トヨタ「プリウス」はファミリーカーで誕生し、新型はいかにしてスポーツハッチに進化したのか?【トヨタ・プリウスとは?】

■トヨタ・プリウスの歴史/21世紀を待たずに登場したハイブリッドカー

●初代プリウスは「市販初ハイブリッド」ではない?

1995年のプリウス プロトタイプ
1995年のプリウス プロトタイプ

言わずと知れた世界初の量産ハイブリッドカーのプリウス。

ハイブリッドカーというのは複数の動力源を持つクルマのことで、プリウス登場以前にもガスタービンと電動モーターを用いたハイブリッドカーなど盛んに研究開発が行われ、トヨタ・スポーツ800をベースにしたものなどがありました。

そうした中、トヨタはレシプロエンジンと電気モーターを組み合わせるという方式でハイブリッド技術を実用化。プリウスを送り出します。プリウスという名前のクルマが初めて世の中に顔を見せたのは、1995年の東京モーターショーでした。

トヨタ初のハイブリッド「トヨタ・コースター・ハイブリッド」
トヨタ初のハイブリッド「トヨタ・コースター・ハイブリッド」

しかし、意外かもしれませんが、トヨタ市販初のハイブリッド車はプリウスではなく、マイクロバスのコースターをベースとしたシリーズハイブリッド車でした。

これは、当時のスターレット用1.3リッターエンジンで発電、バッテリーへ充電し、電動モーターで駆動するものです。なので、プリウスはトヨタの2代目市販ハイブリッド車で、トヨタ初の市販パラレルハイブリッド(動力を発電だけでなく駆動力にも使用する)車両と言えます。

●初代プリウスの変遷

初代プリウス
初代プリウス

初代プリウスは1997年12月に登場。キャッチフレーズは「21世紀に間に合いました」。

ボディタイプは、独立したトランクルームを持つ3ボックスのセダン。サイズは5ナンバーに収まるものでした。

パワーユニットは1.5リットルの4気筒ガソリンエンジン(58馬力/101Nm)に、モーター(30kW/305Nm)を組み合わせたTHSと呼ばれるもの。バッテリーにはニッケル水素が使われ、10・15モード燃費は28.0km/L。これは、ピュアエンジンモデルと比べると圧倒的な数値で、世界をあっと言わせるものでした。

2000年5月に行われたマイナーチェンジでは、単一電池のような筒型だった駆動用バッテリーを、角形に変更することでスペース効率をアップ。エンジンは72馬力/115Nmに、モーターは33kW/350Nmにスペックアップ。リヤシートには6対4分割のトランクスルーを備えました。

10・15モード燃費は29.0km/Lに向上。2002年8月の一部改良では10・15モード燃費を31.0km/Lに向上しています。

●2代目プリウスの変遷

2代目プリウス
2代目プリウス

2003年、プリウスは初のフルモデルチェンジを受けて2代目に移行します。全幅が拡大されたために、ボディサイズは3ナンバーとなりました。従来の3ボックスパッケージングはあらためられ、リヤハッチをもつ5ドアスタイルへと生まれ変わりました。以降、プリウスは3ナンバーボディの5ドアハッチバックモデルとなります。

エンジンは1.5リットル4気筒のままですが、最高出力は77馬力/115Nmにスペックアップ。モーターは50kW/400Nmとなりました。ハイブリッドシステムは、可変電圧システムを採用したTHS IIに進歩。エンジンとモーターを合わせたシステム出力が111馬力/478Nmと公表されました。10・15モード燃費は35.0km/Lへと向上しました。

2005年にマイナーチェンジを受けますが、このときの変更点は内外装や装備にとどまり、パワーユニット関連の装備は変更を受けていません。

2007年1月の一部改良では、エンジン直下の触媒の性能向上、車両床下の触媒追加、エンジン制御コンピューターの改良を実施することで、排出ガス浄化性能を一層向上。JC08モードの冷間時の新測定モードに対応。平成17年基準排出ガス75%低減レベル」の認定を取得しています。

