日産車のカスタマイズ・ロードカーを展開する「AUTECH」と「NISMO」。しかし、両ブランドのクルマの違いについては意外に知られていません。そこで、最新のノートを例にオーテックジャパンの担当者へ話を聞いてみました。
── まず最初に登場の背景からお伺いします。昨年(2017年)「AUTECH」と「NISMO」ブランドはオーテックジャパンに集約されましたが、それまでの経緯はどのようになっていたのでしょう?
「「NISMO(ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)」は1984年の設立以降、日産のレース活動を支える一方で「シルビア 270R」のようなロードカーも手掛けてきました。2012年に鶴見(横浜市)に新事業所を開設しましたが、この時から本格的にロードカーの展開を打ち出したんです。第一弾が「ジューク NISMO」でした」
── そうでしたね。一方のオーテックは商用特装車のほか、当初から日産車のカスタマイズカーを出していました
「はい。「シルビア・コンバーチブル」や「ザガート・ステルビオ」などに始まり、ステージアやスカイラインの限定車なども。1996年以降は「ハイウェイスター」や「ライダー」シリーズが充実しますが、最近になって、もっとオーテックの名前を前面に出すべきという声があったんです」
── そこで昨年からオーテックジャパン下での両ブランド展開になったわけですね
「実は2012年には両社で社長が兼任体制になっていて、協業は進んでいたんです。そこで「NISMO」は昨年オーテックジャパン内にニスモ・カーズ事業部を設置、オーテックは「AUTECH」ブランドを立ち上げ、ロードカーの充実を図りました」
── では、本題である両ブランドの違いについてです。たとえば、今年はノートに「AUTECH」と「NISMO」が発売されたのですが、両車ともスポーティ指向で、一体どこが違うのかと?
「コンセプトとしては「AUTECH」がプレミアム・スポーティとして上質方向、「NISMO」がモータースポーツをフィードバックしたレーシングイメージです。たしかに、両ブランドともスポーティというのは共通ですが、目指すセッティングが異なります」
── 両車ともメインメニューがボディ補強、専用サスペンション、専用コンピュータと同じです。これはそれぞれ仕様が違う?
「いえ、実はまったく同じです。上質でもレーシーでも、性能を底上げするという点では同じことなんです。それと、ベースのノートe-POWERは、量販コンパクトとしてかなり懐の深い部分があって、もともと開発領域の幅が広かったこともあります」
── オーテックは特装会社として、たとえば欧州車的な高級化やミニのようなハイセンスなものなど、スポーティ以外の展開があってもいいと思いますが?
「「ノート AUTECH」は、従前の「モードプレミアム」をそのまま引き継いだ格好で、つまりブランドとしてまだ移行期と言える状況なんです。ただ、SUV的な「ノート シーギア」もありますし、様々な可能性があると考えています」
── 一方、「NISMO」は多くの車種に展開していますが、白に赤の差し色というボディと同様、どれも一律のキット的に見えてしまうのが惜しいです
「まず、いまはまだ車種充実の段階で、ブランドイメージを作っている途上ということです。それと、現行シリーズはリーズナブルな中での商品企画を意識しているんですね。なので、さらに突っ込んだ企画は少し先になると思います」
── では、今後は両ブランドの方向性もいろいろな展開が期待できるのでしょうか?
「もちろんです。現在は同じ屋根の下で業務を行っていて、その強みは大きい。たとえば「AUTECH」のプレミアム・上質って一体何なのか? など、時間をかけてじっくりディスカッションできる。現在は過渡期ですが、今後に期待していただければと思います」
── それぞれの違いを生かした企画を見せてください。本日はありがとうございました。
[語る人]
株式会社オーテックジャパン 商品企画部 商品企画グループ
課長 成冨健一郎
(インタビュー・すぎもと たかよし)