先代の若々しさから「大人の上質」へ。マツダ・CX-5の新しい魂動デザイン(前編)

── ランプは、先代のように厚さがある方が背高のSUVとして表現しやすいと思えますが

「先代の大きな目が若々しさだとすれば、大人の精悍な表情として、キリッとした目つきにしたかった。これは、同時に全車LEDを使ったという技術面の話もありますね。また、今回は顔の位置全体を下げているので、この薄いランプでの表現が可能になったわけです」

── アンダーグリルは最近では珍しく横方向の表現で、かつ要素も最小限ですね

「ふつうは要素を盛ってグラフィカルに見せてしまうのですが、やはり面のニュアンスで見せたかった。横一線の表現をすることで、よりワイドで低重心に、スタンスのよさを目指しています。まあ、写真ではなかなか分かってもらえないんですけどね(笑)」

── 先代と異なり、ボンネットラインをそのままショルダーに流したのはなぜですか?

「先代はフロントにふたつの動きがありましたが、ここを「ひとつの大きな動き」とし、その先端はリアタイヤにしっかり荷重が掛かる表現にしました。これはモデラーさんが自主活動で作ったオブジェがヒントになっていて、フロントの「線」がリアに向けて微妙な「面」の表情になることで、エレガンスさも出せたと思います」

新型の「引き算のデザイン」は、フロントではとくにアンダーグリルに明快に現れているようです。要素を減らした分の造形をどう考えるのか。後編はボディサイドの面作りから話を聞きます。

[お話を伺った方]

マツダ株式会社
デザイン本部 チーフデザイナー
諫山慎一

(インタビュー:すぎもとたかよし)

この記事の著者

すぎもと たかよし 近影

すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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