ソニーとホンダが新ブランド「AFEELA(アフィーラ)」を本格始動。新型EVを2025年に発売へ【CES2023】

■特定条件下での自動運転機能「レベル3」の実現を目指す

ホンダは、GMとの提携で量販価格帯のEVを2027年以降、北米を皮切りに投入するとすでにアナウンス済みです。日本や欧州には「Honda e」を投入済みで、2040年までにすべての新型車をEVとFCVに切り替えるとも表明しています。

さらに、ソニーと組み、高付加価値のエレクトリック・ビークル(EV)の販売とモビリティ向けサービスの提供を行う新会社、ソニー・ホンダモビリティ(SHM)を設立済みで、新会社によるEVの販売とモビリティ向けサービスの提供を2025年よりスタートする予定となっています。

ソニー・ホンダモビリティ アフィーラ
ソニー・ホンダモビリティ(SHM)が発表した「AFEELA(アフィーラ)」ブランドのプロトタイプ

そのSHMが、米国のラスベガスのリアル会場、およびオンラインで現地時間2023年1月5日に開幕した「CES 2023」において、新ブランド「AFEELA」(アフィーラ)」を発表しました。

同時に、新たなモビリティの提案として、プロトタイプも初披露しています。

ソニー・ホンダモビリティ アフィーラ
ソニー・ホンダモビリティ(SHM)が発表した「AFEELA(アフィーラ)」ブランドのプロトタイプ

代表取締役会長兼CEOの水野泰秀氏は、「アフィーラ」は、人とモビリティの新たな関係を提案する新ブランドであると説明。

安心・安全を実現するため、今回のプロトタイプには車内外に計45個のカメラ、センサーなどとともに、最大800TOPS(1秒あたりの演算処理回数[兆回]の単位)の演算性能を持つECUを搭載しているということです。

このプロトタイプをベースに開発を進め、2025年前半には先行受注を開始。同年中の発売が予定されています。デリバリーは、2026年春に北米から開始されます。

●光で人に語りかける先進のライト演出を採用

ソニー・ホンダモビリティ アフィーラ
新ブランド「アフィーラ」のプロトタイプの内装

内外装のデザインで追求されたのは、「新たなモビリティの価値基準の創出」としています。

クルマを構成する主な要素が、動力性能やパフォーマンスから、ソフトウェア、ネットワーク、ユーザーエクスペリエンスに変わっていく転換点において、従来のデザインに求められた個性や造形のあり方が見つめ直されたそう。

ソニー・ホンダモビリティ アフィーラ
新ブランド「AFEELA」のプロトタイプ

同時に、「積み上げられてきた価値観をブラッシュアップすることで、本質的な価値を浮き彫りにし、ピュアで強いデザインに昇華する」ことを目指したと語られています。

エクステリアには、モビリティと人がインタラクティブなコミュニケーションをするため、知性を持ったモビリティがその意思を光で語りかけるという「Media Bar」が搭載されています。

●移動空間をエンターテインメント空間に

ソニー・ホンダモビリティの代表取締役会長兼CEO、水野泰秀氏
SHMの代表取締役会長兼CEO、水野泰秀氏

一方のインテリアは、繭に包まれたような、無垢でやさしいラウンド基調のデザインが採用されています。単に心地いいだけでなく、注意を逸らす装飾性を極力なくし、シンプルなカラーを採用。人を中心とした機能と体験の実現を目指す内装になっています。

単なるBEV化だけでなく、リアルとバーチャルの世界を融合させることで、移動空間をエンターテインメント空間、感動空間に拡張させるのも狙いとしています。

『フォートナイト』でも知られるEpic Gamesとモビリティにおける新しい価値観やコンセプトの検討を開始したのもその一例です。また、モビリティのインテリジェント化を進めるべく、AD/ADAS、HMI/IVI、テレマティクスなど、主要機能にQualcomm Technologiesのデジタルプラットフォームである「Snapdragon Digital Chassis」の「SoC」を採用する予定だそう。

なお、「SoC」とは、装置やシステムの動作に必要な機能のすべてをひとつの半導体チップに実装する方式で、「System On a Chip」の略語です。

●車内外に45個のカメラ・センサーを搭載

ソニー・ホンダモビリティ アフィーラ
知性を持ったモビリティがその意思を光で語りかけるという「Media Bar」を搭載

「3A(Autonomy, Augmentation, Affinity)」の具現化も一部明らかにされています。

「Autonomy」では、「進化する自律性」と題して、安心安全技術の上に、快適な移動空間を提供することを目指しています。特定条件下での自動運転機能「レベル3」の実現を目指すと同時に、市街地など、より広い運転条件下での運転支援機能である「レベル2+」の開発にも取り組むとしています。

先述したように、最大 800TOPSの演算性能を持つハードウェアには、Qualcomm Snapdragon Digital ChassisのSoCが採用される予定で、今回のプロトタイプには、車内外に計45個のカメラ、センサーなどを搭載。

室内のインキャビンカメラやToFセンサー(光の飛行時間を計測し対象物までの距離計測を行うセンサー。Time of Flightセンサーの略語)により、ドライバーの運転状況や走行状態をモニタリングするなど、不慮の交通事故防止に貢献することを目指しています。

ソニー・ホンダモビリティ アフィーラ
プロトタイプのサイドビュー

「Augmentation」では、「身体・時空間の拡張」をテーマとして掲げています。新しいHMI(Human-Machine Interface)を提案し、クラウドで提供するサービスと連携することで、ユーザーごとにパーソナライズされた車内環境を実現。ユーザーに運転以外の楽しみを提供するのが狙いです。

ソニー・ホンダモビリティ アフィーラ
プロトタイプのドライビングイメージ

リアルとバーチャルの世界を融合していくことで、移動空間をエンタテインメント空間、感動空間へと拡張。メタバースなどデジタルをフルに活用し、新しいエンタテインメントの可能性も追求するとしています。

ソニー・ホンダモビリティ アフィーラ
プロトタイプのサイドビュー

先述したように、その一例として、Epic Gamesとモビリティにおける新しい価値観やコンセプトの検討を開始。さらに、センシング技術を活用した拡張現実(AR)によって、直観的なナビゲーションの提供を目指す構えです。

ソニー・ホンダモビリティ アフィーラのイメージ
新ブランド「アフィーラ」のイメージ

「Affinity」では、「人との協調、社会との共生」を目標として、カスタマーだけでなく、自動車産業におけるパートナー、さまざまな産業を支えるパートナー、そしてモビリティにおける新しいエンタテインメントの創出に共にチャレンジするクリエイターと、オープンで自由な環境を作っていくと表明。

新しいサービスへの取り組みは、5Gネットワークを介して、継続的にソフトウェアアップデートを行い、進化、成長させていく方針であると表明しています。

塚田 勝弘

この記事の著者

塚田勝弘 近影

塚田勝弘

1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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