いよいよ始まる富士SUPER TEC24時間。水素カローラなどST-Qクラスの注目マシンをチェック!【スーパー耐久2023】

■エコな水素カローラからGT3のメルセデスやGT-Rまで、一斉に走るスーパー耐久

いよいよ2023年5月27日(土)15時に決勝レースのスタートが切られる「ENEOS スーパー耐久シリーズ2023 第2戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」。

土曜日19時45分からの花火
土曜日19時45分からの花火

現在、日本で唯一の24時間レースとして開催されるこのレースは、1500ccのコンパクトカーからFIA GT3のメルセデス AMG GT3やNISSAN GT-R NISMO GT3、そして水素カローラなどが一斉に走るということでも、世界中から注目を集めています。

●走る研究室と言われるST-Qクラス

24時間という長丁場のレースを、新技術の開発の場にしようというST-Q。

ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept
ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept

G7広島サミットでも話題になった水素利用をレースの世界で本気で取り組んでいるということで、本当に世界中から注目を浴びている水素カローラ「ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept」もST-Qクラスからの参戦です。

今年もドライバーとして、トヨタ自動車新会長となったMORIZO選手こと豊田章男さんがステアリングを握ります。また、TOYOTA GAZOO Racing ワールドラリーチームのヤリ=マティ・ラトバラ代表も参戦。ドライバーだけでも大きな話題です。

また、この富士SUPER TEC 24時間レースでは、燃料が気体水素から液体水素へと変更されます。

ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptの液体水素充填システムの一部
ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptの液体水素充填システムの一部

液体水素はマイナス253度という、極低温で管理されるところが大変だと思われますが、水素カローラの場合は、70Mpa高圧貯蔵の気体水素に比べて、液体水素ではエネルギー密度が2.2倍となるため、同じタンク容量であれば航続距離が約2倍となります。そして、気体水素を昇圧する装置も不要になるために設備が簡略化され、念願のピット内充填が可能となりました。

開幕戦鈴鹿では、不慮のトラブルにより欠場してしまった水素カローラ「ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept」ですが、富士SUPER TEC 24時間レースでは満を持しての登場となります。

ORC ROOKIE GR86 CNF Concept
ORC ROOKIE GR86 CNF Concept

ST-Qクラスでは、やはりカーボンニュートラルへの研究開発が多く、今回のエントリーリストではカーボンニュートラル燃料(CNF)を使うマシンのみで構成されています。

その中で、昨年から毎戦激しいバトルを繰り広げているのが、ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptと、Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptです。

ともにGR86、BRZとという兄弟車での開発となっていますが、ORC ROOKIE GR86 CNF ConceptはエンジンなどをGRヤリスの3気筒ターボーを1.4リッターに変更したものを使用しており、CNFとターボの組み合わせでの研究も行っています。

Team SDA Engineering BRZ CNF Concept
Team SDA Engineering BRZ CNF Concept

Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptは、既存の水平対向4気筒2.4リッターエンジンを使って開発を行っています。そこにスバルの強みともいえる技術や素材、航空機の廃材も投入して、軽量化と剛性強化の研究も行っています。

マツダは、MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptでカーボンフリー燃料としてバイオディーゼル燃料を使います。

MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio concept
MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio concept

このバイオディーゼル燃料は、天ぷらやフライと言ったものを揚げたあとの食用油の廃油を精製したものに、ミドリムシなどの微生物由来の炭化水素を添加したもので、量産が進めば、完全国産のカーボンニュートラル燃料となるということで注目を集めているのものです。

このバイオディーゼルを使ったMAZDA3は、とんでもなく強いトルクを発生すると言われ、駆動系の強化が急務と言われていますが、裏を返せば、それだけ強力なディーゼルのシステムが、カーボンフリーで達成できる可能性がある、ということを示しているとも言えます。

CIVIC TYPE R CNF-R
CIVIC TYPE R CNF-R

ニュルブルクリンク北コースでFF車最速を記録したFL5型CIVIC TYPE R は、ST-QクラスとST-2クラスで参戦しますが、モータースポーツエントリーモデルの開発をテーマにしたST-Qクラス参戦のCIVIC TYPE R CNF-Rは、その名の通りCNFを使っての走行となります。

Nissan Z Racing Concept
Nissan Z Racing Concept

今年、2023年にNISSAN Z GT4を送り出した日産モータースポーツ&カスタマイズは、今年の富士SUPER TEC 24時間レースでもNissan Z Racing Conceptを走らせます。大方の予想ではNISSAN Z GT4のEVOモデルの開発と言われています。

そのため、リアウイングやリアフェンダー、ボンネットなどが今年のGT4マシンと変更されてきていると思います。またこのマシンもCNFを使います。

カーボンニュートラルやエコの観点でいくと、ST-Qクラスのマシンのみならず、富士スピードウェイ株式会社およびケイツープラネット株式会社(代表取締役:桑山 晴美、以下「ケイツープラネット」、スーパー耐久機構の運営会)の両社は、それぞれENEOS株式会社とスーパー耐久シリーズ 2023 第2戦 富士 SUPER TEC 24時間レースにおけるCO2削減に貢献するために、グリーン電力証書に関する契約を締結しました。

これにより18t以上のCO2を削減できるとしており、大会全体がカーボンニュートラル、カーボンフリーを目指していると言えるのです。

●自宅観戦はYouTubeかJ-Sportで

富士SUPER TEC24時間レースは、サーキットでの観戦が最善とも言えますが、実はYouTubeのスーパー耐久TVやJ-Sportでも24時間完全中継が行われます。特にYouTubeのスーパー耐久TVではコメント機能もあるので、運が良ければ解説の福山英朗さんやゲスト選手などに返答をいただけるかもしれません。

そんな「ENEOS スーパー耐久シリーズ2023 第2戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」は5月27日(土)15時スタートです。

(写真・文:松永 和浩

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【関連リンク】
《S耐TV・富士24時間 #1》ENEOS スーパー耐久シリーズ2023 第2戦 NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース決勝
https://www.youtube.com/live/MZrFHqkt4N0?feature=share

スーパー耐久シリーズ2023でのグリーン電力導入について
https://supertaikyu.com/news/files/release_230524a.pdf

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
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