クルマが水没するとドアが開かず脱出困難?集中豪雨で道路が冠水したときの正しい対処法

■JAFが提唱する大雨時の注意点や対策

近年、ゲリラ豪雨や台風などの際、道路が冠水するなどの被害が続出しています。クルマを運転している時に、そんな状況に遭遇すると、クルマが故障するなどのトラブルが発生するだけでなく、命に関わる危険さえあります。

道路が冠水したときの正しい対処法
道路が冠水したときの正しい対処法などを紹介 *写真はイメージ

では、実際、ドライブなどの最中に、もし大雨が降った場合どういった対策をとったらいいのでしょうか? ここでは、その予防策や冠水した際の対処法などを紹介します。

●水浸しの道路や川沿いなどには近づかない

まず、大雨で道路が水浸しになった場合には、どうすればいいのでしょうか?

答えは「できるだけ近づかない」ことです。

水浸しの道路では、水中にある道路の様子が分かりませんし、どれくらい深いのかも不明だからです。

ロードサービスを手掛けるJAF(日本自動車連盟)では、公式ホームページで、台風や大雨の危険が近づいているというニュースや気象情報を見聞きしたら、

・アンダーパス
・川沿い
・海岸沿い
・急傾斜地

などの危険な場所には近づかないように注意喚起しています。

道路が冠水したときの正しい対処法
アンダーパスは冠水しやすい *写真はイメージ

都市部では、特に注意したいのがアンダーパス。道路の下をくぐる構造になっている立体交差のことですが、そうした低い場所は大雨の時に冠水しやすく、そこに進入したクルマが水没してしまうというトラブルが数多く発生しています。

また、海岸沿いや崖のそばは、土砂災害に遭遇する危険性があるため、やはり走行するのは避けたいところ。さらに、河川の周囲を走行しているときは、川の水位や流れに注意し、同じくできるだけ走ることは避けた方がいいでしょう。

道路が冠水したときの正しい対処法
大雨で道路が水浸しになった場合は、できるだけ近づかないことが一番 *写真はイメージ

「君子危うきに近寄らず」ということわざがありますが、大雨時はそうした場所を走らないことが一番だといえます。

●もし冠水した道路に入ったら?

では、もし冠水した道路にクルマが進入してしまった場合、どんなことが起こるのでしょうか?

道路が冠水したときの正しい対処法
「冠水路走行の注意点」を検証するJAFのテスト模様 *出展:一般社団法人 日本自動車連盟(JAF)【地方】

同じく、JAFの沖縄支部では、2021年6月〜7月の1ヵ月間で水没救援要請が33件あったことで、これからの時期、同支部へのロードサービス救援要請が増えることを予想。

大雨・集中豪雨時の不要不急な外出を避けるように自動車ユーザーへ呼びかけるために、JAFが実施した「冠水路走行の注意点」を検証するテストを紹介しています。

テストでは、集中豪雨などでアンダーパスのように低い場所にある道路が冠水した場合を想定し、ミニバンタイプの車両(トヨタ・ノア)が水深何cmまで後席スライドドアを開くことができるかを検証しています。

具体的なテスト内容は、水を溜めた試験場のスロープ(角度5.7度)と平坦部分を用いて、水深が30cm、60cm、90cm、120cmのそれぞれにクルマが進入した場合、車内からドアが開けられるかどうかをチェックしています。

それによれば、水深90cmくらいから車体が浮き始め、後輪が浮いている間は車内外で水位差があり、ドアに強い水圧がかかるためドアを開けることができなかったそうです。

また、クルマが完全に水没した状態では、車内外の水位差が小さくなり、水の抵抗で重いものの、どの水深でもドアを開けることは可能だったとか。ただし、これも、水深が深くなるほど開けるのに時間がかかったそうです。

さらに、テストでは、車外からミニバンの後席スライドドアを開けられるかどうかも検証。水深60cmでは、ドアへの水圧によって開けることができなかったといいます。つまり、もし救護が来ても、脱出がより困難だということですね。

ちなみに、JAFはセダンタイプでも、同様のテストで運転席ドアを開けられるかどうかを実験。それによると、セダンでは、ミニバンより浅い水深60cmで後輪が浮きはじめ、ドアが開けらなくなったなどの結果が出ています。

●冠水した道路に関する注意点や予防策

これら結果を踏まえ、JAFでは、クルマの水没時の危険性や、注意喚起、対処法などを以下のように紹介しています。

道路が冠水したときの正しい対処法
JAFでは、冠水時にスライドドアを開けられるかテストを実施 *出展:一般社団法人 日本自動車連盟(JAF)【地方】

・水没時にドアも窓も開かない場合、車内外の水位の差が小さくならないと(完全に車両が水没しないと)ドアは開けることができない

・車両が前傾して浮いている場合、後席のドアなど水圧の影響を受けにくいドアから脱出を試みる

・アンダーパスなどの周囲より低い道路では、水かさが急激に増えて水没車両から脱出することが困難になることもあるので、安易に冠水路には入らない

・万が一に備えて、脱出用ハンマーを車内の手に届くところに常備しておくことが大切

道路が冠水したときの正しい対処法
まさかに備え脱出用ハンマーを車内に備えることもおすすめ *写真はイメージ

いかがでしたか? 最悪の状況を避けるためにも、くれぐれも大雨時は冠水した道路には注意したいものです。

なお、これらテストの結果については、JAF公式ホームページ「実験検証JAFユーザーテスト」で確認することができ、ページ内のリンクから実験中の映像も見ることができます(YouTube公式チャンネル)。

(文:平塚 直樹

【関連リンク】

JAF公式ホームページ「台風・大雨時のクルマに関する注意点」
https://jaf.or.jp/common/attention/flood

実験検証「JAFユーザーテスト」
https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test

JAF公式YouTubeチャンル「クルマが水没!!水深何cmまでスライドドアは開くか?(ミニバン)【JAFユーザーテスト】」

この記事の著者

平塚 直樹 近影

平塚 直樹

自動車系の出版社3社を渡り歩き、流れ流れて今に至る「漂流」系フリーライター。実は、クリッカー運営母体の三栄にも在籍経験があり、10年前のクリッカー「創刊」時は、ちょっとエロい(?)カスタムカー雑誌の編集長をやっておりました。
現在は、WEBメディアをメインに紙媒体を少々、車選びやお役立ち情報、自動運転などの最新テクノロジーなどを中心に執筆しています。元々好きなバイクや最近気になるドローンなどにも進出中!
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