日本発の高度交通信号システムがモスクワ市の渋滞緩和に成功。交差点で最大40%の渋滞緩和効果

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 )、信号システムの京三製作所、コンサルの野村総合研究所は、ロシア・モスクワ市交通管制センター(TsODD)と共同で実施していた高度交通信号システムの実証事業で、同市の渋滞緩和に成功し、交差点で最大40%の渋滞緩和効果を確認したと発表しました。

今回の実証事業は、NEDOが2015年からモスクワ市と実証事業の基本協定書(MOU)を結び、京三製作所、野村総合研究所とともに、モスクワ市交通管制センター(TsODD)と日本発の高度交通信号システム(ARTEMIS:Autonomous and Real‐Time signal control based on Estimation traffic demand for Minimization of Signal waiting time)を使って、現地の交通渋滞を緩和できるかを確かめるために行われました。

この実証事業では、交通渋滞の緩和に効果がある自律分散信号システムをモスクワ市内の渋滞が多い連続した5カ所の交差点に設置し、実際に車の移動時間を削減できるかを検証しました。

その結果、モスクワ市内のオニェジスカヤ通りの連続した5カ所の交差点(全長約2km)の区間で、車の移動時間が朝夕の混雑時間帯でモスクワ市内に向かう方向の車の移動時間を40%短縮することに成功したということです。

今回の実証に使われたARTEMISは、信号機を制御する信号制御機(コントローラ)と、車両を検知する感知器、これらを結ぶ通信ネットワークから構成されており、従来から一般的な管制センターの中央装置を介して信号機をコントロールする制御方式と比較して、コントローラ間でリアルタイムに交通情報や信号機制御情報を交換して、交差点に流入する交通量を予測することができます。

このため、“信号待ち時間が最小”になるように信号サイクルを自律的に制御することができ、大規模な中央管理システムを削減でき、渋滞緩和のための初期導入コストを抑えられるというメリットもあります。

モスクワ市の他にも、途上国の経済発展で慢性的な交通渋滞に悩む都市が世界中に増えているので、今回効果が確かめられた日本発のARTEMISが世界中に広がることが期待されます。

(山内 博・画像:NEDO)