■じつはとても大切な普通の性能が非常に高い「エフィシェントグリップRVF02」
2021年3月に発売が予定されているグッドイヤーの新作タイヤ「エフィシェントグリップRVF02」は、多くの人が求める普通の性能がグッとアップした魅力あふれるタイヤでした。
いいタイヤ…と聞いてどんなタイヤを思い浮かべるでしょうか。
クルマ好きの人にとっては、加速時のパワーを逃がさず路面に伝え、コーナリングで高いグリップ力を発生し、強いブレーキングを実現するようなハイパフォーマンスタイヤがいいタイヤと思いがちです。
しかし、ミニバンなどに乗るファミリー層にとっては、もっと別の性能が高いほうがいいタイヤとなります。
ミニバンやハイト系のユーザーが求める性能は、静粛性、乗り心地、ライフ、低燃費…などとなっています。ハイパフォーマンスタイヤのような高いグリップ性能はミニバンの場合はかえって不快感を与えることもあります。
いわゆる普通のタイヤの普通の性能は、グリップを上げすぎればクルマの動きが急激に変化しやすくなります。しかし、急ブレーキ時の制動力はきちんと確保しなければなりません。そうしたうえで、ミニバン系ユーザーが求める静粛性、乗り心地、ライフ、低燃費などを両立していかなくてはならないのですから、その開発は容易ではありません。
グッドイヤー「エフィシェントグリップRVF02」は、そうした総合性能が高い、よくできた普通のタイヤでした。
こう書くと何ていうことはないようですが、この性能を確保できたのはなかなかすごいことです。
今回の試乗は一般公道ではなく、富士スピードウエイ内にあるトヨタ自動車の施設「モビリタ」で行われました。サーキット内の施設ですが路面は一般公道と同等で、タイヤのゴムが路面にへばりついているラバーグリップも起きていません。
試乗車として用意されたのはアルファード、装着タイヤサイズは235/55R18 101Wです。
何も考えずに乗り込んで走らせると、確かにかなり静かな印象です。アルファードそのものが高級志向のクルマで、車外騒音やタイヤノイズなどを抑えるタイプの設計ですが、それにしても静粛性はかなり高い印象です。加速状態はもちろん、アクセルを離して滑走させても気になるノイズを感じることはありませんでした。
ステアリングが直線状態でノイズが発生しないだけではなく、ステアリングを切った状態でもノイズが出てこないのはなかなかの好評価です。
試乗コースには連続する段差を作った波状路も用意されましたが、この乗り越えも好印象でした。乗り上げれば当然“トン”という音とともに振動が出ますが、それがすんなりと収まってくれて不快な印象を受けません。
用意されたスラロームセクションは40km/hの速度指定がされていました。このスラロームはアクセルを踏んだり、緩めたりといった操作を行うとスムーズに通過できますが、アクセルを一定で40km/hで走るとギリギリクリアできるといったキツさです。
ステアリングを切った瞬間にスッと向きを変えていきますが、キツさはありません。この曲がり始めがグィっと急なものだと、後席に乗っている人は振り回されるようになってしまいますが、そうした事はありません。適度な横方向のグリップがなだらかに立ち上がるのです。
左右にステアリングを切ってスラロームを抜けて行く際も安定感を失うことはありませんでした。外周路を60km/hオーバーでコーナリングしながら、ステアリングを戻したり切り増したりしましたが、サイドウォールがよれて腰砕けになるようなことのない、良好な挙動を示しました。
ウェットグリップについてもとくに気になるほどの低下は感じられませんでした。ウェットのテストは散水された路面に40km/h程度で進入し、110度程度転舵します。
転舵当初はVSCが作動し、クルマが外側に膨らみますが、それが収束すると一気にグリップが復活し、クルマがインに向きます。グリップの回復が若干急すぎる印象もありましたが、これはクルマ側の制御も関わってくる部分なので一概には評価しにくいところです。
40km/hからのブレーキングだと、ウェットでもドライに迫る制動距離で停止でき(タイヤが新品だったので、ウェットブレーキは最良の条件)、安心感がありました。
今回の「エフィシェントグリップRVF02」の試乗はテストコースでのみで、高速走行での安定性や車線維持装置とのマッチングなどがチェックしきれていませんが、「ミニバン用タイヤとしてかなり総合性能が高い」ということは間違いないという印象を受けました。
(文・写真:諸星 陽一)