検疫までの1kmトイレが使えず…日本-タイの出入国手続きはどうなってる?【最新海外旅行レポート 2022年6月版】

■入国や出国はコロナ前とどう変わった?

制限緩和後の海外旅行
2年半ぶりの海外旅行先はバンコク。日本航空31便で旅立った

タイは日本人にとって馴染みがある海外旅行先の一つです。タイ観光・スポーツ省によれば、タイを訪れた日本人は2019年に約180万人を初めて突破し、日本人が訪問する国としては5番目の多さとなっていました。しかし、コロナ禍でその訪問者数は事実上、ほぼゼロになってしまいました。

そして今、コロナ禍もようやく落ち着きを見せ始め、観光客数は徐々に回復。日本人も今年4月には1か月で1万1000人ほどがタイを訪れるまでになったそうです。そこで私も2年半ぶりの海外旅行先としてタイを選択。その際に経験した出入国手続きについて解説したいと思います。

●タイ入国に必須だった「タイランドパス」って?

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タイを訪問するのに検疫で必要となった「タイランドパス」。7月1日からは全面撤廃される予定だ

2022年6月21日、私にとって2年半ぶりの海外となった行き先はタイでした。コロナ禍により入国者に課していたPCR検査や1泊目の指定ホテルへの宿泊などが撤廃されたからです。とはいえ、無条件で入国できるわけではありません。6月の時点では、入国希望者のすべてがタイの入国申請システム「タイランドパス」に様々な情報を登録する必要があったのです。まずは、その登録からお伝えします。

まずインターネット経由で指定されたサイトへアクセスしてタイランドパスを登録します。そこでは渡航目的や出発国、到着する空港、フライトナンバー、タイ到着日と出国予定日を記入します。続いて名前や誕生日、E-mailアドレス、職業、パスポートナンバー、最後にワクチンを接種した日、宿泊するホテル情報や緊急連絡先を入力。その上でパスポートのコピーや、ワクチン接種証明書、医療保険(1万ドル以上)証明書を画像データとしてアップロードします。

これらすべての手続きを終えると1時間ほどで承認のメールが届き、そこには隔離なしを示す「No Quarantine」のアイコン付きのタイランドパスが添付されていました。これで晴れて隔離なしで入国できる条件が整ったことになります。

ただ、このタイランドパスもワクチン接種完了者に限り、2022年7月1日以降は撤廃されることになっています。つまり、7月以降なら入国時にワクチン接種証明書の提示だけでよくなるのです。入国後の隔離期間もありません。また、ワクチン未接種の人であっても、日本出国72時間以内に受けた陰性証明書を提示することで隔離なしで入国ができるそうです。

●「タイランドパス」は日本出発時に早くも必要となる

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バンコク・スワンナプーム国際空港。海外の空港を見るのは2年半ぶりだ

さて、バンコクへ向かう当日となりました。チェックインしたのは羽田空港第3ターミナルの日本航空(JAL)カウンター。ここでパスポートと共にタイランドパスの提示を求められました。もし、タイランドパスが「No Quarantine」になっていなかったり、ワクチン未接種の場合は渡航72時間前の陰性証明書を提示しなければなりません。私はタイランドパスが「No Quarantine」となっていたことで、問題なくチェックインができました。

ただ、同行者の話では、iPhoneのWalletに入れたタイランドパスを見せたところ、搭乗券と勘違いされてしまい、結局は紙に印刷したタイランドパスを見せざると得なかったようです。おそらくWalletに表記されている「Tokyo→Bangkok」が勘違いの元になっているのではないかと推察されます。なので、タイランドパスは単にスマホでキャプチャーしたものか、紙に印刷したものを提示するのがスムーズなような気がしました。

そして約6時間ほどのフライトを終え、バンコク・スワンナプーム国際空港に到着。日本の国内線のような感染予防の降機順番はなく、従来通りクラス別の降機でした。ボーディングブリッジを抜けると、そこはスワンナプーム国際空港。私にとっては待ちに待った2年半ぶりの海外。まさに気分は感無量、思いっきり海外の空気を吸い込みました。

●空港到着後、「タイランドパス」は入国審査前にチェック

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入国審査の前に「タイランドパス」による検疫チェックが実施されていた

ここから動く歩道を乗り継ぎながら入国審査(イミグレーション)まで歩いていくと、やがて『THAILAND PASS』を示す場所に到着。ここでタイランドパスとパスポート、機内で書いた入国カード、搭乗券を提示します。私の場合、タイランドパスが「No Quarantine」になっていたことで、照合が済むとすぐに入国カードに許可のスタンプが押されました。

ここで注意すべきは、スマホでタイランドパスを表示する場合です。空港には無料Wi-Fiがありますが、通信がうまくいかなければこの表示ができない可能性があります。キャプチャーしてあるなら問題はないと思いますが、そんなことも想定し、念のため、やはり紙に印刷したタイランドパス持参すると確実と思いました。

さらに進むとイミグレーション入口手前で、入国カードにスタンプが押されているかを再チェック。ここを通過した後は従来と同じ、入国審査となります。イミグレーションはコロナ禍で閑散としているかと思いきや、並んでいる数は従来より幾分少ないかなと思う程度。タイに限って言えば入国者数はコロナ禍以前に戻りつつあることを実感しました。

