2020年のカー・オブ・ザ・イヤー受賞はこのクルマで間違いない!?走りの質感はクラスナンバー1(吉川賢一)【ホンダ・フィット試乗】

■予想を遥かに上回る走りの質感を備える新型フィットに驚いた!

●抜群なシャシー性能を生かしたスポーツグレードが欲しい!!

2020年カーオブザイヤーカーは、おそらくこの新型フィットでしょう。特に、乗り心地や音振性能といった走りの質感に関する完成度がここまで高いとは、予想していませんでした。

ホンダ・フィット NESSのサイドビュー
ホンダ・フィット NESSのサイドビュー

この度のフルモデルチェンジで4代目(GR型)へと進化した新型フィットは、先代同様、全幅1.7m未満の5ナンバーサイズに抑えており(CROSSTARのみ3ナンバーサイズ)、ユーザーのライフスタイルに合わせて、BASIC、HOME、NESS、CROSSTAR、LUXEの5つの中から好みのグレードを選択できる、という、ユニークなラインナップとなっています。

ホンダ・フィット e:HEV BASIC
ホンダ・フィット e:HEV BASIC
ホンダ・フィット e:HEV HOME
ホンダ・フィット e:HEV HOME
ホンダ・フィット e:HEV NESS
ホンダ・フィット e:HEV NESS
ホンダ・フィット e:HEV CROSSTAR
ホンダ・フィット e:HEV CROSSTAR
ホンダ・フィット e:HEV LUXE
ホンダ・フィット e:HEV LUXE

本記事では、この新型フィットの魅力とともに、試乗を通して感じた課題についても考察していきます。

●ロードノイズが非常に静か! 突起ショックも小さく、一般道も高速も至極快適

昨今のコンパクトカーの中で、新型フィットはTOPレベルで静かです。特に、中低速(~60km/h)では、バツグンの遮音性能をもっています。「サー」という小さめのロードノイズで音量も小さく、車内の快適性を引き上げています。高速走行時も、「ゴー」というノイズは聞こえますが、それでもこのカテゴリでは相当に静かなレベルです。遮音機能付フロントウインドウガラスや、吸遮音材の効果的な配置だけでなく、車体の局所剛性やパネル面剛性を上げて、音の振動伝搬を防ぐ構造となっていることも効いている、と考えられます。

ホンダ・フィット e:HEV LUXEの走り
ホンダ・フィット e:HEV LUXEの走り

またタイヤと路面とのあたりが柔らかく、路面表面の凹凸を綺麗にいなす乗り心地をしています。旧型フィットに対し、タイヤが1ランク柔らかくなったような印象も受けます。筆者は、別の試乗機会と合わせてBASICを除く4グレードにそれぞれ試乗させていただきましたが、ハイブリッドモデルはどれも同じ印象でした。しかしながら、高速走行中は上下のフワ付きを感じます。ボディの動きをもう少し抑制できていれば、より安心感が増すと考えられます。ガソリン仕様で試乗したNESSでは、やや足が引き締まったように感じました。

ホンダ・フィット NESSのホイール
ホンダ・フィット NESSは16インチアルミホイールを標準装備。
ホンダ・フィット e:HEV LUXEのホイール
ホンダ・フィット e:HEV LUXEも16インチアルミホイールが標準。BASICとHOMEのホイールは15インチスチールとなる

●素の直進性も良い新型フィット。ホンダセンシング標準装備

フィットの高速直進性は良く、ステアリングにそっと手を添えていれば、気を使わなくとも直進していきます。轍を跨いだり路面のギャップを踏んでも、ステアリングが左右に取られたり、サスペンションが跳ね上げられることもなく、終始、安心して運転することができます。

