スバル新時代! 今度の「インプレッサ」はFWDがスポーティで楽しい【週刊クルマのミライ】

■新型インプレッサを袖ケ浦で乗ってみた

新型インプレッサは従来よりスポーツ色を強めているのが特徴。実用性の高さも兼ね備えている
新型インプレッサは従来よりスポーツ色を強めているのが特徴。実用性の高さも兼ね備えている

スバルのコアテクノロジー「水平対向エンジン」を積んだベーシックモデルといえば、インプレッサです。

4月20日にフルモデルチェンジする新型インプレッサの情報が発表されたばかりですが、発売を前にプロトタイプに試乗することができました。

プロトタイプといっても、タイミング的にはほとんど量産状態といえる内容でしょう。発売前ということで試乗ステージは袖ケ浦フォレストレースウェイとなりましたが、これは公道走行ができないから。

試乗前にはタイヤを鳴らすような走り方はしないように、という注意もありました。けっしてサーキットを攻め込んであれこれ評価するようなタイプのモデルではない、というわけです。

●コンセプト合致度でいえばFWDを評価したい

AWDの走りは、いかにも「スバルのスタンダード」といえる味付けだった
AWDの走りは、いかにも「スバルのスタンダード」といえる味付けだった

新型インプレッサのコンセプトを示すキーワードとして、「SUBARUスポーツモデルのスタンダード」「ユーティリティ・スポーツカー」といった説明を受けました。従来までのインプレッサは「SUBARUらしさのスタンダード」という方向でしたから、新型ではよりスポーツ度を濃くしたといえそうです。

せっかくのサーキット試乗ですから(パイロンで各所が規制されたシチュエーションでしたが)、新型インプレッサのスポーティな部分を確認することにしました。そこで「ユーティリティ・スポーツカー」というコンセプトへの合致度を中心にお伝えしようと思います。

具体的には、ゴリゴリのスポーティさではなく、速度域でいうと50km/h~120km/hあたり、日常的に感じることのできるスポーツ性を見てみようと考えました。

FWDはクイックに向きが変わるため、アクセルを早めに開けていける
FWDはクイックに向きが変わるため、アクセルを早めに開けていける

新型インプレッサは、ベーシックな「ST」グレードが2.0L水平対向エンジン、上級の「ST-G」と最上級の「ST-H」グレードは2.0Lマイルドハイブリッドのパワートレインを積んでいます。

それぞれのグレードに、FWD(前輪駆動)とAWD(常時全輪駆動)を設定するというラインナップです。今回は、最上級グレードのFWDとAWDを試乗することができました。

結論からいえば、「ユーティリティ・スポーツカー」という言葉のイメージに近いのはFWDのほうです。

FWDのスポーツドライビングでは、アクセルオンのタイミングを我慢しないといけない…と想像してしまうかもしれませんが、実際にはAWDのほうがアクセルを踏み込めるタイミングが遅くなっていました。

タイヤは共通ですが、車両重量のわずかな差、後輪駆動の有無といった違いによって、FWDのほうが旋回時にアウトにはらむことなく、アクセルオフで素早く向きが変わるので、結果的に加速体制に早く入ることができるのです。

●クロストレックとのスタイリングの違いはグリルにあり

新型インプレッサとボディパネルやガラス部分を共通とするクロストレックは姉妹車といえる
新型インプレッサとボディパネルやガラス部分を共通とするクロストレックは姉妹車といえる

スバル車でスポーツドライビングを楽しむのであれば、AWDを選ぶべし!という先入観もあるかもしれません。しかし、新型インプレッサについては、FWDのほうが日常的に気持ちよくドライビングすることができる部分もありそうです。

ちなみに、新型インプレッサとボディのスチールパネルやガラス類を共有している姉妹車のクロストレックでは、真逆の印象です。クロストレックはAWDのほうが走りが楽しく、スバルらしい安心感があると思えます。

おそらく、クロストレックがSUV向けのオールシーズンタイヤを履いているのに対して、インプレッサはスポーティな銘柄を選んでいることが、こうした違いを生んでいるのでしょう。

クロストレックのFWDは、AWD比でリヤの頼りなさを感じましたが、インプレッサではFWDのスタビリティ感に不満を覚えず、むしろ軽快であることをポジティブに感じたのです。

インプレッサはフロントグリルを薄くすることでワイド感を演出しているのが最大の違い
インプレッサはフロントグリルを薄くすることでワイド感を演出しているのが最大の違い

新型インプレッサでは、従来モデルよりボディ剛性を高めたことに合わせて、サスペンションのバネレートを落として、ストロークの一体感を狙ったということですが、その点においてもFWDのほうがステアリング操作とのリニアリティでは上を行っているように思えました。

FWDが廉価版ではなく、積極的に選びたくなるスバル車。まさに新時代の幕を開けるニューモデルといえそうです。

ところで、新型インプレッサとクロストレックの外観におけるイメージを変えているのは、どこだと思いますか?

クロストレックのSUVテイストを強調するのは、フェンダー回りに装着された樹脂パーツなのは一目瞭然でしょう。一方、インプレッサはフロントグリルの縦方向を短くしているのがポイント。これによって、相対的にロー&ワイドに見せることで、スタンスの効いたスタイリングとしているのが差別化ポイントとなっています。

●新型インプレッサ主要諸元

2.0L水平対向ガソリン直噴エンジンや「e-BOXER」マイルドハイブリッドシステムは従来型からキャリーオーバーといえる内容
2.0L水平対向ガソリン直噴エンジンや「e-BOXER」マイルドハイブリッドシステムは従来型からキャリーオーバーといえる内容

●インプレッサST-H(FWD)
車両型式:5AA-GUD
全長:4475mm
全幅:1780mm
全高:1515mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1540kg
乗車定員:5名
エンジン型式:FB20
エンジン形式:水平対向4気筒ガソリン直噴
総排気量:1995cc
最高出力:107kW(145PS)/6000rpm
最大トルク:188Nm(19.2kg-m)/4000rpm
モーター型式:MA1
モーター形式:交流同期電動機
最高出力:10kW(13.6PS)
最大トルク:65Nm(6.6kg-m)
駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
変速装置:CVT
燃料消費率:19.4km/L (WLTCモード)
タイヤサイズ:215/50R17 91V
メーカー希望小売価格:299万2000円

ボディ剛性アップに伴いサスペンションのストロークは増えているというが、姿勢の安定度は従来型より上に感じる
ボディ剛性アップに伴いサスペンションのストロークは増えているというが、姿勢の安定度は従来型より上に感じる

●インプレッサST-H(AWD)
車両型式:5AA-GUE
全長:4475mm
全幅:1780mm
全高:1515mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1580kg
乗車定員:5名
エンジン型式:FB20
エンジン形式:水平対向4気筒ガソリン直噴
総排気量:1995cc
最高出力:107kW(145PS)/6000rpm
最大トルク:188Nm(19.2kg-m)/4000rpm
モーター型式:MA1
モーター形式:交流同期電動機
最高出力:10kW(13.6PS)
最大トルク:65Nm(6.6kg-m)
駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
変速装置:CVT
燃料消費率:18.9km/L (WLTCモード)
タイヤサイズ:215/50R17 91V
メーカー希望小売価格:321万2000円

自動車コラムニスト・山本 晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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