK2」を発売。翌年には、当時国内最強・最速の「650W1」を発売。その後、1972年の「Z1」によってカワサキは本格的なスポーツバイクメーカーとしての地位を確立

2002年発売のDトラッガー
2002年発売のDトラッガー

・スーパーモタードのジャンルを牽引
「戦う4ストローク」というキャッチフレーズで、本格オフロードの「KLX250」をベースに1998年に発売されたのが「Dトラッガー」。街乗り前提で仕上げられたストリートモタードとして人気となります。

2006年発売のNinja ZX-10R
2006年発売のNinja ZX-10R

・カワサキのフラグシップNinja
1984年に発売された「GPZ900R」の北米市場モデルが、初めて「Ninja」呼ばれました。900ccながら、115PSで最高速240km/hを発揮、当時「世界最速」と称されました。日本国内でNinjaの名前を持つバイクが発売されたのは10年後の1994年です。以降、カワサキのフルカウル系のバイクはほぼNinjaと名乗り、世界最速にこだわり続けるカワサキのフラグシップモデルです。


スクーターで始まったカワサキですが、現在スクーターを含めて125cc以下のバイクは作らず大型バイク中心のメーカーになっています。川崎重工が、歴史的に造船や飛行機、車両などを製造してきたことからも、カワサキバイクの大型、頑強というイメージと合致します。

Mr.ソラン

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Mr. ソラン

某自動車メーカーで30年以上、自動車の研究開発に携わってきた経験を持ち、古い技術から最新の技術までをやさしく解説することをモットーに執筆中。もともとはエンジン屋で、失敗や挫折を繰り返しながら、さまざまなエンジンの開発にチャレンジしてきました。
EVや燃料電池の開発が加速する一方で、内燃機関の熱効率はどこまで上げられるのか、まだまだ頑張れるはず、と考えて日々精進しています。夢は、好きな車で、大好きなワンコと一緒に、日本中の世界遺産を見て回ることです。
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