同年9月にはJC08モード燃費で29.6km/L(10・15モード燃費で35.5km/L)を達成しました。

●3代目プリウスの変遷

3代目プリウス
3代目プリウス

2009年5月、3代目プリウスが登場します。この時点で2代目プリウスは完全に廃止にはならず、EXというグレードとなって併売されます。EXは価格を抑えた仕様で、主にビジネスユースとして販売されました。

3代目プリウスはエンジンを1.8リットルに変更、モーターを高回転で回し、回転を落とすことでトルク増大を行うリダクション機構を組み込んだハイブリッドシステムに変更されます。エンジンは99馬力/142Nm。モーターは60kW/207Nm。システム出力は136馬力となりました。JC08モード燃費は32.6km/L費を達成しています。

2009年12月には充電が可能なプリウスプラグインハイブリッドを追加し、電力会社など特定の企業を対象にリースを開始。プリウスプラグインハイブリッドはパワーユニット系のスペックはプリウスと同一ながら、トヨタとしては初となるリチウムイオン電池を採用。EV走行可能距離は23.4kmでした。

プリウスα
プリウスα

2011年5月にはステーションワゴンスタイルのプリウスαを追加。プリウスαには5名定員の2列シートモデルと、7名定員の3列シートモデルを設定。パワートレイン系のスペックはプリウスと同一、2列シート車はニッケル水素、3列シート車はリチウムイオンのバッテリーを採用しました。

2011年11月にマイナーチェンジを実行。内外装の変更、装備の充実が行われます。また、同じタイミングでプリウスプラグインハイブリッドをプリウスPHVとして販売することを発表、受注を開始します。

プリウスPHV
プリウスPHV

2012年10月の一部改良では、プリウスにAC100V(容量1500W)のコンセントをオプション設定。プリウスPHVには、同コンセントとともに、充電ポートに差し込んで外部AC給電が可能なヴィークルパワーコネクターをオプション設定。

プリウスPHVでは装備変更、ボディカラーへの新色設定などが行われました。また、プリウスαには新グレードが追加されています。

2013年9月にはプリウスPHVの内外装変更を一部改良。2014年1月にはプリウスPHVの内外装オプションを変更。2014年11月にプリウスαの内外装を変更するマイナーチェンジを実施。2015年6月にはプリウスPHVの内外装を変更する一部改良を行いました。

2015年12月にはプリウスをフルモデルチェンジ。プリウスPHV、プリウスαは継続。2017年にプリウスαにトヨタセーフティセンスPを装備。2021年3月を持ってプリウスαを終了します。

●4代目プリウスの変遷

4代目プリウス
4代目プリウス

2015年12月、プリウスはフルモデルチェンジして4代目となります。エンジンは1.8リットルで98馬力/142Nm、モーターは72馬力/163Nmです。最良の燃費はJC08モードで40.8km/hとなりました。

グレードによって、リチウムイオン電池を使うもの、ニッケル水素電池を使うものが設定されていました。シャシーはTNGAを採用。そして、プリウス初となる4WDモデルも設定されました。4WD用のリヤモーターは5.3kW/55Nmのスペックです。

2代目プリウスPHV
2代目プリウスPHV

2017年2月にはプリウスPHVがフルモデルチェンジされます。フロントまわりの動力系スペックは同一ですが、プリウスPHVのリヤモーターは23kW/40Nmのスペック。EV走行可能距離は68.2kmとなりました。

2017年11月にはプリウスの一部改良を実施、内装の変更を行うとともに装備を充実します。2018年12月にプリウスをマイナーチェンジ。内外装を変更するとともに、全車に専用通信機DCMを標準搭載し、コネクティッドサービスを充実。安全関連の装備も充実しました。

2019年5月にはプリウスPHVを一部改良。乗車定員を4名から5名に変更。外部給電機能(V2H)がオプション設定され、プリウスPHVから住宅への給電が可能なりました。また、プリウス同様に専用通信機DCMを標準搭載し、コネクティッドサービスを充実させました。

2020年7月にはプリウス、プリウスPHVともに一部改良。安全機能と充実とともに全車で外部給電機能が充実されました。2021年6月にはプリウス、プリウスPHVを一部改良し、Eグレード以外に8インチディスプレイオーディオを標準装備。プリウスのAおよびAツーリングセレクション、プリウスPHVのAプレミアムおよびAに、空気清浄機能のあるナノイーを標準装備。プリウスのボディカラーに新色が追加されました。

