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■レクサス初のステアバイワイヤを清水和夫が試してみたら、超クイックでニヤニヤが止まらない
●ステアリングは丸くなくてもいいんだね~ by 清水和夫
前回、レクサスSUVのBEV「LEXUS RZ 450e Prototype」の下山テストコース試乗をお届けしました。
今回は、トヨタ開発拠点のひとつ、東富士テストコースで試乗したレクサスの新たなテクノロジー「ステアバイワイヤ」システムが搭載されたRZ試乗を紹介します。
電動化、コンピューター化が進む中、ついに搭載されたステアバイワイヤ。その使い勝手はどうなのか? 国際モータージャーナリスト・清水和夫がワクワク試乗しています!(クリッカー:永光)
●電気的にステアリングを動かすのが「ステアバイワイヤ」
ついにレクサスの電気自動車(BEV)RZに、ステアバイワイヤが搭載されます。
このステアバイワイヤ、言い方を変えるとバイワイヤステア。これがステアリングではなくブレーキの場合はバイワイヤブレーキ、アクセルの場合はバイワイヤアクセル、またはバイワイヤスロットル、という風に言われます。
つまり、機械的につながっているのではなくて、すべてモーターを使って電気的にハンドルとかブレーキとかアクセルを動かすものが、バイワイヤという技術です。
一番最後にこのステアバイワイヤの技術が出てきたわけですけど、このメリットは何かというと、モーターでハンドルを切りますから、たとえば小回り性の向上。
ハンドルをグルグル回さなくても35度くらいのフルロックまでフロントのタイヤを切ることができるので、車庫入れとか非常に楽です。
ただ、そこまでクイックになってしまうと、高速道路でちょっとでもハンドルが動いただけで隣のレーンにレーンチェンジしてしまいますから、スピードに応じてステアリングのギヤ比を変えることが自由自在にできる、というメリットがあります。
一番気になるのはハンドルとタイヤが連結されていないと、なんか切った手応えがゲームセンターのゲームマシンみたいになってしまうのではないか?というのが、自動車メーカーが一番気になるところ。
実際に、このハンドルの手応えみたいなところを人工的に作る、まさにリアルに走ったときのハンドル、手のひらで感じるタイヤの接地感みたいなものを触覚として合成的に、人工的に作り上げるのが、おそらく技術の肝になるのではないかなと思います。
このステアバイワイヤが揃ったことで、ブレーキ/アクセル/ハンドルがすべて電気モーターで制御できるということは、将来的にはクルマの知能化が自動運転含めて物凄く進んでいくのではないかな、という風に考えております。
●低速では超クイック、高速ではダイレクト感あり
お~~~! 凄いなぁ。低速ではスゴイ! 超クイックですねぇ。クイック、クイクイ曲がるね♪
スピードが上がるとギヤ比は普通に戻ってきます。
内周路行きますね。30km/hくらいのときに切ると…お~っと! 凄いな。スピードが上がるとギヤ比は普通になりますね。でもなんか、F1に乗ってるみたいな感じですよね。両手に9時15分でグリップして。
このステアリングホイールいいなぁ♪
今、90km/hくらいなので、ギヤ比はノーマルのコンベ(Conventional)のステアリングと同じようなギヤ比です。ただ、バイワイヤなのでこのステアリングの重さとか剛性感というのは、まぁかなりコッチのほうがしっかりしています。
遊びが無いというか、非常にダイレクト感があり、同じギヤ比でもコッチ(バイワイヤ)のほうが保舵力とか保舵特性とか、しっかり感があっていいですね。
ハンドルは丸いもんだと思っていたけど、そういう時代じゃないんだな。
気が付いてみるとこのクルマ、バッテリーEVだから、床下にバッテリーがあるから背の高いSUV。だけど、非常に低重心で運動性能高いですよね。なので、狙ったところに入っていけるというかね。
まさに「馬の目を射抜く」ように、ピンポイントに狙ったラインに入っていけます。
スピードが落ちると非常にクイックになるので、切り過ぎると内側のガードレールに入っていっちゃうので、ゆっくり切らないとだめですよね。キュ!って切ったらガバッ!とインに入っちゃう。大切なのは、低速はゆっくり切る。
スピードが出れば、ステアリングを振っても直進性は乱れないですね。50km/hくらいだと、スパッと切っちゃうとかなり内側に入っちゃうので。まぁ、慣れですね。ちょっと走ればこんなもん慣れるね。でも多分、これに慣れたら普通のステアリングは乗れなくなるかもですね。
まぁ良くできてるわ!
