ペットは乗員?それとも荷物? 車内に「ネコたくさん」で運転するのはNG?

■空前のネコブームだからこそ知っておきたい、ペットとクルマに関する法律

●道路交通法上、ペットは「モノ」

ネコの乗車イメージ
ペットをヒザに乗せて運転している人が検挙される例は少なくありません

「ペットも家族の一員」という意識は多くの人に浸透しており、実際にペットを飼っている人も増加傾向にあるといいます。クルマでお出かけする際には、ペットも一緒に連れて行くことは珍しくありませんし、クルマの窓から顔を出すイヌの姿を見ることもあるかもしれません。

しかし、あくまで道路交通法上では、ペットは「モノ」として認識されています。そのため、法律上シートベルトをする義務はありません。とはいえ、ドライバーがペットをヒザに乗せて運転することは、道路交通法第55条「乗車又は積載の方法」(*1)に違反する可能性があります。

これによると、運転者は安全な運転がさまたげられるおそれのある状態で人を乗車させたり、モノを載せたりしてはならないとされています。

ペットはもちろん、子どもや荷物であっても運転者のヒザの上に置くと、安全確認やハンドル操作に支障をきたすおそれがあるため、この法律に違反する可能性が非常に高いと言えます。

実際にペットをヒザに乗せて運転していた人が検挙される例は少なくないですし、安全運転上、絶対にやめましょう。

●車内にたくさんのネコ、運転は絶対にNG!

クルマに乗車するネコとイヌのイメージ
窓からペットが顔を出すような環境で運転するのは絶対にNGです

コロナ禍以降、イヌ・ネコを飼育する人が増えています。一般社団法人ペットフード協会の調査によると、「1年以内新規飼育者の飼育頭数は、犬・猫共にコロナ前の2019年に比べ、2020年、2021年共に増加となっている。新型コロナウイルス禍の影響で、ペットの生活から癒しを求めたり、家族内でのコミュニケーションを深めている傾向がうかがえる」とのこと。

とりわけ、2013年以来緩やかに増加してきたというネコの飼育頭数は、犬のそれを上回っているそう。

イヌと違い、ネコはお出かけがあまり得意でないことが普通ですが、それでも引っ越しや動物病院へ連れていくなど、クルマで移動しなければならないこともあるかもしれません。

ネコを飼っている人の中には、多頭飼いしている場合も多く、中には10匹近いネコを飼っている人もいます。そんな人がネコをクルマで移動させる場合、どんなことに注意すればよいのでしょうか?

前述の通り、道路交通法上はあくまで「モノ」であるため、たとえば助手席や後部座席にたくさんのネコがいること自体で検挙される可能性は低いと考えられます。

しかし、これはあくまでもすべてのネコが「モノ」として動かずにいる場合です。現実的にはあちこちを動き回ってしまい、運転者の肩やヒザの上に乗ったり、アクセルやブレーキの下に入り込んでしまうかもしれません。

そうなると安全な運転ができるとは言えないため、道路交通法第55条の「乗車又は積載の方法」や第70条「安全運転の義務」(*2)に違反する可能性が高いと言えます。

ネコとクルマで移動する時はケージに入れるなどして、運転中にネコが自由に動き回ることのないようにした上で、なおかつそのケージが運転者の視界をさまたげたり、ハンドル操作に影響を与えたりしないように積載しなければいけません。

●ペットを愛しているなら、安全運転を最優先に!

ケージに入ったネコのイメージ
ペットを愛しているなら、ケージなどの適切な使用、そして安全運転を最優先に!

以前、日当たりの良い走行中のダッシュボードの上でお腹を上にした「ヘソ天」の格好でリラックスしているネコの動画がSNSなどで話題になったことがあります。

一見すると微笑ましい光景にも思えますが、日本の法律上は違法行為に該当する可能性が高く、絶対に行ってはいけない危険な行為です。仮に検挙されなかったとしても、危険な運転は、自身はもちろん、ペットにとっても良いことでないことは明白です。

SNSなどでの「映え」を意識するあまり、法に触れたり、明らかに危険な行為に手を出す人は少なくありません。

道路交通法上ペットは「モノ」であると説明しましたが、実際の世界では大切な家族です。大切な家族であるからこそ、きちんとルールを守り、適切かつ安全な方法でペットをクルマに乗せなければなりません。

*注1:
1 車両の運転者は、当該車両の乗車のために設備された場所以外の場所に乗車させ、又は乗車若しくは積載のために設備された場所以外の場所に積載して車両を運転してはならない。ただし、もつぱら貨物を運搬する構造の自動車(以下次条及び第五十七条において「貨物自動車」という。)で貨物を積載しているものにあつては、当該貨物を看守するため必要な最小限度の人員をその荷台に乗車させて運転することができる。
2 車両の運転者は、運転者の視野若しくはハンドルその他の装置の操作を妨げ、後写鏡の効用を失わせ、車両の安定を害し、又は外部から当該車両の方向指示器、車両の番号標、制動灯、尾灯若しくは後部反射器を確認することができないこととなるような乗車をさせ、又は積載をして車両を運転してはならない。
3 車両に乗車する者は、当該車両の運転者が前二項の規定に違反することとなるような方法で乗車をしてはならない。

*注2:
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。

※2021年11月27日の記事を、2023年1月5日に追記・再編集しました。

梅村 ゆき