全日本F3にリトライしたSUPER GT Modulo 34号車の大津選手が、今年を振り返って得たものとは?

●ステップアップのために全日本F3にリトライした大津弘樹選手

2018シーズンからSUPER GTのGT300クラス 34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3に乗る大津弘樹選手が今年、2017年以来2年ぶりに2019年の全日本F3選手権に参戦しています。

全日本F3選手権に参戦する大津弘樹選手
全日本F3選手権に参戦する大津弘樹選手

大津選手は2017年の全日本F3選手権に出場し優勝1回、2位6回、ポールポジション2回でランキング5位という成績で一度卒業をしています。2018年からはSUPER GTのGT300クラス Modulo KENWOOD NSX GT3のドライバーとしてステップアップ。また同年のスーパー耐久のST-TCRクラス Modulo CIVIC TCRのドライバーとしてもシリーズチャンピオンを獲得しています。そんな彼が2019年、再び全日本F3選手権に再チャレンジしていたのです。

F3マシンに乗る大津弘樹選手
F3マシンに乗る大津弘樹選手

2019シーズンの成績は2位が1回、3位が2回でシーズンランキングは6位となっています。1年のブランクがあったとは思えない好位置となっています。

大津弘樹選手
大津弘樹選手

そんな大津弘樹選手に最終戦岡山ラウンドのレース直後に、今年のF3をリトライした印象や感触をうかがいました。

全日本F3選手権に参戦する大津弘樹選手
全日本F3選手権に参戦する大津弘樹選手

●「追い上げの大津」ではいられない

ステップアップへの道筋としてもう一度全日本F3へリトライした大津選手。今年のF3のご自身の印象はどのようなものだったのでしょうか。

「昨年のテストでGT500マシンに乗ってダウンフォースを使いこなせないという危機感から、もう一度F3に乗りたいと思って必死にチームを探していたところスリーボンドさんからお話をいただいて全日本F3に再挑戦できることとなりました。これは本当に恵まれています。スリーボンドさんをはじめ自分のF3のチャレンジに応援していただいた皆様に改めてお礼と感謝を伝えたいと思います。」

と感謝の言葉を述べてから、大津選手は語り始めます。

F3マシンに乗る大津弘樹選手
F3マシンに乗る大津弘樹選手

「ステップアップとはいいながら、全日本F3はそんな軽い気持ちでは臨むことは出来ません。自分が参戦しているほかのカテゴリーと違ってF3はドライバー交代がないのでマシンづくりは自分の意見で決まります。スプリングの長さの0.1mm、ウィングの角度の1度でレース結果が大きく変わるのでエンジニアの方と真剣に議論してセットを詰めていきます。レース結果は全て自分の責任で、それをチームの方々がサポートしてくれる。フォーミュラのドライバーの責任の重さ、大きさを感じています」

F3マシンに乗る大津弘樹選手
F3マシンに乗る大津弘樹選手

「今年の参戦を通じて当初の目標の達成、というよりも今の自分に足りないもの、欠けているものが何かがわかりました。それを皆さんに伝える言葉はよくわからないのですが、セッティングにしてもドライビングにしてもレースにしても「ここが欠けていたんだ!」というものを見つけることができたのは本当に得難い経験です」

F3マシンに乗る大津弘樹選手
F3マシンに乗る大津弘樹選手

全日本F3選手権のレースの中では何度も追い上げからの上位入賞、表彰台という熱いレースを見せてくれた大津選手。

大津弘樹選手
大津弘樹選手

「追い上げの大津なんて言われますし、追い上げて上位に入ればうれしいことは確かです。でもこのF3で追い上げるということは予選の順位が下にいるということで、自分にとっては大きな課題の一つでした。予選上位、できればポールポジションからの逃げ切りでレースをするのが理想ですし、これからもそうなっていくようにしなくてはいけません」

F3マシンに乗る大津弘樹選手
F3マシンに乗る大津弘樹選手

SUPER GT、スーパー耐久、そして全日本F3と全く違う3カテゴリーを戦った大津選手。それぞれどう違うのでしょうか?

F3マシンに乗る大津弘樹選手
F3マシンに乗る大津弘樹選手

「どう違うかといえば全く違います」と笑いながら答える大津選手。

「他の2カテゴリーは1台のマシンに複数のドライバーが乗りますがF3は自分ひとり。フォーミュラはエンジニアの方と苦しみながらも考え抜いてマシンを作っていきゴールを目指すのが楽しいですね」

大津弘樹選手
大津弘樹選手

「全日本F3に限らず自分がレースを続けていけるのは様々な方々のご協力やご支援のおかげです。皆さんのお気持ちを胸に、結果を残して行けるドライバーになります」と熱く語る大津選手。

この先のステップアップが大いに楽しみなドライバーとして、これからも成長と進化を続けていっていただきたいと思います。

(写真:松永和浩、高橋秀彰 文:松永和浩)

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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