富士公式テストで聞いたハンコックタイヤ工場火災の影響とブリヂストンのラジアルタイヤの評判【スーパー耐久2023】

■富士SUPER TEC24時間レースを見据えた公式テスト

2023年4月28日(金)、富士スピードウェイでスーパー耐久シリーズの公式テストが行われました。

様々なクラスが混走するスーパー耐久
様々なクラスが混走するスーパー耐久

この公式テストは5月26日(金)~28日(日)に開催される富士SUPER TEC24時間レースを念頭に置いたもの。

テストではナイトセッションも用意され、富士SUPER TEC24時間レースでナイトセッションを走るドライバーは公式テストのナイトセッションを走ることが義務付けられています。

ナイトセッションでのST-Z raffinee 日産メカニックチャレンジZ GT4
ナイトセッションでのST-Z raffinee 日産メカニックチャレンジZ GT4

この公式テストは24時間レースに向けてかなり重要視されていますが、今回はそれだけに留まらず、特にST-4クラス、ST-5クラスにとっては初めてのスポーツラジアルタイヤによるレーシングスピードでの走行となっています。

●ワンメイクレース向けのPOTENZAで24時間レースを戦うST-4、ST-5クラス

スーパー耐久シリーズは、FIA GT3を使うST-Xクラスから、1500cc相当のコンパクトカーによるST-5クラスまで、全9クラスでレースが行われます。

ST-4クラス TOM'S SPIRIT GR86
ST-4クラス TOM’S SPIRIT GR86

その全てのクラスで、同じタイヤブランドを使うオフィシャルサプライヤーとして、2023年いっぱいまでは韓国のハンコックタイヤがタイヤを供給する予定となっていました。

しかし今年、2023年3月12日に韓国のソウルと釜山のちょうど中間に位置する大田市大徳区のハンコックタイヤの工場が大規模な火災となり、21万本というタイヤを焼失。また、工場のラインも全損し、復旧までに18ヵ月を要するという事態に。

この工場は、ハンコックタイヤで唯一のレーシングタイヤの生産を行っており、ハンコックタイヤのレーシングタイヤは工場在庫と生産ラインの全てを失ったことで供給が出来ない状態となりました。

ST-5クラス DIXCELワコーズNOPROデミオ
ST-5クラス DIXCELワコーズNOPROデミオ

そこで、2024年以降のオフィシャルタイヤサプライヤーとして契約をしていたブリヂストンが期間を前倒しして、第2戦富士SUPER TEC24時間レースから供給を開始することとなりました。

しかし、15インチや17インチのスリックタイヤ、レーシングレインタイヤをラインナップで持っていなかったブリヂストンが、大量にタイヤを消費する24時間レース用に、これらの小さいサイズのレーシングタイヤを用意することは不可能ということで、これらのサイズを使うST-4、ST-5クラスではPOTENZAのナンバー付きワンメイクレース用タイヤを使う、ということとなりました。

ST-5クラス DIXCELアラゴスタNOPROデミオ
ST-5クラス DIXCELアラゴスタNOPROデミオ

ST-5クラスではPOTENZA RE-71RSの195/50R15 82Vが指定タイヤとなります。RE-71RSはサイズこそ違いますが、岡山国際サーキットやオートポリスで先代のトヨタ86やBRZのナンバー付き車両で行われているTOYOTA 86/ SUBARU BRZ Race with RE-71RSの指定タイヤとなっています。

ST‐5クラスはPOTENZA RE-71RS
ST-5クラスはPOTENZA RE-71RS

TEAM NOPROの17号車 DIXCELアラゴスタNOPROデミオの大谷飛雄選手によると、「ハンコックのスリックとグリップレベルは変わらないけれど、ライフがどれだけ持つかは実際にレースになってみないとわかりません。印象としてはサイドウォールが柔らかい感じがしますので、ステアリングをこじって乗るようなドライブには全く向かないと思います」と語ります。

ST-4クラス エアバスター WINMAX GR86 EXEDY
ST-4クラス エアバスター WINMAX GR86 EXEDY

ST-4クラスは、ほとんどがトヨタGR86で、1台だけマツダ ロードスターRFが参戦しています。GR86に指定タイヤとして供給されるのはPOTENZA RE-12Dの235/40R17 90Wです。このRE-12DはZN6/ZC6、つまり先代のトヨタ86やBRZで競われていた86/ BRZ Raceに使用されていたタイヤです。

そのST-4クラスでは、2022年のST-3クラスチャンピオンにして2022年の86/BRZ CUPプロシリーズのチャンピオンである冨林勇佑選手が、今年からGR86の41号車 エアバスター WINMAX GR86 EXEDYで参戦しています。

ST-4クラスはPOTENZA RE-12D
ST-4クラスはPOTENZA RE-12D

その冨林選手にRE-12Dの印象を聞いてみると、「かなりいいですよ。グリップはスリックよりいい場面も多々あります。問題はライフですけど、2スティントはつらいかもしれないですね。ただし、タイヤマネージメント次第ですが」と語ります。

また、2022年のST-4クラスチャンピオン、86号車 TOM’S SPIRIT GR86の河野駿佑選手も、「タイヤを見ないで乗ったら、タイヤが違うとは気づかないレベルでグリップします」と語ります。

また、「ライフの問題は考え方や捉え方なので、一概にPOTENZAがライフが短いとは言い切れないと思います。グリップレベルが高い領域がどれだけ続くかではなく、コントロールしきれなくなる領域までどれだけグリップが持つか、ということも考えられますし。ハンコックは、グリップレベルがかなり落ちてから、コントロールしきれなくなる領域までが長かったので、そこと比べるには今日のテストでは時間が短すぎますね」と語ります。

ST-5クラス DIXCELアラゴスタNOPROデミオ
ST-5クラス DIXCELアラゴスタNOPROデミオ

お話を聞いたドライバーの方々は全て、グリップレベルは問題ないとしているところが、今回のタイヤ選択の特徴です。

このPOTENZAのラジアルタイヤはドライ用として設定されており、富士24時間レースではレインタイヤはハンコックタイヤのものが使われます。しかし、POTENZAのラジアルタイヤのタイヤパターンには溝がありますので、よほどの大雨でもない限りそのまま行けてしまうだろう、と予測するドライバーやチームも多いようです。

●参戦車両が多彩なST-Qクラスのタイヤは?

