激安ポルシェ911カレラはトラブルの宝庫だった…【憧れのポルシェ911生活 その3 祝!再納車編】

■バラバラ状態のエンジンと、衝撃のご対面

「再納車」後、ナラシのために出かけた長崎県にて。ちょうど、武雄(佐賀)・長崎を結ぶ西九州新幹線が開通する直前でした
「再納車」後、ナラシのために出かけた長崎県にて。ちょうど、武雄(佐賀)・長崎を結ぶ西九州新幹線が開通する直前でした

さてさて、皆様のご期待通り(?)、のっけから過酷な状況に陥りまくっている98年式996との生活の続きです。

オイルパン内の残留物から、エンジン内部に問題が起こっていることが確実視され、購入から1ヵ月でまさかのエンジン分解。

というトコロまでは前回、お話致しました。では、実際どんな症状だったのか? 波乱万丈の物語、第3幕の始まりです。


●部分修理か、ドイツに送って腰下交換か、それとも売却処分か…?

車を預けて数週間後、ショップ様からお電話が。

「とりあえずエンジン、バラし終わったけど、一度見に来る?」

声のトーンからは、何か見てはいけない物を見つけてしまったかのような、テンションの低さが(悲観主義者なんです、私)。

「ま、まさか修理不可能ですか?」と、ノドまで出掛かった言葉をグッと飲み込み、電話越しでなく直接診断結果を聞くべく、一路ショップへ。

搭載状態だとほとんど全貌が見えないエンジンですが、バラしてみると結構な部品点数(当たり前ですよね)。手前左側の棒状のパーツが、巷で話題のインターミディエイトシャフトです
搭載状態だとほとんど全貌が見えないエンジンですが、バラしてみると結構な部品点数(当たり前ですよね)。手前左側の棒状のパーツが、巷で話題のインターミディエイトシャフトです

ファクトリーに足を踏み入れると、そこには組み立て前のプラモデルのようにバラバラ状態となった、私の車のモノと思われるエンジンパーツが。自ら「バラして下さい」とお願いしていたとはいえ、いざ現実を目の前にすると、なかなかの衝撃です。

ここで気を取り直すべく、深呼吸して主治医に症状をたずねたところ、以下のような診断結果が。

●複数のオーナーに乗り継がれて行く間、オイルの交換時期や使用オイルのグレードにバラツキがあった。
●チェーンテンショナーの表面に異常な削り傷があり、その破片がエンジン内部を周り、一部がストレーナーに付着することで、オイルの潤滑不良が生じた。
●オイルの潤滑不良による油膜切れから異常燃焼が起こり、そのダメージが時間の経過と共にメタルやピストンなどにジワジワと広がった。
●結果、最もダメージが大きかった6番シリンダーのピストンに首振りが発生(これが例のカチカチ音の根源)。

インターミディエイトシャフトのベアリングです。ちなみに、私の車は異常ナシ。ショップ様もココが原因での996のトラブル車両は、これまで扱ったことは無いそうです。製造年や型式番号が云々と、裏付けが取れないハナシをあれこれ語るつもりはありませんが、せっかくエンジンをバラしたので、予防治療のためベアリング径を純正の8mmから10mmの強化品に交換しました
インターミディエイトシャフトのベアリングです。ちなみに、私の車は異常ナシ。ショップ様もココが原因での996のトラブル車両は、これまで扱ったことは無いそうです。製造年や型式番号が云々と、裏付けが取れないハナシをあれこれ語るつもりはありませんが、せっかくエンジンをバラしたので、予防治療のためベアリング径を純正の8mmから10mmの強化品に交換しました

このまま症状を無視して乗り続けていたら、6番以外のシリンダーまで被害が拡大していただけに、早期にエンジン分解の判断を下したことは不幸中の幸いだったかもしれませんが、症状はなかなか深刻。抜本的な修繕=オーバーホールは不可避となりました。

問題はその対処方法。主治医からは、次の3つの選択肢が提案されました。

その1:右バンクのピストン、メタルの交換など、部分的な修理で対処。
その2:腰下をドイツ本国に送り、新品(ショートブロックというそうです)と交換。
その3:このまま直さず、売却処分。

なけなしの貯金をはたき、身分不相応と後ろ指を刺されまくることを覚悟の上で手に入れた996号。「その3」だけは何としてでも回避を、ということで、部分修理か、まるっと新品交換かの2択に絞られました。

こちらはチェーンテンショナー。樹脂製パーツゆえ、多少傷があっても驚くものではありませんが、私の場合、削れ方がフツーではなかったようです
こちらはチェーンテンショナー。樹脂製パーツゆえ、多少傷があっても驚くものではありませんが、私の場合、削れ方がフツーではなかったようです

もちろん、理想論から行けば後者がベストだということは、私立文系の私のアタマでも理解できるハナシ。しかし、それにはこの車の購入金額と同等以上のコストが不可欠。

それでも「完調になるなら、もう1回、清水の舞台から飛び降り直すか…」とも考えましたが、仮にエンジンの問題が解決しても、足回りやタイヤなど、今後対策が必要な懸案事項も多々あり(ココが低年式中古車共通の悩みドコロ)、ここで軍資金をすべて使い果たすわけには…と、熟考に熟考を重ねた結果、「その1」を選択することに決めました。


●じっと待つこと4ヵ月、遂に「その日」がやって来た!

