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【AM4:00】
ついに、決戦当日の朝が訪れた。外はまだ闇だ。「天候は?」「大丈夫。星が瞬いている」。体に突き刺さる真冬を思わせる寒気も、気にならなかった。何にも増して、我々が恐れたのは雨だったのである。もし、当日、雨に見舞われたなら、もはやテストは意味をなさない。雨はもちろん、最高速を低下させる。が、それ以上に300km/h近い速度でウエットのバンクに突入することは、自殺行為に他ならないからだ。
ちなみに、谷田部のテストコースのバンク最上段の設計速度は220km/hである。たとえドライであっても、オーバー250km/hカーともなると、コントロールは難しい。他誌のテスト中のことである。バンク内でフッとアクセルを緩めただけで、マシンはテールスライドを引き起こし、あわやガードレールに激突しそうになった「事件」もあるのだ。コンディションが雨ならば、いかに精鋭揃いであっても、記録はおろか、テストは中止せざるを得なかったのだ。
【AM5:30】
東の空が、薄っすらと赤みを帯びてきた。雲ひとつない快晴である。気温も低い。テストには絶好のコンディション、記録への期待が、いやが上にも膨らんだ。もう日の出も近い。すでに遠路九州からSS久保ソアラターボがコースイン。RSヤマモトZに奪われた国産最速の座を奪回すべく、心中深く決意を秘めたRE雨宮の1、2マシンも早々と姿を見せた。L型ビッグボアの究極、JUN3.5Lも、新たにニューZのボディに与えられ、往路の常磐高速で270km/hを余裕でマークしてきたと自信を見せる。
【AM7:30】
役者は揃った。全22のグリッドのうち、すでに21台がコースインしている。まだ姿を見せない、最後の1台が気になった。というのも、それは関西の雄、柿本レーシングZだったからである。北野元、津々見友彦、両テストドライバーも姿を見せた。ともあれ、後はAM8:00のテストスタートを待つばかりである。すべて順調であるかに見えた。が、この頃すでに、コースを横切る風は、気まぐれな突風を交えていたのである…。