2022年11月、プリウスとプリウスPHEV(このモデルより車名をPHVからPHEVに変更)のフルモデルチェンジを発表し5代目プリウス、3代目プリウスPHEVへ。2023年1月にプリウスを発売開始。プリウスPHEVの発売は同年3月からとアナウンスされました。

●プリウスの基本概要 パッケージング/ホイールベースも延長しボディサイズを拡大

プリウスのフロントスタイル
プリウスのフロントスタイル

5代目となる新型プリウスは、ボディサイズを大幅に拡大しました。

先代モデルと比べるとホイールベースは50mm拡大され2750mmに、全長は25mm拡大され4600mmとなりました。ホイールベース拡大量に対し、全長の拡大量が小さいので、オーバーハング成分が減っていることになりますが、

オーバーハングを減らされたのはリヤが50mmで、フロントは逆に25mm伸ばされました。全幅は20mm拡幅され1780mm。全高は40mmも下げられ1430mm。全体のシルエットとしては、よりワイド&ローでロングノーズとなりました。

プリウス寸法新旧比較
プリウス寸法新旧比較

新型プリウスは従来モデル同様に、フロントにモーターとパワーコントロールユニット、ハイブリッド用モーターを搭載。4WDの場合はリヤにもモーターが搭載されます。

プリウスの燃料タンク&バッテリー位置、新旧比較
プリウスの燃料タンク&バッテリー位置、新旧比較

走行用バッテリーと燃料タンクは、リヤセクションに搭載されます。先代モデルでは燃料タンクをリヤシート下、駆動用バッテリーをラゲッジルームに搭載していましたが、新型では重量のかさむ駆動用バッテリーをリヤシート下に、燃料タンクをラゲッジルーム下に搭載することで重心高を下げるとともに、ラゲッジルームの容量を確保。FFモデルで比較すると、従来型の446リットルから502リットルと大幅に拡大されています。

●プリウスの基本概要 メカニズム/新たに2リットルエンジンを採用

2リットルエンジン
2リットルエンジン

プリウスのメイングレードには、新たに2リットルエンジンが採用されました。従来からの1.8リットルエンジンはサブスクリプション専用モデル(KINTO)と、ビジネスユース向けのモデルに搭載されます。もちろん、それぞれがハイブリッドシステムを採用します。また、現段階(2023年2月14日現在)ではプロトタイプ扱いとなるプリウスPHEVも、2リットルエンジンを採用します。

2リットルエンジンのスペックはプリウス用が152馬力/188Nm、プリウスPHEVが151馬力/188Nm(開発目標値)。1.8リットルエンジンのスペックは98馬力/142Nmです。

モーターはプリウスFF用のフロントモーターが113馬力/206Nm、プリウスPHEVフロントモーターが163馬力/208Nm、プリウスFFのリヤモーターが41馬力/84Nm。駆動用バッテリーはプリウス、プリウスPHEVともにリチウムイオン電池で、プリウスが4.08Ah、プリウスPHEVが51Ahです。

プリウスのシステムレイアウト
プリウスのシステムレイアウト

システム最高出力はプリウス2リットル(FF)が196馬力、プリウス1.8リットル(FF)が140馬力。プリウスPHEVが223馬力。WLTCモード燃費は2リットルが28.6km/L、1.8リットルが32.6km/L(ともにFF)です。

PHEVはまだ燃費が発表されていませんが(2023年2月14日現在)、EV走行可能距離は従来比50%以上のアップとアナウンスされています。

プリウスの1.8リットルエンジン
プリウスの1.8リットルエンジン

シャシー関係では、フロントサスペンションがストラット、リヤサスペンションがダブルウィッシュボーン。安全機能のトヨタセーフティセンスは、センサーやカメラの検知機能を向上し、交差点での右左折時や出会い頭などの、従来は検知が難しかった場面での検知も可能になっています。

AC給電については、センターコンソールとラゲッジルーム左側の2ヵ所に設定。外部給電アタッチメントを使うことで、窓を閉めた状態でケーブルを車外に取り出すことを可能としています。PHEVについては、普通充電のコネクターにビークルパワーコネクターを差し込むことで、AC100Vを取り出せる他、V2H装置を介して住宅への給電も可能です。

