遠い昔の「サスペンションは硬い方がスポーティ」なんて思いが吹き飛ぶTEIN「EDFC5」が乗り心地と硬さを両立

■ジャーク制御をもったダンパーのフルコントロールが実現!

硬い=スポーティ!と若い頃信じてた!!
硬い=スポーティ!と若い頃信じてた!!

一昔前まで「サスペンションは硬い方がスポーティで良い」と信じられてきた。かくいう私の20歳代の頃なんか「硬いの大好き代表幹事!」みたいな存在。今からすれば舌を噛むような乗り心地のクルマに喜んで乗っていたように思う。しかし! 取材でワークスのレーシングカーやラリーカーの同乗走行をすると、信じられないくらい滑らか。ガタガタの砂利道を嘗めるように走る。

その後、BMWのスポーツモデルやポルシェに乗ると、やはり乗り心地が超絶良い。それでいてしっかりとした減衰力を出しており、ハンドル切ってもぐらつかず、コーナーリング中の姿勢も安定している。どうなってるんだ? と思った結論が「ダンパー」でした。クルマの重さを支えるのはバネながら、動きの味を決めているの、ダンパーなのだった。国産車のダンパー、てんでダメ。

おそらく入力による減衰力の違いを上手に出せないんだと思う。乗り心地を重視した味付けにすると、コーナーでぐにゃぐにゃ。コーナーで安定させようとしたら、道路の凸凹を探す装置のように酷い乗り心地になる。最近になって少しは良くなってきたものの、今でもザックスや、良く味付けしたオーリンズ、ビルシュタイン、テネコなど欧州製のダンパーに遠く及ばない。

長い前置きになった。TEINの新しい制御を採用した『EDFC5』(電子制御可変ダンパー)である。今までのEDFCも車速やGによる自動制御機能を持っていた。すなわち「車速が上がるにしたがって減衰力を高めていく」とか「前後Gを判定し激しい動きが出るときは減衰力を上げる」というもの。滑らかな乗り心地をキープしながら、速度やコーナリング速度上がると引き締めていく。

Gセンサーも内蔵する車載ユニットにより、手元でダンパー制御をコントロールできます
Gセンサーも内蔵する車載ユニットにより、手元でダンパー制御をコントロールできます

高い評価を得ていたのだけれど、今回さらに『ジャーク制御』というのを取り入れたという。詳しい理論紹介は長い行数を必要とするので簡単にまとめると、セミ・アクティブ制御です。サスペンションの理想は動物だと言われる。例えば猫。高い位置から落とすと、着地の瞬間は柔らかく、そしてストロークしていくにしたがい徐々に筋力を加えていく。結果、滑らかに着地出来る。

 

クルマのサスペンションも同じ。普段は柔らかくしておけば乗り心地が良い。されど速度域高いと、硬くしておかないとハンドル切った時の挙動など不安定になる。具体的に書けばふらふらするワケ。そこで今までのEDFCは速度やGをセンシングして減衰力を上げていた。当然ながら乗り心地は速度上げるほど硬くなります。ジャーク制御を入れたEDFC5は、速度上げても乗り心地良いまんま。

「TEIN EDFC5」のユニット全体
「TEIN EDFC5」のユニット全体

されど外乱が大きくなり、ハンドル制御を入れ始めると、そこから前出のネコのように徐々に減衰力をあげていく。アクティブ制御(事前に制御を入れる)のようにタイムラグを無くすことで、じんわりと減衰力をあげていく感覚を出せる。実はこのタイプの制御、マツダなどが4WDの駆動時に採用している。滑り始めの微妙な挙動を検知し、制御している乗ると滑る前に制御入ってる感じ。

ジャーク制御はさらに広範に渡る。というのも減衰力を96段階に連続して変えられるからだ。具体的な制御はTEINのイラストを見て頂きたく。いきなり減衰力を上げるだけでなく、徐々に変化させていくのが面白いところ。しかも普段の乗り心地を決める減衰力や、ハンドル切った時のレスポンスを決める減衰力、コーナリング中の挙動を決める減衰力を自分で決めることも可能。

もちろん標準的な設定(TEIN推奨)はある。今回標準で走ってみると、GR86についちゃ「このままでいいですね!」。スポーティかつ素直なハンドリングを持ちながら乗り心地良好! ノアは最初の挙動を少し穏やかにしてやれば乗り心地の良さと穏やかな挙動でいながら、コーナーで安定するという好みに合う挙動になると思った。セッティングは自由自在。

というか普通の人だと大いに迷う? 標準設定の他「コンフォート」や「スポーティ」みたいな推奨を作り、さらに有名ドライバーの好みなど設定していくと面白いんじゃなかりうか。おそらくアンダー気味のセットアップや、ドリフトしやすいセットアップなども可能かと。幅広い車種にEDFC5が設定されているため、自分のクルマの走りを変えたいならぜひ!

国沢光宏