激安ポルシェ911カレラ、コミコミ300万円で買って大丈夫?【憧れのポルシェ911生活】

■いつかは憧れのクルマを所有したい。それは、今なのか?

●予算はコミコミで300万円。理想のポルシェは見つかるのか?

子どもの頃からのクルマ好きが高じ、今から30年ほど昔、九州ローカルのカー雑誌出版社に就職。その後、紆余曲折を経て、フリーライターという職業で現在までどうにかこうにか生き延びて来ました。

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一番の憧れはフェラーリと言いながら、実家の押入れをひっくり返すとミニカーやカードなどポルシェも同じくらい好きだったことを改めて実感。映画「ザ・ソルジャー」は中学生の頃、ポルシェがベルリンの壁を飛び越えるシーンだけを目的に観に行った。監督は現在ではレーシングカーチームのオーナーとして知られるジェームズ・グリッケンハウス。

アタマの中身は中高生の頃から大して進歩していませんが、ふと気がつくと50代も半ば。アクセルとブレーキの踏み間違えや、高速道路の逆走などが主な原因とされる高齢者の自動車事故問題、それに伴う早期の免許返納への気運の高まりといった話題も決して他人事とは思えない年頃となりました。

果たして、自分はあとどれくらいの間、“元気に”運転ができるのだろうか? もはや20〜30代の頃のように「いつかはあの憧れのクルマを」などと悠長に構えている場合ではありません。年齢的、体力的にも「今のうちにホントに乗りたいクルマに乗っとかないと、死ぬ時に絶対後悔するゾ」という想いが日ごとに高まって来ました。

しかし、世界的な電動車の普及拡大や自動運転技術の進化など、昨今の業界の動向を見ている限り、この先、自分のような古臭いクルマバカが欲しいと思える新型車が出て来る可能性はほぼゼロ。おのずとその対象はひと昔前のクルマとなります。

幼少期にスーパーカーブームの直撃に遭った私にとって、憧れのクルマの最高峰といえばズバリ、フェラーリ様(あー、書いてて恥ずかしい)。でも、さすがにこれは経済面、環境面などあらゆる条件において購入実現は不可能。心の中に存在する永遠のヒーローとして、崇拝し続けることで満足するようにしました。

●フェラーリはあきらめ、ポルシェ、BMW、アストン…候補はいろいろあれど

さて、ここからがホントの問題。

許される限り背伸びすればギリギリ手が届きそうな範囲で、自分にとって究極のクルマとは何か? その筆頭がポルシェ911でした。

カーセンサーで「空冷ポルシェ」を検索するも、ヒットするのは1000万円超や永遠の謎プライス「応談」がゴロゴロと

がしかし、第一候補の空冷911はご存知の通り、数年前から世界的な超高値傾向が常態化。カーセンサーやグーネットを見ても空冷物件には軒並み「応談・ASK」の文字が。

もちろん応談を持ちかける度胸も財力も無いので、「フェラーリはおろか、ポルシェもダメか…」と、諦めモードで他の候補を探しまわること3年以上(長い!)。BMW-Z4Mクーペ、MGB-GT、ロータス・エスプリ、フォード・マスタング、インターメカニカ・ロードスター、アストンマーティン・ヴァンテージなどなど(書く分にはタダですからネ)、仕事そっちのけでネット内をひたすら迷走していました。

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ついに購入してしまったポルシェ

そんな悶々とした毎日を送る中、街角でふと目に止まったのが996型のポルシェ911。世の中的には歴代屈指の不人気車という評価ですが、改めて見直すとカタチはすっきりシンプルで、デビュー当時は大柄に思えたサイズも今ではむしろ小ぶりに感じられました。

「そうか、このテがあったか!」と、早速ネットで相場を調べると、想定の予算まであと一歩という、かなり現実的なライン上にあることが判明。

さらに私の背中を押したのは、日頃仕事でお世話になっている某チューニングショップ様からの「オークションで引っ張れば、何とかなるっちゃない? 探してみよか?」という力強い一言でした。

私の希望は、マニュアルのフツーのカレラ前期モデル。しかし996はタマ数自体が少ない上、Tip(ティプトロニック・トランスミッション)が圧倒的。稀にマニュアルが出てきてもGT3エアロ付きだったり、ボディカラーが好みじゃなかったりという状況がしばらく続きました(本当はアレコレ理由を付けてハンコを押すことから逃げていたような気もします)。

●え、マジ? ホントに見つかっちゃった理想のポルシェ911カレラ

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私の98年式911カレラ。走行距離は8万4000kmほど。一見、キレイに思えますが、24年という時間が経過しているワケで、あちこちに経年劣化のヤレが見受けられます

ところが、締切作業に追われていたある夜、件のショップ様からオークション出品予定車の情報メールが。そこに出て来た画像はドンピシャ理想通り、エアロ無し、ほぼノーマル状態のシルバーの前期996。これはもう、断る理由はありません。

しかし、この段階でもまだ心のどこかでポルシェの購入に腰が引けていた私。情けないと思いつつも「コ、コミコミ300万で収まる範囲でイケれば。それを超えるようなら諦めます」と、無茶な条件を出し、最後の抵抗を試みました。

そして連絡を待つこと数日。仕事場の片付けをしていると、一本の電話が。

ショップ様 「落とせたよ。何とか予算内に収まるはず。おめでとう、これでポルシェオーナーやね」

私 「ええーッ!マジっすかー!」

嬉しさ4割、不安6割。どエライことをしでかしたと思っても、もう後戻りはできません。

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実は筆者は20年ほど前に空冷ポルシェを所有していました。その頃は200万円以下でも物件がゴロゴロしていて、現在のようなプレミア相場とは無縁でした。手放した理由の一つが、いくら修理してもクーラーが効かなかったこと。それゆえ、996を購入してまず驚いたのは、エアコンがしっかり効くという点でした

それから数日後、1998年式ポルシェ911カレラが私の元にやって来ました。小雨の中での対面でしたが、心の中はスッキリ日本晴れ。同時にここ数年、毎日のように繰り返していたカーセンサー&グーネット&エンスーの杜をグルグル巡る、クルマバカ人生の終着点を探す旅は、この日をもっておしまいとなりました。

もちろん、現状販売、24年落ちの大古車ということで、今後、手を加えるべき部分は多々出て来ると思います。冒頭にも申し上げましが、私はしがない地方ライターという身分ゆえ、修繕費用をポンポン出せる余裕など、これっぽっちもありません。そんなリスクを踏まえながら過ごすコミコミ300万円の911との生活は、果たして本当にハッピーなのか?私のような境遇にある方が「一歩踏み出す」際に参考となるようなレポートを、折々お届けできればと思っています。

追伸:次回、いきなり「ギブアップ編」だったらゴメンナサイ!

高橋 陽介

この記事の著者

高橋 陽介 近影

高橋 陽介

大分生まれ、博多育ち。幼少期にスーパーカーブームの直撃を受け、地方自動車誌を経てフリーライターに。初めての愛車は平成元年に購入したMR2。以後、スバルSVXやBMW-Z3・Mロードスターなど世間的にはマイナー扱いされている面々を乗り継ぎ、2022年、アガリの1台として私財を投げ打って996前期を購入。
車以外には「刑事コロンボ」や「マイアミバイス」、「007シリーズ」など海外ドラマや映画も大好物。
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