その後、季節は春から夏、夏から初秋へ。様子を見に行きたい気持ちをガマンし続けること4ヵ月ちょい。仕事場の掃除をしていたとある土曜日のお昼前、「待たせてゴメンね。作業、終わったよ」との連絡が。

ゴメンも何も! 正直、ワタシ的には越年も覚悟していたので、問題ナッシング! 掃除道具を放り投げてショップにダッシュです!

再納車の喜びも束の間。2ヵ月ほどが経過した後、まさかの異音が発生! 原因は前オーナー時に交換されていた、リビルト品のオルタネーターでした。整備履歴書類を見ると、交換したのは僅か1年チョイ前。いやはや、粗悪品には注意ですねェ。もちろん、現在はすべてにおいて絶好調! これでまた一つ部品が新しくなったので、結果オーライということにしときます
再納車の喜びも束の間。2ヵ月ほどが経過した後、まさかの異音が発生! 原因は前オーナー時に交換されていた、リビルト品のオルタネーターでした。整備履歴書類を見ると、交換したのは僅か1年チョイ前。いやはや、粗悪品には注意ですねェ。もちろん、現在はすべてにおいて絶好調! これでまた一つ部品が新しくなったので、結果オーライということにしときます

そして遂に、私の996号と対面。車体はショップ様がご厚意で磨き上げてくれていたおかげでピカピカ。購入後10回乗ったきりずっと離れ離れになっていたので、気分的には再納車!

さっそくキーを受け取り、エンジンを始動。注意深く耳をすましても、聞こえてくるのは低く力強いアイドリング音のみで、カチカチ音は皆無。

「おおッ! カチカチ音、消えてますね!」と私。

「当たり前やん! でなきゃ、ここまで頑張った意味、ないやろ(笑)」と名医殿。

Myポルシェ996
Myポルシェ996

とりあえず1000kmまでは慣らしのつもりで3000回転をリミットに、との注意を受けている間も、ワクワクで顔面ニヤケまくり。帰り道には奮発して福岡都市高速を選び、じんわりアクセルを踏み込んで行くと、あまりのスムースなレスポンスに「もう、最高!」と絶叫。

ちなみに、オーバーホールに要した参考費用ですが、エンジン関連に加えクラッチ交換、車検まで含めて200万円弱。車両代を足せば約500万円と、人生最大の大出費…。

続いてタイヤを交換。長年、熱烈なミシュラン信者でしたが、18インチサイズともなるとやっぱりお値段もそれなり。カタログの「ポルシェ指定」文字にはグッと惹かれるモノがありましたが、タイヤの目減りを惜しんで駐車場に仕舞い込むより、バリバリ走りまくることがテーマなので、信頼のトーヨータイヤの上位モデル、プロクセススポーツを選択しました。大いに満足してます!
続いてタイヤを交換。長年、熱烈なミシュラン信者でしたが、18インチサイズともなるとやっぱりお値段もそれなり。カタログの「ポルシェ指定」文字にはグッと惹かれるモノがありましたが、タイヤの目減りを惜しんで駐車場に仕舞い込むより、バリバリ走りまくることがテーマなので、信頼のトーヨータイヤの上位モデル、プロクセススポーツを選択しました。大いに満足してます!

いやはや、前回このサイトでお詫びさせて頂いた「コミコミ300万円で云々」という当初の目論見は甘過ぎだったと、改めて痛感している次第です。

とはいえ、今や空冷911の中古車市場は500万円の予算では全くお話にもならないご時世。初代NSXや80スープラ、R32 GT-Rなども10年前とは別次元の相場となっているだけに、元気なエンジン+マニュアルの911がこの金額で乗れることは、悪いハナシでは無いのでは?とも思っています(注:気持ちを前向きに保つための、勝手な解釈ですが)。


というワケで、購入直後にエンジンオーバーホールという想定外の難題を乗り越えたワタシの996号。次回からはようやく、楽しい996ライフについてアレコレお話することができそうです〜。

高橋 陽介

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この記事の著者

高橋 陽介 近影

高橋 陽介

大分生まれ、博多育ち。幼少期にスーパーカーブームの直撃を受け、地方自動車誌を経てフリーライターに。初めての愛車は平成元年に購入したMR2。以後、スバルSVXやBMW-Z3・Mロードスターなど世間的にはマイナー扱いされている面々を乗り継ぎ、2022年、アガリの1台として私財を投げ打って996前期を購入。
車以外には「刑事コロンボ」や「マイアミバイス」、「007シリーズ」など海外ドラマや映画も大好物。
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