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あまりに危険だ! あの北野元選手、突如出走中止!
【AM8:20】
待ちかねたかのように、1番手フォルテクス・スカイラインRSターボがコースに挑んだ。目標はRS最高記録、249.13km/hの大幅更新である。ドライバーは北野元。ストレートを駆け抜けるマシンの姿勢はいい。が、いま一歩、記録は伸びなかった。
次いで、SS久保ソアラ・ターボがスタートを切った。ドライバーはもちろん、津々見友彦である。5速6500rpm、車速263.73km/h! 最速ソアラの誕生である。オーナーが思わず「ヤッタ!」とVサインを掲げた。
3番手はATS・BM・Zが務めた。先頃のOPTノミネート戦で271.18km/hをマークした実力派。チューニングは、ATS・BMとスリーテックの共同開発。スリーテックといえば、GCカーはもとより、あの最速ドラッグZのチューナーでもある。狙うはもちろん、国産最速の座であり、300km/hの壁! ドライバーは北野元。そして、全開でバンクを駆け下り、勝負をかけた2ラップめ、計測地点で突風にあおられたのである。この時の回転数、5速8000rpm! 推定車速291.96km/h。国産最速記録である。が、それは幻と終わった…。
カメラマンの証言。「あの時、北野さんはバンクでも本当に踏んでいた。ガードレール、ギリギリのところを細かくスライドしながら走ってきたんだ。さすがというのか、撮っているボク自身、背筋がゾクッとするほどだった」。
マシンを降りた北野選手は、そのままヘルメットを脱ぎ、フーッと大きく深呼吸をひとつして、口を開いた。「このコンディションで、このテのマシンでは、全開にはできないよ。みんなもっと、自分の命を大事にしたほうがいい。最高速がどこまで伸びるかは、これじゃ度胸ひとつだ。ボクはとてもじゃないが、これ以上は走れない」。
もちろん、いくら最高速テストとはいえ、その時の条件下で(安全性のマージンを十分取った上で)ベストを尽くす以外にない。北野選手とて、そのことは十二分に承知だ。その上で、彼は次のように語る。
「ボクはいったん走るとなると、身を削る走り方しかできない。でなかったら、走らないかだ。でも、身を削るには、あまりにも危険が大きすぎる」。
あたかも自分自身に言い聞かせるように、そう語って北野元はマシンから離れた。