技術開発などをメインにとらえ、賞典外で参戦するST-Qクラス。このクラスにはRZ34型のフェアレディZや、FL5 シビックTYPE Rから、CNFのGR86やBRZなども参戦。水素カローラもST-Qクラスです。

ST-Qクラス CIVIC TYPE R CNF-R
ST-Qクラス CIVIC TYPE R CNF-R

ここでラジアルタイヤの対象となるのが、カーボンニュートラル燃料の開発車両である28号車 ORC ROOKIE GR86 CNF conceptと、61号車 Team SDA Engineering BRZ CNF Concept。

ST-Q Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptのピット
ST-Q Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptのピット

Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptの佐野エンジニアに、ラジアルタイヤによるセッティングについてお話をうかがうと、「グリップがほぼ変わらないので、キャンパーとかキャスターなどサスペンションで大きな変更はしていないですね。微調整レベルのセッティングで行ってます」とのこと。

スリックタイヤとグリップレベルがここまで同じ公道向けのラジアルタイヤって、POTENZAってどれだけすごいのでしょうか?と違う方向へ興味が湧いてきます。

ST-Q MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptはスリックタイヤ
ST-Q MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptはスリックタイヤ

ST-Qクラスで、パワーレベルはCNFのGR86と同等と言われる、バイオディーゼル燃料の55号車 MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptは、車体が一回り大きくタイヤサイズも大きいために、スリックタイヤとなっていました。

今回の公式テストでは、走行が無かった水素カローラ 32号車 ORC ROOKIE GR Corolla H2 conceptですが、こちらも多分ラジアルタイヤ、RE-12Dでの参戦であろうと思われます。

●富士SUPER TEC 24時間レースでは、ハンコックタイヤとブリヂストンの両方がサービスを展開

POTENZAのラジアルタイヤでのテスト走行でも大きな混乱は無く、無事にテストを終了した各チーム。また、スリックタイヤを使う上位チームですが、ドライはブリヂストンのスリックタイヤ、レインはハンコックタイヤを使うということとなります。

富士スピードウェイAパドックに展開するハンコックタイヤサービス
富士スピードウェイAパドックに展開するハンコックタイヤサービス

つまり、24時間レースのレインタイヤについてはハンコックが供給するということになります。そして、それはタイヤメーカー2社がAパドック内にサービスブースを展開するということを意味します。

ブリヂストンのタイヤサービストラック
ブリヂストンのタイヤサービストラック

Aパドックの東側にサービス拠点を構えるブリヂストンですが、そのサービス拠点だけでは24時間のタイヤ供給を賄えるはずもなく、拠点の裏やレストランの前までタイヤサービスで使用するという大規模構成となります。

富士24時間レースではブリヂストンのタイヤ交換用マシンも相当数増設される
富士24時間レースではブリヂストンのタイヤ交換用マシンも相当数増設される

タイヤ脱着やバランス取り用のマシンなどもかなりの数を増設するとのことで、Aパドックの東側は2社のタイヤとその設備で埋め尽くされるのではないかという勢いです。

ST-Qクラス Team SDA Engineering BRZ CNF Concept
ST-Qクラス Team SDA Engineering BRZ CNF Concept

走行時間が通常のロングディスタンスな5時間レースのほぼ5倍、3時間レースの8倍になる24時間レース。90分に1回、4輪を交換するとして16回、1台当たり64本の約54台で、3456本のタイヤが必要になります。この数のタイヤを持ち込んで供給するとなると、タイヤサービスも遥かなる戦いと言えるでしょう。

なお、ST-4、ST-5クラスのラジアルタイヤ供給は、この富士SUPER TEC24時間レースのみとなり、第3戦のSUGO3時間レースからはこの2クラスもブリヂストンのスリックタイヤが供給されるとのことです。

(写真・文:松永 和浩

【関連記事】
ハンコックタイヤ工場火災の影響で「ブリヂストン」タイヤを富士24時間レースから投入【スーパー耐久2023】
https://clicccar.com/2023/04/26/1278989/

「ブリヂストン」が2024年からスーパー耐久のオフィシャルタイヤサプライヤーになることの意義とは?【スーパー耐久2023】
https://clicccar.com/2023/04/14/1276043/

【関連リンク】

スーパー耐久、ハンコックタイヤ工場大規模火災を受け、第2戦「富士24時間大会」からブリヂストンがタイヤを供給
https://supertaikyu.com/news/20230424a.html

朝鮮日報日本語版 韓国ハンコックタイヤ工場で大規模火災、タイヤ21万本焼失…工場完全ストップ
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/03/14/2023031480030.html

この記事の著者

松永 和浩 近影

松永 和浩

1966年丙午生まれ。東京都出身。大学では教育学部なのに電機関連会社で電気工事の現場監督や電気自動車用充電インフラの開発などを担当する会社員から紆余曲折を経て、自動車メディアでライターやフォトグラファーとして活動することになって現在に至ります。
3年に2台のペースで中古車を買い替える中古車マニア。中古車をいかに安く手に入れ、手間をかけずに長く乗るかということばかり考えています。
続きを見る
閉じる