日産ノートXの仕上がりは良好も、プロパイロットのオプション価格の高さがネック

■日産ラインナップの先進派エントリーモデル

●代を進めるごとに大きく進化を遂げてきたパワートレーン

初代日産ノートは2005年にデビュー。プラットフォームはマーチと共通性のあるものが採用されました。同時期にティーダもデビューしていて、この時期、日産は日本で3種のコンパクトモデルを販売していました。

初代はピュアエンジンモデルでしたが、2012年にフルモデルチェンジされた2代目のマイナーチェンジ時(2016年)に、e-POWERと呼ばれるシリーズハイブリッド方式のモデルが追加されます。2020年、ノートはフルモデルチェンジされ、現行の3代目となります。

ノートフロントスタイル
ノートのフロントスタイル。シャープな直線で構成されるフェイスと張りのあるサイドが組み合わされたボディ

現行ノートはルノーと共同で開発したCMF-Bプラットフォームを採用したモデルです。CMF-Bプラットフォームはジューク、ルノー・ルーテシア、ルノー・キャプチャーなどにも採用されているグローバル戦略プラットフォームです。

ボディサイズは全長4045mm、全幅1695mm、全高1505~1520mmで、5ナンバーサイズに収まります。サスペンションはフロントがストラット、リヤがトーションビームを採用します。

●パワートレーンはe-POWERに1本化

ノートエンジンルーム
ハイブリッドユニットまでをボンネット内に収納するため、かなり凝縮感あるエンジンルームとなる

先代ノートは、ピュアエンジンモデルとシリーズハイブリッドの2つのパワーユニットを持っていましたが、現行ノートはシリーズハイブリッドのe-POWERのみとなりました。

現行ノートに搭載されるエンジンは1.2リットルの直列3気筒で、最高出力は82馬力・最大トルクは103Nmとなります。モーターはフロント用が116馬力/280Nmで、4WDモデルの場合はリヤに68馬力/100Nmのモーターが追加されます。

e-POWERはエンジンを使って発電を行い、その電力を使ってモーターを駆動します。EVのように充電も不要、エンジンの動力を直接タイヤに伝えることもありません。

50_new-note-design_interior-source
シフトノブ右に並ぶ3つスイッチのうち、いちばん前のものがドライブモード選択スイッチ。
ノートインパネ
シンプルで先進感のあるインパネ。インテリジェントアラウンドビューモニター&インテリジェントルームミラーなどもプロパイロット選択時にはセットとなる

現行ノートは、ノーマル、エコ、スポーツという3つのモードが設定されています。先代モデルにも同様のモード(先代はスポーツでなくSモード)が存在します。

先代モデルのノーマルモードではブレーキを放す(ゆるめる)とクルマがスルスルと動き出すクリープ現象がありましたが、エコとSのモードにはそれがありませんでした。しかし、現行では3つのすべてのモードでクリープ現象を起こすようになっています。

クリープ現象がない場合、アクセルを踏み込まないとクルマが動き出しませんが、クリープ現象のあるクルマは発進時に右足がブレーキペダルの上にあることになります。左足ブレーキをよしとする考えの人とは相容れませんが、私はクリープ現象があったほうが踏み間違え事故などが減ると考えています。

●クリープ現象で発進、ワンペダルドライブは廃止

さて、スルスルっと発進したノートですが、ここからアクセルを踏むとグッと力強い加速を披露します。現行ノートは基本の走行モードがエコですが、それでもアクセルを踏んだときの力強さはしっかりとしたものです。

アクセルを踏み込むとエンジンが始動し、より強い加速が得られます。エンジンの動力で積極的に発電することで、強い加速を生み出しています。

ならば、エンジンの動力をそのままタイヤに伝えればいいような気がするかもしれませんが、電力とすることで安定したエネルギーで走ることができますし、モーターならではのトルク感を得ることもできます。エンジンが稼働していない状態での静かさはもちろんですが、エンジンが始動してもなかなかの静かさを維持しています。

もちろん、エンジンが始動したことはわかるのですが、先代に比べるとかなり静粛性は向上しています。とはいうものの、昔ながらのエンジン音に魅力を感じる人にとっては、3気筒のエンジン音はちょっと不満が残るかもしれません。

ノートタイヤ&ホイール
アルミホイールはオプション。アルミホイール単品オプションは可能だが、リヤアームレストを選ぶ際にはアルミホイールもセットになってしまう

駆動用バッテリーの床下配置で重心が低くなっていることもあり、ハンドリングには安定感としっかり感が生まれています。試乗車のXグレードのタイヤは185/60R16で、標準タイプの185/65R15よりも少しだけ偏平率が低く、よりしっかり感のあるハンドリングとなります。

アクセル操作に敏感で大トルクを発生するモータードライブだけに、普通に走っているぶんにはスポーツモードを選ぶ必要はなく、エコモードのままで十分にキビキビした走りが可能です。アクセルを緩めると回生ブレーキが効いてフロントにしっかりと荷重が乗るので、そこからステアリングを切り込んでいくことでスッキリときれいなコーナリングができます。

先代モデルでは回生ブレーキを効かせてそのまま停止までもっていける「ワンペダルドライブ」での運転ができましたが、現行ノートでは廃止となりました。先代モデルはワンペダルドライブでの停止後にもう一度ブレーキを踏むことでクリープ現象を引き起こすことができましたが、そうした複雑な操作をドライバーにさせるよりも、通常のATと同じように最終的に停止する際にブレーキを踏ませたほうが操作ミスは起きにくいはずです。

発進時のクリープ現象も含めて、日産は操作ミスが減る方向性を選んだのだといえます。

●シンプル機能の低価格版プロパイロットを希望

201124-01_013-source
ノートXが最上級機種とはいえ、このクラス、サイズにして車両価格は220万円弱。そこにナビとのセットが前提のプロパイロットを加えたくとも、44万円というオプション価格に戸惑いを覚える人も多いだろう。

さて、現行ノートにはプロパイロットが採用されました。プロパイロットというとスカイラインに採用されたハンズオフ可能なプロパイロット2.0を思い浮かべる人も多いでしょう。

残念ながらノートのプロパイロットはハンズオフはできません。ノートのプロパイロットは従来のものと同様に、先行車との車間距離を保ちながら車線の中央をキープ。さらにナビゲーションの地図情報と連携し、カーブやジャンクションの半径などを把握してコントロールする機能もプラスされました。

このプロパイロットの性能は高く、高速道路では快適な移動が可能となっています。

しかし、ひとつ大きな問題があります。それはプロパイロットのオプション価格です。ナビの地図情報を使うために純正ナビの装着が必須となり、プロパイロットを装着するためにはナビや通信ユニット、SOSコール…などなどをセット装着するので、価格は44万2200円プラスとなってしまうのです。

装着可能なノートXの車両本体価格は218万6800円ですから、じつに車両本体価格の20%近くをオプション代として支払う必要があります。ノートならばナビ連携でなくて、追従&レーンキープのACCで10万円程度の価格アップのほうがユーザーはうれしいのでは、と私は思います。

(文:諸星 陽一/写真:諸星 陽一・日産自動車)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
続きを見る
閉じる