ホンダ・フィット NESSの走り
ホンダ・フィット NESSの走り

さらには、標準装備されているHONDA SENSINGには、車速ゼロまで追従するACCや、適切な介入量でハンドルアシストをしてくれるLKAS(レーンキープアシスト)が備わっており、その動作の安定性と安心感は素晴らしいものでした。前走車の追従時に、やや強めに減速Gが入ったシーンもありましたが、概ね優秀な動作をしており、極めて信頼のおける先進運転支援技術といえます。燃費を伸ばす目的でも、HONDA SENSINGは積極的に使うことをお薦めします。

●視界の広さはコンパクトカーナンバー1! Aピラーの細さとフラットなダッシュボードが貢献

前方視界の良さは、新型フィットの最大のポイントです。従来のAピラーにあたる柱を細幅化し、ワイドで見晴らしの良い視界を実現しています。

ホンダ・フィット e:HEV LUXEのインパネ
ホンダ・フィット e:HEV LUXEのインパネ

ドライバー席からの死角に対しては、各メーカーから、これまで様々な対策が登場してきました。サイドミラーの根元をピラーではなくドアに設置したり、小窓をつけたり、軽スーパーハイトワゴンでよく見られるような、助手席側にサブミラーを付けたりと、試行錯誤されてきましたが、この新型フィットの前方視界に敵うものはないでしょう。ちなみに、その分で落ちた車体強度は、後ろ側にあるサブAピラーで確保、前面衝突や側面衝突時の前席周辺の車体強度を保つようにできています。

Aピラーの細幅化
Aピラーの細幅化

さらには、ダッシュボードには突起物を一切無くし、ナビゲーションも視界に極力侵入してこないぎりぎりの高さにおいています。お客様のメリットを突き詰めればここまで出来る、という良い見本だといえるでしょう。車幅感覚がつかむのが苦手な人や、運転初心者にとって、この視界の広さは大きな武器となると考えられます。

●新ハイブリッドシステム「e:HEV」は、静かかつ回転上昇フィーリングが優秀

また、ハイブリッドモデルには、「e:HEV(イーエイチイーブイ)」とよぶ2モーターハイブリッドシステムがホンダのコンパクトカーとして初搭載されています。

ホンダ・フィットのハイブリッドシステム
ホンダ・フィットのハイブリッドシステム

e:HEVは、駆動用モーターと発電用モーターの2つを備えており、エンジンは主に発電に徹して、幅広い領域をモーターで走ります。また、力強い加速や、高速クルージング時は、エンジンドライブにも切り替わります。このハイブリッドシステムは、発電時のエンジン騒音が小さく、しかもアクセルペダルの踏み方に応じてエンジン音がリニアに上昇するようセッティングされているため、加速時のフィーリングが良いのです。

ホンダ・フィット e:HEV LUXEのエンジン
ホンダ・フィット e:HEV LUXEのエンジン

しかしながら、1200kgの車重が影響してか、全開加速であってもマイルドな印象であり、同じく発電用のエンジンを持つライバルのノートe-POWERの方がずっと速く感じます(※ただしノートの加速時に鳴るエンジン音はガサツで相当うるさい)。

また、通常のガソリンエンジンのグレードのフィットでは、さらに加速が鈍いです。1.3L程度の排気量では、フィットを軽快に走らせるには、だいぶ荷が重いように感じます。

ホンダ・フィット NESSの走り
ホンダ・フィット NESSの走り

●フィットのもつ課題とは?

現時点で筆者が考えるフィットの課題は、先代フィットには存在した「RS」グレードが、現時点のラインアップに存在していないために、先代でファンになった方の受け入れ先がないことです。

フィットのRSといえば、排気量1.5リットルNAエンジンに6速マニュアルミッションもしくはCVTを組み合わせたグレードであり、軽量なコンパクトカーならではの楽しさを感じることができました。

先代ホンダ・フィットRS
先代ホンダ・フィットRS

新型フィットは、幅広いユーザーに受け入れてもらうため、大幅にコンセプトを変更し、キャラクタ分けしたグレード構成を導入しました。まずは、これまでと大きく路線変更していることをアピールすることが第1と考え、あえてRSを除いたのでしょう。

本当は、NESSが、RSにあたるグレードであってほしかったところですが、突起ショックの当たりの良さを優先したサスペンション設定のため、ボディモーションの抑えが足りず、常にフワフワする印象があります(しかもカラーリングも、自撮り棒をもつ、あのハイテンションユーチューバーを連想させるような…)。その名の通り「フィットネスジム」程度の軽めのイメージで、RSファンの期待する走りの良さには、全く届いていません。

●課題解決のためには、何をしたら良いのか?