●プリウスのデザイン/シャープなウエッジシェイプに進化したフォルム

プリウスのフロントまわりスタイリング
プリウスのフロントまわりスタイリング

プリウスのデザインを語るのに、まず最初に触れなくてはならないのが、シャープなシルエットが与えられたサイドスタイルでしょう。

初代プリウスは、トランクルームを持つセダンとして登場しましたが、その初代と比べるとまさに雲泥の差と感じるスタイリングです。最近のパッケージングのトレンドはオーバーハングを短縮するものですが、プリウスはその定石に逆らって、フロントオーバーハングを25mmも延長、スポーツカーのようなウェッジシェイプの効いたサイドスタイルを実現しています。

ホイールは19インチで、しっかりした存在感を持ってボディを支えています。

フロントまわりではCシェイプのターンシグナルランプをキーポイントとしたハンマーヘッドモチーフが採用されています。ハンマーヘッドというのは、金槌の頭頂部分のことで、左右に力強く配置されるヘッドライトが特徴的です。

プリウスのヘッドライトまわり
プリウスのヘッドライトまわり

EVの場合、フロントまわりのデザインでは、グリルを廃止して空気抵抗を低減することがトレンドになりつつありますが、エンジンを要するハイブリッドであるプリウスは、フロントの吸気導入口を完全に廃止することはできません。とはいえ、フロントの空気導入口は最小限のサイズに抑えられていて、フロントまわりのシャープさをより高めることに寄与しています。

プリウスのリヤスタイル
プリウスのリヤスタイル

リヤは、左右のコンビランプをガーニッシュで連結した水平感にあふれるデザイン。2代目プリウスから採用されたリヤハッチ垂直部分のガラスは廃止されました。コンビランプの上にはブラックアウトされたパネルが配置され、その上部分にリヤハッチのエッジ部分が存在するため、スポーツカーのウイングを思わせるような造形になっています。

プリウスのインパネ
プリウスのインパネ

インテリアもかなりスタイリッシュでスポーティ。インパネに関しての見た目の第一印象は、クルマらしくなったというものです。しっかりしたダッシュパネル、ステアリングの奥には独立したメーターパネル。センターにナビモニターを配置し、その下には各種スイッチ類。前後に貫くフロアコンソールなどもクルマらしさにあふれています。

シートのサイドサポートはしっかりした形状のもので、欧州セダンのような雰囲気を持っています。ステップライン加飾と呼ばれるアクセントが入れられていることで、よりスポーティな印象もアップしています。

●プリウスの走り/力強い加速感とダイレクトなハンドリング

プリウスの走行イメージ
プリウスの走行イメージ

今回、プリウスについてはサーキットのパドックを試乗会ベースとして、一般道で行われました。まずは、プリウスの2リットルFFモデルから。

かなり急角度を持つAピラーを避けながらの乗車は窮屈かと思っていましたが、意外なほどスムーズでスッと身体が入ります。フロントまわりの風景はさほど見切りが悪い印象もなく、視界が悪いという印象は受けません。

国道を鋭角気味に右折する箇所では、左斜め後ろから接近するクルマを確認しないとならないのですが、左斜め後ろの視界が悪く不安があります。特にBピラーが遮る視界が広範囲で、気になりました。

ロングノーズで前方視界が心配だったのですが、意外なほどに前方視界は気になりません。かなり狭い道も走りましたが、前方は見切りもよく、センサーに頼ることもできます。

一方で90度以上の角度で右折する際には、斜め後ろの視界が大切になります。全体的に後方視界の悪さは気になる部分です。ただし、直進状態での後方視界は、各種センサーが助けてくれるので不安はほぼありません。

プリウスのリヤスタイル
プリウスのリヤスタイル

アクセル操作に対するトルクの発生はかなり力強いものです。0→100km/h加速は7.5秒と発表されています。

初代のトヨタ86(2012年型)の0→100km/h加速が7.4秒だったことを考えると、これはかなり速い数値と言えます。システム出力でいえば、先代から70馬力以上アップしているのですから、それも当たり前でしょう。

