スタイル、走りが定番となった欧州コンパクトハッチ「プジョー 205」【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判:輸入車編】

●新しい2ボックススタイルを目指したプジョー・205

80~90年代輸入車のグッドデザインを振り返る新シリーズ。第3回は、合理的なパッケージの実用車でありつつ、日本ではホットハッチとして人気を博した欧州コンパクトに太鼓判です。

プジョー205外観01
プジョー205GTIフロントビュー。グリルのスリットが新世代プジョーの顔を作っている

204以降着実にFF化を進めたものの、従来からの保守的なイメージから脱却できずいにたプジョーが、104と305の間を埋めるべく、まったく新しい2ボックススタイルを目指したのが1983年登場の205です。

わずか3705mm(GTI)の全長に、2420mmと長く設定されたホイールベースによるプロポーションは、旧世代とは異なる新時代のスタンスを獲得。高さのある広いキャビンとスリムなボディとの組み合わせが、いかにも80年代の合理性を感じます。

スッと引かれたベルトラインやそこに沿うキャラクターラインにより、基本は直線基調を思わせるボディですが、柔らかいAピラーや、リアクオーターで垂直に下りるサイドウインドウのR、バックドアの形状など、曲線、曲面との組み合わせが絶妙です。

プジョー205外観02
太いサイドプロテクターがボディを引き締め、かつ走りの予感を生んでいる

スラントしたフロントは、スリット状のグリルがシンプルながら独自の顔を作り、リアのガーニッシュを同様の多層表現とすることで新世代プジョーのアイコンとなり得ています。同時に、このガーニッシュと一体になったリアランプが先進感を演出。

3ドアの広いリアピラーに施された2本のアクセントは、決して「取って付けた感」がなく、フランス車らしい洒落っ気と新時代感が。とくに、1986年から本格輸入されたGTIの太いサイドプロテクターや、ホイールアーチカバーとのマッチングに優れています。

直線的なラインによるインパネは、くり抜かれたダッシュボードやボタン類を整然と並べたコンソールが80年代の機能性を提示。また、先述のGTI専用のステアリングホイールでは、これから迎える豊かな時代を象徴する特別感に溢れます。

プジョー205内装03
整然とレイアウトされた機能美が80年代を表現している

スタイリングはスティル・プジョーとピニンファリーナとの共同作業によるもの。104や305など、旧世代からの脱却に向けて綿密な意見交換が行われたといい、当初は保守方向に止まっていた提案を見事に進化させました。

80~90年代のグッドデザインには、こうして外部カロッツェリアの活躍が目立ちます。ただ、単に有名工房が関わっているから「カッコいい」ではなく、なぜ優れたデザインなのか? 本連載ではそのあたりを解きほぐしていきたいと考えています。

●主要諸元 プジョー205 3ドア GTI(5MT・1988年)
全長3705mm×全幅1590mm×全高1365mm
車両重量 880kg
ホイールベース 2420mm
エンジン 1904cc 直列4気筒SOHC
出力 100ps/6000rpm 14.4kg-m/3000rpm

(すぎもと たかよし)

この記事の著者

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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