新型フィットのシャシー性能は、NVHの性能がスバぬけて高いです。フロントのダンパーマウントの剛性を高める補剛パネルが張られており、アッパーインシュレータから伝搬してくる振動を車体が伝えにくくする構造となっているなど、車体のポテンシャルが高いからこそ、ここまで実現できています。

ホンダ・フィット e:HEV LUXEの走り
ホンダ・フィット e:HEV LUXEの走り

この魅力的なシャシーに、ヴェゼルやステップワゴンに搭載した1.5リットルi-VTECターボエンジンを搭載し、軽快なサウンドと、スムーズでパワフルなエンジンフィールで、新世代フィットを走らせる、さらには、小粋でスポーティなデザインのドレスアップパーツを装備した、スポーツハッチを構築すれば、心に響くユーザーは少なくない、と筆者は考えます。

●まとめ「ホンダのスポーツマインドを体現するRSの登場に期待!」

「RS」のようなグレードは、必ず出てくるでしょう。これで新型フィットの引き出しが終わるはずがありません。悩ましいのは「それをどのタイミングで出すのか」です。

2020年は、改良型のシビックタイプRが、夏ごろ登場の予定で、ホンダのスポーツマインドを対外的にアピールする絶好のタイミングです。N-BOXやN-WGNといった大衆車が多く売れ、ホンダスポーツのイメージが、徐々に薄れつつあるなかであるからこそ、新型フィットのRSを心待ちにしているファンは多いはずです。

「ホンダ フィット e:HEV LUXE」諸元表
全長×全幅×全高:3995×1695×1540mm
ホイールベース:2530mm
車両重量:1200kg
エンジン
・種類:直列4気筒
・総排気量:1496cc
・最高出力:98ps(72kW)/5600-6400rpm
・最大トルク:127Nm(13.0kgm)/3500-8000rpm
モーター
・最高出力:109ps(80kW)
・最大トルク:127Nm(13.0kgm)
駆動用バッテリー
・容量:-Ah
駆動方式:FF
トランスミッション:電気式無段変速機
燃費:27.4km/L(WLTCモード)
価格:245万9600円

「ホンダ フィット NESS」諸元表
全長×全幅×全高:3995×1695×1540mm
ホイールベース:2530mm
車両重量:1090kg
エンジン
・種類:直列4気筒
・総排気量:1317cc
・最高出力:98ps(72kW)/6000rpm
・最大トルク:118Nm(12.0kgm)/5000rpm
駆動方式:FF
トランスミッション:CVT
燃費:19.6km/L(WLTCモード)
価格:196万5700円

吉川賢一
吉川賢一さん

吉川賢一:フリーモーターエンジニア。日産自動車で主に操縦安定性に関する開発や次世代車の先行開発などを担当した後、退社。現在はモータージャーナリストとしてだけでなく、YouTuberとしても活躍中。

(写真:奥隅圭之、文:吉川賢一)

この記事の著者

Kenichi.Yoshikawa 近影

Kenichi.Yoshikawa

日産自動車にて11年間、操縦安定性-乗り心地の性能開発を担当。スカイラインやフーガ等のFR高級車の開発に従事。車の「本音と建前」を情報発信し、「自動車業界へ貢献していきたい」と考え、2016年に独立を決意。
現在は、車に関する「面白くて興味深い」記事作成や、「エンジニア視点での本音の車評価」の動画作成もこなしながら、モータージャーナリストへのキャリアを目指している。
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