ドライブモードをスポーツにすると、加速も減速も力強くなります。感覚としてはアクセルのツキがよくなったという印象で、ワンペダルドライブに近くなります。ATセレクターをBにすると、減速感がさらに増しますが、エンジン音が増しノイジーになります。これはバッテリーが満充電の際に起きることで、バッテリーが回生電力を受け入れきれないからだといわれています。

アクセルペダルはオルガン式となった
アクセルペダルはオルガン式となった

足まわりもピックアップのいいエンジンに負けないものです。ステアリングを切った際の反応もほどよくシャープで、それでいて乗り心地もしっかり稼いでいます。路面の継ぎ目のような小さな段差から、上下にうねっているような路面でも上手にいなして走るところはさすがです。

フリクションが少なくしっかり動くサスペンションだけでなく、ボディそのものの剛性の強さも役立っている印象。高速道路をACC&レーンキープで走っている際の安定感、安心感も高いものでした。

ダッシュパネルには、左右いっぱいに配置される赤いラインのアンビエントライトが点灯しています。信号待ちなどで先行車が発進した際には、この赤いラインのアンビエントライトが点滅し、先行車が発進したことを知らせます。このインフォメーションは非常に自然で、好感が持てるものでした。

ダッシュボードを左右に貫くアンビエントライト
ダッシュボードを左右に貫くアンビエントライト
サブスクリプションのKINTO専用モデルとなるUグレード
サブスクリプションのKINTO専用モデルとなるUグレード

1.8リットルエンジンを搭載するモデルはパワーフィールが少し落ちる印象で、エンジンが始動した際のノイズが大きくなります。先代モデルに近い印象ですが、モーター出力が大きくなっている分、走りも力強くなっています。また、シャシー関係は進化しているので、走りの上質さは随分アップしているといえます。

今回は、まだプロトタイプであったPHEVにサーキットのコースで乗る機会がありましたが、全開走行ではなく最高速を80km/hに規制しての試乗でした。

プリウスPHEVはサーキットでの試乗となった
プリウスPHEVはサーキットでの試乗となった

PHEVはEV走行距離が従来型の1.5倍以上に伸ばされたとのことで、最初の1周はEVで走行。次の1周はハイブリッド走行、最後の1周は自由選択という試乗方式。

EV走行、ハイブリッド走行ともに加速は力強いものでした。0→100km/hは6.7秒。GR86のタイムが6.3秒とのことなので、その駿足さはまさにスポーツカー並です。

●プリウスのラインアップと価格/2リットルは一般販売、1.8リットルはサブスク&ビジネスユース

プリウスのフロントスタイル
プリウスのフロントスタイル

プリウスには、ハイブリッド仕様のプリウスと、プラグインハイブリッド仕様のプリウスPHEVの2つのタイプがあります。このうち、発売が始まっているのはハイブリッド仕様のプリウスのみで、PHEVはまだ発売されていません(2023年2月14日時点)。

ハイブリッド仕様のプリウスには従来どおりの販売方法が採られるモデルと、サブスクリプションの「KINTO Unlimited」専用モデルがあります。ハイブリッド仕様のプリウスには1.8リットルエンジン仕様と2リットルエンジン仕様があり、それぞれにFFと4WDが用意されています。

従来どおりの販売方法を採るモデルで、1.8リットルエンジン搭載車はX、2リットルは上級がZ、ベーシックグレードがG。サブスクリプション用モデルは1.8リットル搭載車のみでUというグレードになります。

1.8リットルのXグレードはビジネスユースという位置付けで、カタログも別になっています。ホイールはスチール、センターモニターも装着されないなど、装備もかなり簡略化されます。

「KINTO Unlimited」専用モデルのUになると、ホイールが17ンチのアルミになり、8インチのディスプレイオーディオが標準装備となります。

2リットルモデルになると、ホイールが19インチのアルミが標準ですが、17インチアルミホイールを11万2200円引きで装着することも可能です。ディスプレイオーディオはUと同じ8インチタイプです。

上級グレードのZになると、リヤバンパー(ロア)、グリル、センターピラーガーニッシュ、ホイールアーチモールディングが艶ありブラックとなります。Zの場合は、緊急時操舵支援(アクティブ操舵機能付)+ フロントクロストラフィックアラート(FCTA)+ レーンチェンジアシスト(LCA) が標準となり、ディスプレイオーディオは12.3インチとなります。