80km/h以上は非常にポルシェみたいなステアリングフィールです。
ハンドル切って内側に入っちゃうっていうのはね、ホンダのNSXがフロントモーター外輪増速していましたから、ベクタリングで。ただ、これはそういう駆動力制御じゃなくて、あくまでもステアリングのギヤ比制御でやっています。
ヒョイ! お~っと~内側、入っていくねぇ。切り過ぎると内側のガードレールいっちゃうからな。
ラリーに欲しいな、このステアリング♪
切り返したときもいいですね。剛性感があって遊びが無いからシュッシュッて感じ。
EVで、いろんなみなしマニュアルミッション車とか、バイワイヤとか、いろんなトッピングが付くと楽しいですね。普通のEVだったら要らないなって思っていたけど、
さ、恐怖の低速! フフフッ♪ クルっと回りますね。キュッキュッって感じ。
●トヨタ・シャシー開発部・山口武成さんにインタビュー。「コンピューター化されても、目指すは人間中心で」
では、トヨタ自動車 第一シャシー開発部 山口武成さんにいろいろ突っ込んで聞いてみたいと思います。
清水:山口さん、なかなかちょっと、凄いな! 凄いっていうのは、完成度が高い。
山口:ありがとうございます。
清水:ギヤ比は100km/hくらいになると普通のコンベと同じなんだけど、やっぱりステアリングの遊びが無いというか、剛性感がありますね。
山口:そこはやっぱり狙いとして、ステアバイワイヤの良いところのひとつかなと思っています。
清水:なんかこうね、メカニカルなシャフトで繋がっていたほうが剛性感があるように思うんだけど。今までステアリングシャフトって真ん中に蝶番があったから、意外と剛性無かったんですよね。
山口:今回、電気信号でしっかり応答させるというところで。
清水:これで、アクセルもバイワイヤ、ブレーキもバイワイヤ、ステアリングもバイワイヤ。バイワイヤの白發中(ハク・ハツ・チュン)みたいな感じなんだけど。こういう時代って、意外と早く来ましたね!
山口:そうですね。できればもっと早く、とも思っていましたけど、やっぱりなかなか。
清水:冗長性というのは難しいですよね。システムがダウンしたときにどういう風にバックアップするか、みたいな。
山口:そうですね。そこはやっぱり一番、設計としても難しいところでして、どういう部品がどういう順番で壊れても、ちゃんと狙った通りに安全を確保できるというところ。そこをしっかり作り込みました。
清水:でも考えてみれば、航空機なんて完璧にバイワイヤじゃないですか。だから、航空機の安全性の冗長性なんかが、やっぱり根付いていますね。
山口:はい、そうですね。あと、自動運転のEPS(電動パワーステアリング)も冗長ですでに出していますので。そういう積み重ねがあって、バイワイヤというカタチになっています。
清水:でも、将来、こういうバイワイヤ系と電動化と自動運転みたいなものが増えてくると、なんかコンピューターだらけになって、それはそれでテクノロジー的には面白いんだけど、なんかこう、そうじゃない正反対のクルマも欲しくなるよね。
山口:そういう意味で、自動運転との親和性みたいなものももちろんあるんですけど、一方で新しいFun to Driveみたいな運転する楽しさというのも、ぜひこういうところで実現していかないといけないな、と。
清水:直感的には、あのステアリングホイールが楕円(コの字型っていうのかな?)になっていて、F1みたいじゃないですか。これが意外とグリップ感が良いし、なんか「手の座り」が良いんですよね。だから、あのステアリングホイールだけでもいいから、今、全日本ラリー選手権で走っている自分のヤリスにちょっと付けたいな!なんて。アレだけ売ってくれないですか?(笑)
山口:あはは! 後で相談ということで!
清水:エアバッグはどこから出てくるの?
山口:普通に出てきます。ただ、上が無いので、そこを押さえる機構が無いので、バッグの形状を工夫してしっかり補って。衝突性能としては十分確保しています。
清水:あと、低速で思いっきりクイックじゃないですか。あれ、慣れないと内側に入り過ぎちゃうところもあったけど。まぁ2~3km走ればすぐ慣れちゃう。でもこれに慣れると多分、私今日の帰り、普通のクルマ乗れないんじゃないかと。「あれ、切れない!」みたいな。
山口:ご注意いただいて! ただ、ギヤ比にはやっぱり慣れやすい性質を人間が持っているというところは分かっていますので、そこのところはいろんな研究もあって、分かっているところです。
清水:あ~自然にアダプトするんですね。やっぱり人間工学というか人間研究ですね、最終的には。
バイワイヤになって、DX的なテクノロジーだけど、目指すは人間中心というか、人がどう感じるかというところが大事ですね。
山口:そうですね。それで運転の楽しさを伝えていければなと思います。
清水:1分、1秒でも早く出してください!
山口:ありがとうございます。頑張ります!
「TAZUNA Cockpit」と名付けられたRZのコクピットに鎮座するコの字型ステアリングがお気に入りになった清水さん。次戦の全日本ラリー選手権で頑固一徹スポーツCVTヤリスに付いていたら、皆さん、拍手してあげてください!(笑)
では、ステアバイワイヤが搭載されたレクサスRZ450e Prototype、すべてのインプレッションは動画で!
(試乗:清水 和夫/動画:StartYourEnginesX/アシスト:永光 やすの)
【SPECIFICATIONS】
車名:LEXUS RZ450e Prototype
全長×全幅×全高:4805mm×1895mm×1635mm
ホイールベース:2850mm
フロントモーター出力:150kW
リアモーター出力:80kW
航続距離:約450km
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