80~90年代輸入車のグッドデザインを振り返る本シリーズ。第18回は、伝統の美しさやエレガントさに合理性を組み合わせた、FFスポーティサルーンに太鼓判です。
■新生アルファはFFでもスポーティに
厳しい財政難により、半国営企業からフィアット傘下となったアルファロメオは、いわゆるティーポ4プロジェクトに参画。フィアット・クロマやランチア・テーマなどの兄弟車として、1987年に発表されたのが164です。
付加物、装飾物のないクリーンなシェイプを基本的なコンセプトとしたボディは、このクラスとしては異例に強いウエッジシェイプに。相当に寝かせた前後スクリーンの大きなキャビンを載せることで、まさにFFスポーツサルーンを具現化させました。
このウエッジに沿って引かれるレリーフ状のキャラクターラインは、ドアハンドルの下端を支え、同じ幅の薄いリアランプに繋がるなど、整理されたラインの処理が見事。一方、しっかりしたプレスドアがボディに一体感を与えます。
フロントは伝統の盾型エンブレムの輪郭を強調することで、強いインパクトとオリジナリティを打ち出しました。ボンネットフード上のエンブレムに向かって引かれるVラインも、アルファの新たな個性になったと言えそうです。
また、ウエッジボディによる高いテールは先の薄いランプでより強調され、たとえばジュリエッタなど過去の成功作を想起させます。また、バンパーラインでのツートンカラー表現も同じで、ここは33などにも通じるところ。
■工房の香りを生かす造形
インテリアはアルファらしくドライバー優先の造形で、運転席を囲い込むようなインパネが特徴。ただ、ボディ同様全体的には極めてクリーンで、シンプルな面のステアリンホイールや、直線基調の表示・操作部分がモダンさも醸し出しています。
ティーポ4プロジェクトでは、他の3車がイタルデザインに任された中、164だけがピニンファリーナの担当となりました。チーフのエンリコ・フミア氏は、それだけにアルファらしさを入念に追求したのかもしれません。
164は、同時期にピニンファリーナが手がけたプジョー405との近似性がよく語られます。それは偶然というより、あえて工房の香りを感じさせる意図があったと聞きます。余談ですが、筆者には3代目のホンダのアコードにも同じ香りが感じられるのが興味深いところです。
●主要諸元 アルファロメオ 164 (4AT)
全長4555mm×全幅1760mm×全高1400mm
車両重量 1420kg
ホイールベース 2660mm
エンジン 2958cc V型6気筒SOHC
出力 190ps/5600rpm 25.0kg-m/3000rpm
(すぎもと たかよし)