●プリウスのまとめ/ハイブリッドのイメージリーダーとなっていくプリウス

プリウスのフロントスタイル
プリウスのフロントスタイル

初代プリウスは、世界初のハイブリッドカーとして生まれました。初代も海外展開されましたが、5ナンバーボディであることなどもあり、大きなヒットとはなりませんでしたが、3ナンバーボディに改められた2代目は大ヒットモデルとなります。

グローバルでの累計販売台数は、500万台を超えるヒットモデルであるプリウス。2010年代前半は、年間で50万台を超える販売台数を記録したこともありますが、2021年は8万6000台と大きくその台数を落としています。

さまざまな原因がありますが、そのうちのひとつは、ハイブリッドがプリウスだけでなくなってきたことも大きな事柄です。もはやハイブリッドは特別なシステムではなく、普通のパワーユニットとなってきたことで、多くのクルマがハイブリッドシステムを採用するので、プリウスというブランドにこだわることなく、ハイブリッド車を選べるようになってきたのです。

そうしたなか、プリウスが担う役割は徐々に変わりつつあります。世界初のハイブリッドカーとして生まれたプリウスは、いわばハイブリッドの代名詞。プリウスはハイブリッドのイメージリーダーとして、突出した性能を誇るモデルとなっていけばいいのです。

そうしたことを踏まえると、今回のフルモデルチェンジは大成功。ファミリーセダンから始まったプリウスは、4ドアのハイブリッドスポーツカーへと進化したというわけです。

プリウスUのリヤスタイル。1.8リットルモデルは17インチホイールとなる
プリウスUのリヤスタイル。1.8リットルモデルは17インチホイールとなる

●プリウスZ主要諸元
・寸法
全長×全幅×全高(mm):4600×1780×1430〈4600×1780×1410〉
ホイールベース(mm):2750
トレッド 前/後(mm):1560/1570
車両重量(kg):1420〈1360〉

・エンジン
排気量(cc):1986〈1797〉
最高出力(kW(ps) /rpm):112(152)/6000〈72(98)/5200〉
最大トルク(Nm(kgm)/rpm):118(19.2)/4400~5200 〈142(145)/3600〉

・フロント電気駆動モーター
最高出力(kW(ps)):83(113)〈70(95)〉
最大トルク(Nm(kgm)):206(21.0)〈185(18.9)〉

・リヤ電気駆動モーター (E-Fourのみ)
最高出力(kW(ps)):30(41)
最大トルク(Nm(kgm)):84(8.6)

・駆動用バッテリー
化学成分:リチウムイオン
容量(Ah):4.08
トランスミッション:電気式無段階変速
ドライブトレイン:FWD、4WD

・燃料消費率(FF車、WLTCモード、km):28.6〈32.6〉

・シャシー
サスペンション(F/R):ストラット/ダブルウィッシュボーン
タイヤサイズ:195/50R19/〈195/60R17〉
ホイールサイズ:19×6.5J〈17×6.5J〉
ブレーキタイプ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
※〈 〉内はU

●プリウス バリエーション&価格
・2.0リットルHEV
Z FF 392万円
Z E-Four 370万円
G FF 320万円
G E-Four 342万円

・1.8リットルHEV
X FF 275万円
X E-Four 297万円
U FF 299万円(KINTO専用車)
X E-Four 321万円(KINTO専用車)

(文・写真:諸星 陽一)

この記事の著者

諸星陽一 近影

諸星陽一

1963年東京生まれ。23歳で自動車雑誌の編集部員となるが、その後すぐにフリーランスに転身。29歳より7年間、自費で富士フレッシュマンレース(サバンナRX-7・FC3Sクラス)に参戦。
乗って、感じて、撮って、書くことを基本に自分の意見や理想も大事にするが、読者の立場も十分に考慮した評価を行うことをモットーとする。理想の車生活は、2柱リフトのあるガレージに、ロータス時代のスーパー7かサバンナRX-7(FC3S)とPHV、シティコミューター的EVの3台を持つことだが…。
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