フロントガラスも冬支度しよう。冬の朝、凍り付いたフロントガラスに熱湯はダメ!?

●凍ったガラスに熱湯をかけてはダメ。正しいガラスの冬支度をして、出発までの時間短縮をしよう

朝晩の冷え込みが一層強くなってきている日本列島、本格的な冬がすぐそこまで迫ってきています。冬の朝、クルマに行くとフロントガラスが凍っていて、溶けるまで時間がかかり約束の時間に遅れてしまったなんて経験はありませんか。

今回は、クルマのガラスにスポットを当てて、適切なガラスの冬支度をご紹介します。

・フロントガラスは繊細な部品

合わせガラス
いまの車は合わせガラスなので、後述する部分強化ガラスのような熱処理跡は存在しません。写真は2018(平成30)年型マーチ。

クルマのフロントガラス(ウィンドシールド)は1枚のガラスでできているように見えますが、ガラスとフィルムを合わせた「合わせガラス」を使用しています。

これは事故などの強い衝撃でガラスが破損をした際、その破片が飛散しないようにするためで、飛散しないガラスは乗員をガラスの破片による怪我から守る目的と、歩行者などが万一ガラスに体を打ち付けた際などにクッションの役割を持つように設計されています。

クルマのフロントガラスには、合わせガラスを使用することが1987年から義務化されました。

部分強化ガラスの熱処理跡
別の写真でもういちど。この縦縞は、ガラスを強化するために熱処理した跡。昔の車のフロントガラスを、光が反射する位置から眺めると見えた模様です。写真は初代セリカST。ただし同じセリカでも、上位のGTとGTVは合わせガラスが用いられました。
部分強化ガラス時代に発売されたAE86スプリンタートレノ
1983(昭和58)年に発売された当時のAE86スプリンタートレノ。赤い楕円に囲まれた部分の縦縞模様がおわかりになりますか?

1987年の義務化以前に製造されていたクルマの中には、フロントガラスに合わせガラスを使っていないクルマがあります。

たとえば1983年に販売が開始されたAE86では、標準で部分強化ガラスを使用し、アフターパーツとして合わせガラスが登場しました。部分強化ガラスには、油膜後のような縦線の模様が見えるのが特徴です。

対して、ウィンドシールド以外のドアガラスやリアガラスには強化ガラスを使用し、割れた際には粉々になるようになっています。クルマが水没した際や、事故で変形してドアが開かなくなった際に脱出口として使用できるよう、ドアガラスには破砕ガラスが使用されます。

冬の道
スタッドレスタイヤの準備と同じように、ガラスの冬支度してみませんか。

一般的に、ガラスは温められると膨張し冷やすと収縮します。霜がついている状態、つまり表面温度が0度以下にあるガラス面に熱湯をかけると、瞬く間に90度から100度ほど温度変化を起こします。

強度の高められた合わせガラスでも急激な温度変化に耐えきれず、もしガラス表面に飛び石傷や、小さな割れのような弱くなっている部分があると、そこからヒビが入ることがあります。また小さな傷が広がって、大きな破損につながってしまうこともあるのです。

ウィンドシールドに熱湯をかける行為は、ウィンドシールドの破損につながり、おすすめできる行為ではありません。

・早く凍り付いたフロントガラスを復活させたい

霜の降りたウィンドシールド
霜取りや凍り付きには、ガラスに負荷のかからない方法を選んで対処しましょう。

では、霜取りや凍り付いたウィンドシールドへの対処方法にはどのような方法があるのでしょうか。

最も簡単なのは、水道水やぬるま湯をかけることです。水をかけても軽度の霜であれば簡単に取れます。バケツ2杯分くらいの多めの水をかけるといいでしょう。

しかし、外気温が氷点下となっている場合には話は別です。水をかけて一時的に霜が取れたとしても、かけたそばから水が凍ってしまうため、また凍ったウィンドシールドに逆戻りです。このような場合には、市販の解氷スプレーを使用するか、車内からデフロスターを使用して、ゆっくりと氷を溶かしていくしかありません。

・降雪地で重宝しているフロントガラスの冬支度

クルマのガラスが凍り付く原因は、冷えた外気にガラスが冷やされ、その上から水分(霜や雨・雪など)が付着して氷の状態になります。霜などの水分がつかない環境を作ることができれば、ガラスが凍り付くことはありません。ガレージなどの屋内での保管や、カー用品店で売っているフロントガラスカバーをかけるのも効果があります。

東北地方の山間部に住んでいる筆者は、本格的な冬を迎える前に、必ず行う冬支度があります。フロントガラスの撥水加工です。市販の塗り込むタイプやスプレータイプの撥水剤を塗ります。自分で行うのが大変だという場合には、ガソリンスタンドやコーティングショップなどでも施工してくれるでしょう。

撥水ガラス
撥水ガラスは水をはじくため、凍った状態でもフロントガラスから取り払いやすくなります。

おすすめはフッ素系ガラスコーテイングで皮膜が形成されるものです。おおよそ3か月から半年ほどの効果ですから、冬季期間中は効果が弱くなる前に、こまめにかけ直します。

霜も氷も雪も、元は水です。水分がガラスに密着して凍ってしまい、ガラスから氷を取るのに苦労をするわけです。フロントガラスが撥水加工をされていれば、仮に凍ってしまっても、ガラスが水分を弾いた状態で凍るので、ガラス表面が凍り付くことは少なく、手で払ったり、雪と一緒に下ろすだけで、綺麗なガラス面が出てきます。クルマの冬仕度としてガラスの撥水加工をしておくと、冷え切った朝でもスムーズに出発することができるでしょう。

・まとめ

凍り付いたガラスには手を焼きますが、絶対に熱湯をかけるのはダメです。

ウィンドシールドが割れてしまうと、高額な修理費用が掛かりますし、そのままの状態では車検にも通りません。衣替えやお部屋に暖房器具を準備するように、撥水ガラスコーティングでクルマの冬支度も済ませておきましょう。

文:佐々木 亘 写真:中野幸次(セリカ)/花村英典(マーチ)

この記事の著者

佐々木亘 近影

佐々木亘

大学卒業後、銀行員になるも3年で退職し、大好きだった車の世界へ足を踏み入れました。自動車ディーラー営業マンへ転職し、レクサス・セールスコンサルタントとして自動車販売の現場に7年間従事します。
現在はフリーライターとして独立し、金融業と自動車ディーラーでの経験を活かして活動中です。車にまつわる金融・保険・法規などの、小難しいテーマを噛み砕き、わかりやすい情報へと変換して発信することを心がけています。常にエンドユーザーの目線に立った、役立つ情報を届けていきたいと思います。
続きを見る
閉じる