在来線初の最高速130キロの俊足651系0番代「スーパーひたち」、引き継いだ「スワローあかぎ」2023年3月ダイヤ改正で定期運用が終了

■「スワローあかぎ」と「スーパーひたち」の馴れ初めなど

●2023年3月のダイヤ改正で651系は定期運用から離脱

JR東日本は2023年3月18日のダイヤ改正で特急「草津」(上野〜長野原草津口間)を「草津・四万」に変更するとともに、平日運行の特急「スワローあかぎ」(新宿・上野〜本庄・高崎間)と土休日運転の「あかぎ」(上野〜高崎間に土休日運転)を「あかぎ」に統一し、使用車両を651系1000番代からE257系5500番代に変更すると発表しました。

3月で姿を消す651系1000番代「草津」

3月から投入されるE257系5500番代オール普通車の5両編成。窓側にはコンセントを設置していて利便性が向上します(コンセントなしの編成を使用することもあります)。

「草津・四万」「あかぎ」に導入予定のE257系5500番代

「草津・四万」「あかぎ」は運転時刻を見直して、利用しやすい時間帯に変更。また、「あかぎ」の運転区間も見直して、現行の「スワローあかぎ1号」の上野〜本庄間は上野〜鴻巣間の「あかぎ1号」となり、「スワローあかぎ8号」の高崎〜上野間を本庄〜上野間の「あかぎ8号」とします。

●在来線で初めて最高速度130km/h運転を行った651系0番代

そんな651系1000番代は、常磐線「スーパーひたち」用651系0番代を2013〜2018年に改造して転用した車両です。

651系0番代「スーパーひたち」は1989年3月11日にデビュー。在来線で初めて最高速度130km/h運転を行い、上野〜水戸間を1時間ほどで結びました。

「スーパーひたち」で活躍していた頃の651系0番代

現在では多くのJR特急や一部の私鉄特急でも行っている最高速度130km/h運転ですが、当時は規定されていた制動距離600m以内を満たすことが大きな課題となっていました。

651系0番代は滑走再粘着装置(自動車でいうところのアンチロックブレーキ)を搭載して、この規定をクリアすることができ、130km/h運転を可能としました。また、JRグループでは初めて乗務員支援機能・検修支援機能・乗客サービス機能を備えたモニタリングシステムを採用するなど、後の車両に繋がる技術を導入していました。

651系0番代は基本7両編成と付属4両編成各9編成、合計99両が製造され勝田車両センターに配置。最盛期には「スーパーひたち」15往復に使用されました。

速達タイプの「スーパーひたち」に対する停車タイプの「ひたち」系統は、1997〜1998年にE653系「フレッシュひたち」系統に発展。こちらの最高速度も130km/hに引き上げられました。2002年には「スーパーひたち」1往復が「フレッシュひたち」に変更され、同時に651系0番代「フレッシュひたち」が誕生。以後651系0番代を使用した「フレッシュひたち」が増えました。

651系0番代を使用した「フレッシュひたち」

651系0番代はE653系にはなかったグリーン車を連結していたほか、普通車のシートピッチもE653系の910mmよりも広い970mmだったため、651系0番代「フレッシュひたち」の人気は高かったようです。

2012年3月17日のダイヤ改正でE657系が登場。翌2013年3月16日のダイヤ改正には「スーパーひたち」「フレッシュひたち」をE657系に統一。これにより651系0番代は定期運用を失いました。651系0番代のうち基本編成と付属編成各2編成は引き続き勝田車両センターに配置されて、波動輸送などに使用されました。

2016年に羽越本線で運転したお召し列車の露払いに使用された651系0番代
2016年に羽越本線で運転したお召し列車の露払いに使用された651系0番代

2013年10月1日〜2015年3月15日には651系0番代を「フレッシュひたち」1往復に期間限定で充当。これはE657系に着席サービス用のランプを設置する工事の期間中に不足する車両を補うためでした。2016年には羽越本線で運転されたお召し列車の露払いのため、基本編成が山形県に遠征しています。しかし基本編成は2018年、2019年に廃車されました。

