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■新型プリウス開発でトヨタが目指した「愛車」は実現できた?
トヨタ自動車が「愛車」を目標に開発し、2023年1月10日に発売した新型プリウス。
低重心化によりスポーティさを一段と増すなど、洗練されたデザインにより市場の反応も上々のようで、すでに販売店へのオーダーが殺到しているようです。
そうした中、同社は昨年末に富士スピードウェイで実施した新型プリウス(プロトタイプ)試乗会に続き、今回新たに袖ヶ浦フォレストレースウェイと周辺の公道を使ったメディア向け試乗会を開催しました。
用意された試乗車は市販バージョンのHEV 2.0L FFと同E-Fourで、3月早々に発売を予定しているPHEV(プロトタイプ)についても、従来型PHEVと共に試乗車が用意されていました。ちなみにHEVは公道、PHEVはサーキットでの試乗となります。
●「虜にさせる走り」を謳う新型のドライブ・フィールは?
トヨタは新型プリウスを燃費性能だけでなく、「一目惚れするデザイン」と「虜にさせる走り」をあわせ持つエモーショナルなクルマを目指して開発したそうで、特に走りの面では次の4項目に重点を置いたそうです。
①加速感、②制動性能、③ハンドリング性能、④静粛性
これにより胸のすくような加速感や、ドライバーの思い通りに反応するレスポンスの良さを高次元で両立したとしており、今回の試乗ではそうした点に着目して評価してみました。
①加速感
最新の第5世代HVシステム搭載により、HEV仕様のシステム最高出力は従来型の122psから196ps(E-Fourは199ps)へと1.6倍に拡大。これにより加速性能はやはり期待を裏切らないレベルに仕上がっていました。
低いドライビングシートに収まり、電制シフトをDレンジに入れてアクセルを軽く踏み込むと、新型プリウスは滑らかに加速を開始。
新型では特に走り出し直後の加速感が高められており、100km/hまでの加速域においても従来型やライバル車を凌駕する加速度を維持しています。(グラフ参照)
また、加速時のエンジン音に雑味を感じる要因となる中/高音域(200~600Hz)の音圧を抑制し、低音を強調することで、軽快な加速感と迫力あるエンジン音を両立しており、試乗時にアクセルを強めに踏み込むと豪快な加速が始まり、良い意味でこれがプリウス?と思わせる場面もありました。
②制動性能
動力性能向上に併せて、ブレーキシステムも大幅に見直されています。
これまでのアキュムレーター(蓄圧器)に代わり、高効率ギアポンプで発生した油圧を直接各輪のブレーキに伝えるオンデマンド式に変更。
微小な油圧コントロール性能の向上により、従来のハイブリッド車に有った停止直後の前後揺り返しを抑制。
試乗時にも通常のガソリン車と変わらない自然なブレーキ・フィールが確認出来ました。
③ハンドリング性能
スムーズにコーナーに進入して狙った走行ラインにピタリと付けることができる気持ちの良い走りを実現するためには、フロントボディの「横曲げ剛性」を高める必要があります。
新型では構造見直しにより、フロントボディの横曲げ剛性を約15%向上させているそうで、試乗の際にもステアリング・レスポンスの良さなどからその効果を実感することが出来ました。
ステアリング・ホイールが小径化されたこともスポーティ度アップに寄与しています。
また、高剛性化が図られたボディにサスペンション・ジオメトリーやダンパーの減衰力最適化など、進化した足周りを組み合せたことで、コーナーリング時の車両姿勢やステアリングから伝わるタイヤの手応えなどに好影響を与えています。
④静粛性
大型フロアサイレンサーによる床下音の抑制や、広範囲に採用した塗布型制振材に加え、ラゲッジルームの遮音性向上により車内は静粛そのもので、公道でロードノイズが気になるシーンは殆どありませんでした。
●試乗雑感
今回最も印象的だったのはHEV/PHEV共、予想以上にパワフルな動力性能と自然なブレーキフィール。
トヨタが“愛車”を目指して開発したと言うだけあって、スポーティな外観に相応しい走行性能が伴っており、ハイブリッド車も第5世代のHVシステム搭載で、遂にここまで来たか……と感じさせます。
・ルーフが低いことによる乗り込み難さや車内からの視認性が懸念されましたが、Aピラーの付け根を前方へ移動すると共にドアミラーを後退させることで、三角窓の面積が拡大しているため、実際には車外がよく見渡せるように工夫されています。
