元全日本ラリーチャンプ・島田親吾に聞いた、オールドラリーストにとって感慨深かったシーンとは? 【WRCラリー・ジャパン2022】

■yuri&親吾の島田親子も念願だった、WRCラリージャパンが開催!

●元・全日本ラリー選手権チャンピオン、yuriの父・島田親吾が見た「フォーラムエイト・ラリージャパン2022」

2022年11月10日(木)~13日(日)に、FIA WRC(世界ラリー選手権)第13戦「フォーラムエイト・ラリージャパン2022」が愛知・岐阜で開催されましたね。

ラリージャパン
サーキット観戦に慣れていた私にとって、崖の上からの観戦は衝撃的でした(2010年ラリージャパン)

私の父は、1987年・89年全日本ラリー選手権チャンピオンの島田親吾。小さい時の私のおもちゃは、マルティーニカラーをまとうランチア・ラリーカーのミニカーで、ラリーはとても身近な存在でした。

島田親吾×マーチ
島田親吾×マーチ(1987年/AUTOSPORT誌より)

2010年にキミ・ライコネンを応援しに北海道で開催されたラリージャパンへ家族で観に行った時には、林道をもの凄いスピードで駆け抜ける姿に圧倒されまくり。F1とは違い、とても近くでドライバーやラリーカーを見られることにも驚き、「また観に行きたい!」と思っていました。

しかし、ラリージャパンは翌年から日本で開催されず、その夢は途絶えてしまったのですが、2018年にWRC日本ラウンド招致準備委員会が設立され、招致活動が始まったのです! あの時は嬉しかったしワクワクしたなぁ。

モータースポーツがどんどん遠い存在になっていってしまっていた日本に、世界選手権を招致するって物凄く大変なことだし、でもその分、夢のある話で絶対絶対成功して欲しいと願っていました。

ラリージャパン
島田親吾。愛車S660でサーキット走行することに夢中です

そして、2020年に愛知・岐阜でラリージャパンの開催が決定! しかし、新型コロナウイルスの影響で2年間開催されなかった時には、「このまま白紙になってしまったらどうしよう…」と心配しました。が、2022年には無事に開催されて本当に良かったです。

もちろん私と父は現地観戦に行くつもりでいました。しかし、諸事情により行くことができず…(涙)。でも、誰よりも楽しみにしていた父は、テレビ観戦ならではの楽しみ方でラリージャパンを満喫したようなので、感想を聞いてみましたっ♪

●テレビ観戦ならではの楽しみ方

── テレビ観戦になってしまったけれど、ラリージャパンは楽しめた?

ラリージャパン
熊野神社の目の前をラリーカーが駆け抜けるという、日本ならではのコースも素敵でした(2022年ラリージャパン)

「広い北海道を舞台に開催されたこれまでのラリージャパンに対し、今回の開催地は主要都市に隣接する中部エリア。北海道に比べると道幅が狭くツイスティな場所が多いだけに、WRCドライバーたちのパフォーマンスを十分に見ることができるのかという懸念があったんだ。

でも、オンボードカメラの映像を見て、そんなものは一気に吹き飛んだ。なにせ、渓流釣りにでも行くような道を高速道路なみのスピードで走るのだから、その凄さがむしろ分かりやすい。

世界レベルのドライバーたちにとって、どのような道であろうと、その道を限界スピードで走ることは、呼吸をすることと同じく自然体なのだろうね」

── ラリーカーが林道を駆け抜ける時のスピード、音や匂い、砂埃の凄さなどを体感できるのは現地観戦の醍醐味。でも、その瞬間を見られるのは一瞬で、ドライバーのテクニックをじっくり味わえるのは、確かにオンボードカメラの映像かもしれないね。

ラリージャパン
見ているこちらがヒヤヒヤするような場所を走るのもラリーの魅力(2022年ラリージャパン)

「道幅は、ほぼ1車線。両側に積もった落ち葉がさらに道を狭め、その外側にはぼっかりと深い側溝が口を開けている。左、右とミドルコーナーが続く下りを、ラリーカーは一気に駆け抜けていく。

オンボードカメラに映し出されたスピードデータは、エスケープゾーン(安全性確保を目的として設けられるスペース)のない狭いコースで127km/h! 先に続く左タイトコーナーへの進入は、クルマの挙動が不安な中で、一気に54km/hまで減速して、『マジか~!!』って驚いたよ」

●日本人ドライバー、勝田貴元選手が3位表彰台!

