東京オートサロンのグランプリカー「S660ネオクラシック」に公道で乗る

N-ONEのヘッドライト(あえてバルブタイプなのもクラシカルなイメージ)を流用しているのは、保安基準を満たすためには必要な要素といえます。テールレンズは汎用品をベースにした専用アイテム、フェンダーに確認できるサイドターンランプはホンダ・エレメントから流用しています。

基本的な形状は変わっていませんが、ボディカウルが樹脂製(RTM製法のFRP)となったことで樹脂ボディに対応したターンランプが必要となり、それがエレメントの純正品だったといいます。また、テールエンドに埋め込まれたハイマウントストップランプもホンダ車からの流用です。

そんなS660ネオクラシックを公道で乗ることができました。ある意味、2016年のオートサロンでもっとも評価されたマシンを操るという貴重な機会です。もちろん、中身はS660のままですから、いわゆる走りに関する部分では、けっして「ネオクラシック」ではありませんが、コクピットからの視界ではクラシックを感じることができます。

たとえばフロントフードは左右の丸目ヘッドライトに向かって盛り上がっていますが、そうしたシルエットは高速道路を淡々と走っているようなシチュエーションであっても、明らかにS660とは違うクルマに乗っていることを実感できます。

さらに、試乗当日は残念ながら雨天だったのですが、後方視界についてはノーマルとはまったく異なった印象です。もともとリヤウインドウが3分割となっているため後ろは見えづらい部類のクルマですが、さらにアクリル板によってリヤウインドウを覆っているため雨の日は曇ってしまうこともありますし、角度の違いから雨粒の付着も目立ちます。

おそらく新型車の開発基準からするとNGな部分もあるかもしれません。ですが、こうした点を不満と思わず、がまんして乗りこなすのもオートサロン的な世界観を感じるところ。

ちなみに、エンジンフードを開けるには、開閉式のリヤウインドウを開けて、そこから手を入れる必要があるというのも「改造車」的。そうした不便さも楽しめる人こそ、このキットを選ぶオーナーにふさわしいのかもしれません。

コンプリートカーではなく、中古車をベースに製作されるという「S660ネオクラシック」。ベース車次第では400万円台後半となってしまうほど高価な軽自動車ですが、これだけの完成度を誇り、安心して乗れるカスタムカーが500万円以下で手に入ると考えると、ある意味ではリーズナブル。

誰もにオススメできるタイプのクルマではないでしょうが、このスタイルを評価するのであれば、製品クオリティに見合った価格だといえるほどの完成度であることは間違いありません。

(写真:平野 学 文:山本晋也)

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山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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