いわき〜富岡間の普通列車に使用されていた651系0番代付属編成
いわき〜富岡間の普通列車に使用されていた651系0番代付属編成

付属編成は2017年7月22日〜2020年3月13日までいわき〜竜田・富岡間の普通列車に使用されましたが、運用終了後、4月から6月にかけて廃車されました。

なお、E657系に置き換えられたのち余剰となった付属編成3編成と、2011年3月に発生した東日本大震災で被災した常磐線の原ノ町駅に取り残されていた付属編成1編成は、2012〜2016年に順次廃車となりました。

●高崎線の特急に転用改造された651系1000番代

E657系に置き換えられた651系0番代のうち基本編成7編成と付属編成3編成は高崎線の特急用として2013〜2018年に651系1000番代に改造され、大宮総合車両センター東大宮センターに転属しました。651系1000番代は2014年3月15日のダイヤ改正から「草津」「あかぎ」に導入。同時に「スワローあかぎ」の運行も開始しました。

「あかぎ」で活躍中の651系1000番代

「あかぎ」「スワローあかぎ」の一部は基本編成と付属編成を連結した11両編成で運行しました。しかし、付属編成は2015年3月13日に定期運用から離脱。このうち2編成は3年以上大宮総合車両センター東大宮センターに留置された後、2017年に廃車となりました。

わずか1年で定期運用を失った651系1000番代付属編成

付属編成のうち1編成は2016年に観光車両「伊豆クレイル」に改造。国府津車両センターに転属し、2016年7月から小田原〜伊豆急下田間で運転を開始しました。

観光列車「伊豆クレイル」

「伊豆クレイル」は女子旅を意識した内外装とし、伊豆の海や山を見ながら食事を楽める列車でしたが、2020年3月29日で運行を終了しました。2020年4月4日と6月28日に静岡デスティネーションキャンペーンのオープニング列車およびクロージング列車をラストラン列車とする予定でしたが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で両列車の運行は中止となり、そのまま2020年10月に廃車となりました。

●651系1000番代の今後はどうなる?

2023年、3月のダイヤ改正で651系1000番代は定期運用を失う見込ですが、今後の処遇についてはまだ明言されていません。

651系1000番代基本編成7編成のうち、1編成は2022年に廃車となっていて、現在在籍しているのは6編成です。「草津」「スワローあかぎ」「あかぎ」については平日5編成、土休日3〜4編成で回せるようです。

臨時特急「水上」に使用されている651系1000番代
臨時特急「水上」に使用されている651系1000番代

2017年以降臨時特急「水上」にも651系1000番代が使用されており、2022〜2023年の年末年始にも上野〜水上間で運行する予定です。

これに対してE257系5500番代は5編成が在籍しているので、単純計算ではそのまま置き換えることができそうです。しかし、大宮総合車両センター東大宮センターでは多くの臨時特急・快速や修学旅行列車を受け持っているので、波動輸送用として651系1000番代もしばらく残るかもしれません。

ダイヤ改正まではあと3か月。定期運用で活躍する651系1000番代を見届けたいと思います。

(ぬまっち)

この記事の著者

ぬまっち(松沼 猛) 近影

ぬまっち(松沼 猛)

1968年生まれ1993~2013年まで三栄書房に在籍し、自動車誌、二輪誌、モータースポーツ誌、鉄道誌に関わる。2013年に独立。現在は編集プロダクション、ATCの代表取締役。子ども向け鉄道誌鉄おも!の編集長を務める傍ら、自動車誌、バイク誌、鉄道誌、WEB媒体に寄稿している。
過去に編集長を務めた雑誌はレーシングオン、WRCプラス、No.1カーガイド、鉄道のテクノロジー、レイル・マガジン。4駆ターボをこよなく愛し、ランエボII、ランエボVを乗り継いで、現在はBL5レガシィB4 GTスペックB(走行18万km!)で各地に出没しています。
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