── ラリージャパンが日本に戻ってきたことはもちろん、日本人初のWRCフル参戦ドライバー、勝田貴元選手(トヨタGRヤリス・ラリー1)が日本のファンの前で3位表彰台を獲得したことも嬉しかったなぁ。

ラリージャパン
勝田貴元選手(2022年ラリージャパン)

「そうだね。かつて日本のラリーストはWRCに出場することが夢、トップ10にでも入ろうものなら月面着陸したような騒ぎだったんだ。

でも、いまやトップカテゴリーの強豪たちと互角のバトルをしている。さらに勝田選手は親子3世代ドライバーで、祖父の勝田照夫氏はWRCに挑戦する日本人ラリードライバーの先駆者だったし、父親の勝田範彦選手は現役の全日本タイトルホルダーだ。

サーキットレースでも親子2世代ドライバーが活躍しつつあって、日本のモータースポーツの歴史に厚みが出てきたことはとても嬉しい」

── 2022年シーズンは、TOYOTA GAZOO Racing WRT Next Generationのドライバーとして参戦した勝田選手。来シーズンはTOYOTA GAZOO Racing WRTのトップチームからの参戦が発表されて、今後の活躍が益々楽しみになったよね。

ラリージャパン
サービスパークのTOYOTA GAZOO Racing前は人、人、人! 行きたかった〜(2022年ラリージャパン)

「長いWRCの歴史の中で、日本車は数々の栄光を残してきた。ところが残念ながら、その歴史の中に、WRCタイトルを争った日本人ドライバーはいないんだ。

でもYARISという高性能なマシン、勝田選手というドライバー、そしてWRCを開催する環境と、いよいよ日本がラリー強豪国と言える3つのカードが揃った。来シーズンも楽しみだね」

●モータースポーツが身近な存在になりますように

── 最後に、FIA WRC 第13戦「フォーラムエイト・ラリージャパン2022」の総評をお願いします!

ラリージャパン
タイムアタックが行われる区間まで一般道を交通法規を守って移動するので、一般車の間にラリーカーという不思議な光景がうまれる。後ろを走っていた方、羨ましいっ!(2022年ラリージャパン)

「テレビ画面に、イルミネーションに飾られた街路樹の下を、夕暮れのクルマの流れと共に走るラリーカーが映し出されたんだ。真っ暗な夜の林道がメインステージで、日本でのラリーの市民権の確立を渇望していたオールドラリーストには感慨深かったなぁ。

今回のラリージャパンは、映画、コミック、テレビ、各種のイベント等、長期間をかけて周知のために様々なプロモーションが展開された。生活圏に入り込んだ主要都市部の開催ならではのメリットを生かし、ショースポーツとして大きく前進したと言えるだろうね。

F1では市街地コースでの開催を増やしているし、東京でも2024年にフォーミュラEの開催が予定されている。観客を呼ぶ時代から見せに行く時代へ。もともと公道がステージのWRCは、そんなスタイルがよく馴染むと思うんだ。

モータースポーツがもっと身近な存在になり、クルマ好きユーザーを育てる原動力になっていってほしいね」

島田親吾×マーチR
島田親吾×マーチR(1988年/AUTOSPORT誌より)
島田親吾×マーチR
島田親吾×マーチR(1989年/AUTOSPORT誌より)

【島田親吾プロフィール】

・1987年全日本ラリー選手権Aクラスチャンピオン
・1989年全日本ラリー選手権Bクラスチャンピオン
・元モータージャーナリスト、ラリードライバー
・ラリーホモロゲーションモデル・日産マーチRの開発に携わる

(文:yuri/画像:TOYOTA GAZOO Racing/yuri/AUTOSPORT誌)

この記事の著者

yuri

yuri 近影
2006年のF1日本GPを観に行ってから、どっぷりF1&ジェンソン・バトンにはまってしまったF1女子。F1が大好きですが、クルマの運転は下手(小林編集長お墨付き)、メカニズムも苦手、だけどドライバーの知識と愛だけは自信あり! もっと気軽にF1を楽しんでもらいたい、好きになってもらいたいという気持ちで執筆活動をしています。趣味はバトンの追っかけと、F1海外観戦。現在は新米ママとして子育てに奮闘しながら、のんびり記事を更新中。あたたかーい目で見守っていただけると嬉しいです。