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21世紀の目で振り返ってみる、80~90年代のネオ・クラシック カーデザイン
80~90年代の日本車デザインを振り返る本シリーズ。今回からは「個性車編」として、ちょっと変わったネオ・クラシックのデザインを振り返ります。
第1回目は、アッと驚くイタリアン風味のセダン、トヨタのヴェロッサです。
●テーマは「エモーショナル・セダン」
トヨタは、2000年に行われた9代目マークⅡのモデルチェンジにあたって、バブル崩壊以降販売数減にあった兄弟車のチェイサー、クレスタを廃止。実質上の後継として、翌年の2001年に登場したのがヴェロッサです。
「エモーショナル・セダン」を開発テーマとしたヴェロッサは、ベースとしたマークⅡより30mm短く、10mm低い、ロングホイールベースかつショートオーバーハングのFRセダンボディ。そのプロポーションに大きな破綻はありません。
「ワイルド&ビューティ」を掲げたキー・スケッチをほぼそのまま再現したフロントは、ボリューム感のある左右フェンダーとボンネットが、突き出したバンパーの上に載ったダイナミックな造形で、その間に施されたスリットが機能と同時にアクセントにもなっています。
見た瞬間に「アルファロメオ?」と思わせる逆台形のグリルも、当初スケッチからの提案。また、ボンネットやフェンダーまで延びるランプは、彫刻的なカタマリを意識したボディに沿わせるべく、非常に複雑な形状が特徴です。
●強烈なフェンダーラインが見どころ
サイド面を見ると、キャビン形状はいたって常識的で、そこはこの代のマークⅡに準じて居住性を十分確保したもの。それに比べ「シャドーストリームライン」と名付けられた、前後フェンダーの強烈さがこのクルマのハイライトになっています。
もともと大きく張り出した面に、さらに深い溝を入れることでより強い表現に。片やカタマリを意識したドア面には他にキャラクターラインがないため、より前後フェンダーが目立つこととなり、勢いグラフィック的な表現に見えてしまうのが難点です。
リアは、フロントと同様にフェンダーまで回り込んだランプ形状こそ複雑ですが、リアパネル自体は張りのある面による非常にシンプルなもの。大型のバンパーとの組み合わせで安定感を生み出しています。
一方、インテリアもまた「情熱」を意識したもので、張りのある広い面と楕円をモチーフとした空調口によるインパネが特徴的です。真っ赤な夜間照明や、グレーの木目調パネルもまた「熱さ」を感じさせるものです。
性能よりも官能を重視し、イタリア語で「真実の赤」からの造語を車名としたヴェロッサは、完全にスタイリング優先であり、トヨタのセオリーを突き破るという熱意をもって開発されたといいます。
しかし4年に満たず生産が終了し、旧車ブームのいまも人気車として生き残れなかったのは残念なところです。それは、カーデザインというものが勢いだけで成立するのではなく、もっと奥深いものだという証なのかもしれません。
■主要諸元 ヴェロッサ VR25(4AT)
形式 GH-JZX110
全長4705mm×全幅1760mm×全高1450mm(2WD)
車両重量 1530kg
ホイールベース 2780mm
エンジン 2491cc 直列6気筒DOHCターボ
出力 280ps/6200rpm 38.5kg-m/2400rpm
(すぎもと たかよし)