・車内への乗り込み性については、ドライバーの頭部が通過する部位のルーフ高さが確保されているため、意外にも頭をぶつけるような事はありませんでした。後席足元、頭部には大柄な乗員でも窮屈さを感じさせない適度なスペースが確保されています。
・アクセルペダルが吊り下げ式からオルガンタイプに変更されており、足のかかとを支点にしたアクセル開度コントロールが容易になっています。
・ドライブモードを「SPORT」で走行した場合、アクセルを戻した後の“吹け残り”が長く、エンジンの回転落ちが遅いのが目立ちました。ドライブモードはやはり「NOMAL」が最も違和感が無く、スムーズに走行できます。
・足周りについては、コーナリング時のロール抑制を目的に引き締められていますが、ボディ剛性の高さによりサスペンションがしっかり動いており、“角”の無い絶妙な乗り心地に繋がっています。
これなら長時間走行で疲れることは無いと感じました。
・FFとE-Fourの車両重量差を踏まえ、各々最適なダンパー・チューニングが施されており、FFからE-Fourに乗り換えても、乗り心地の面で顕著な差を感じることはありませんでした。またリヤモーターを装備するE-Fourはコーナリング等での蹴り出し感が魅力的です。
・足元には走行時の空気抵抗低減と接地面積拡大に配慮した細幅/大径のヨコハマタイヤ製 ブルーアースGT(195/50R19)が装着されていました。
・スッキリした見栄えに寄与するリヤドアハンドル位置ですが、慣れるまではつい、ドアパネル側面を探してしまいます。
ちなみにドアロック開閉はレバー式ではなく電子スイッチになっています。
・12.3インチのNAVI画面は視認性が良い反面、室内幅に対してやや大きさが目立ちます。
・テールゲートの開閉は高級感のある電動式。
・バックアップランプ(LED式)は小型化されてリヤバンパー下方、RR(反射板)内に設定されています。
●PHEV 2.0 FF(プロトタイプ)について
PHEVは新型プリウスのハイパフォーマンスモデルとして開発されており、0-100km/h加速が6.7秒と、GR86の6.3秒に迫る圧倒的性能を発揮。今回の試乗でもそのパワフルさが際立っていました。
大容量リチウムイオンバッテリー(51Ah)搭載により、HEV比で車重が120kg程度増えているそうですが、出力を50psアップしたフロントモーター(163ps/21.2kgm)搭載によりシステム最高出力が223psにまで増強されているため、サーキット走行で車重増によるハンディを感じることはありませんでした。
HEVの0-100km/h加速が7.5秒とのことなので、PHEVの加速性能が如何に突出しているかが判ります。
ちなみにEV走行距離は従来型比で50%以上向上しており、日常使いにおいて大部分をEV走行でカバーすることが可能になっています。
また、PHEVならではの装備として、太陽光をより効率よく電気に変える第2世代のソーラー充電システムが設定されており、1年間で走行距離約1,250Km分(従来比約1.3倍)に相当する電力を生成。
駐車中は、発電した電力を駆動用バッテリーに充電し、走行だけでなく、エアコンなど様々な機能に電力を供給。走行中は、発電した電力で補機バッテリー系統の消費を補います。
●PHEVとHEVの見分け方は?
ちなみに新型「プリウス」のHEVとPHEVの見分け方については以前の記事でも触れていますが、従来型とは異なり意匠差が最小限に抑えられているのが特徴。
PHEVではフロントバンパー開口部を縁取る塗装色を光輝シルバーとして、HEVの塗装色(ダーク系)と塗り分けられています。
またFFとE-Fourに関してはフロントドアの前下端部に設定したエンブレムの有無が識別ポイント。
PHEVに設定されているボディ色はプラチナホワイトパールマイカ、ブラックマイカ、エモーショナルレッドII、ダークブルー、マスタード、アッシュの全6色となっています。
現時点でPHEVの車両価格は公表されていませんが、各種情報によれば、HEVとの価格差は+90万円に抑えられている模様。
販売台数はHEV(4,300台/月)の1割程度で計画されているようです。
HEVの納期が大幅に長引く中、PHEVの生産がまもなく開始される見込みで、今後は短納期が期待できるPHEVの先行受注に注目が集まりそうです。
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トヨタ プリウス
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