●日本帰国時の手続きをスムーズにする「My SOS」

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無事にタイ入国できた後は、タイ料理や観光で2日間を過ごした。写真は「ワット・パークナム」

バンコク滞在中は、渡航の目的である某会社を表敬訪問し、その後はタイ料理三昧。最終日にはバンコクで最も新しい寺院「ワット・パークナム」を訪れるなどして、実質2日間とちょっとの滞在はアッという間に過ぎました。

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ワット・パークナムの最上階にある仏陀の生涯を描いた(仏伝図)の天井画

ただ、帰国のフライトに乗る前に絶対済ませておかなければいけないことがあります。それは日本の帰国時に必要となる「My SOS」をスマホにインストールし、そこにワクチン接種証明書や現地で取得した陰性証明書をアップロードすることです。

日本への帰国時は空港検疫手続きの一部を「My SOS」で入国前に済ませておける“ファストトラック”を実施中です。それが6月1日からは検疫の緩和措置として、新型コロナウイルスの蔓延状況に応じて地域を青・黄・赤の3つに分類、最もリスクの低い国を青とし、リスクの高い国を赤に選別。タイは「青」ですので、入国時の新型コロナウイルス検査と自主待機が免除となります。

ただ、日本在住者は渡航した国から帰国する際、出国前72時間以内に新型コロナウイルス検査を行い、陰性であることの検査証明書を搭乗前のチェックインと検疫所に提示する必要があります。しかもその書式フォーマットは厚生労働省が決めたもの以外は原則として認められません。これは今もなお継続されており、しばらく続く可能性もあります。

●陰性証明書を発行するクリニックはどう選ぶ?

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日本への検疫に必要な陰性証明を取得するために訪れた「DYMクリニック/トンロー Soi 49院」

そこでこの書式に対応しているクリニックとして、バンコク市内にある「DYMクリニック トンロー Soi 49院【健康診断センター】」を選択。ここは旅行会社のHISも利用しているらしく、それなら信頼できるのはないかと判断しました。料金は2500バーツ(約9500円)。ネット上にはもっと安いところもありましたが、検索結果の伝えられ方が少々怪しかったりしたので止めました。

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検査方法は、日本の厚労省が指定する、唾液による抗原定量検査(抗原定性検査ではない)で行った

このクリニックでは、バンコク市内の一定範囲までならホテルまでの出張検査も可能でした。ただ、検査は午前と午後の指定しかできず、スケジュールに不安があったため、クリニックへ午前9時過ぎに出向いて受けることにしました。申し込みはすべてLINEを通して行います。なお、料金は振込みが原則ですが、クリニックを訪問して検査を受ける際は検査前にクリニックでの支払いが可能でした。

検査当日は検査2時間前から飲食を避けるよう指示がありました。クリニックに到着するとパスポートを提示して本人確認。その後、簡単に抗原検査のやり方が説明され、各自がブース内で壁面に書いてある手順に従って唾液を容器に入れます。指定量まで唾液を入れたら密閉して専用ボックスへ収納。これが完了したらベルを鳴らして係員を呼んで終了です。ここまで20分程。あとはLINEで送ってあるメールアドレスに26時間以内に結果がJPEGデータで送られてきます。

●証明書アップロード後は審査結果が出るまでドキドキ

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ファストトラックを利用するために必要事項を登録する「My SOS」アプリのトップ画面

さて、クリニックからの陰性証明書は翌日の9時半頃に届きました。ここからファストトラックを利用するための「My SOS」の登録を行います。この登録は日本入国6時間前までに済ませておく必要があります。登録は「質問票WEB」「誓約書」「ワクチン接種証明書」「出国前72時間以内の検査証明書」の4つのセクションに分けられています。作業自体は特に難しいことはありません。ただ、質問票WEBの入力する項目は多岐にわたり、アップロードも含めると一人分だけでも、作業を終えるまでに結構な時間を要しました。

ここで注意したいのが、海外では通信速度が遅いことがあり、それが表示までにラグを発生させて意図しない誤タップを招いてしまうことです。My SOSでは入力後の確認がされないまま進んでしまうページがあるので、確実に表示されたことを確認してからタップすることをオススメします。もし意図しない結果が反映された場合でも入力し直せますが、慌てず確実に入力していくことがむしろ効率的と言えるでしょう。

質問票WEBと誓約書の回答が終わると、次は「ワクチン接種証明書」と現地で取得した「陰性証明書」のアップロードです。ここで見落としていけないのは、証明書はいずれもJPEGデータであること。PDFは対応していないので注意が必要です。

ワクチン接種証明書のアップロードを終えると、アプリの色が黄色の「審査中」に変化します。この審査は数分で終了。そして、いよいよ最後となる陰性証明書をアップロード、この審査には少し時間を要しました。この間は試験の結果を待つようなドキドキ感をおぼえます。10分程度経って、画面が緑色に変わったときは思わず「やったぁ!」と声が出てしまいました。

そして、さらに少し時間が経つと、「青」区分のタイからの帰国ということでアプリ画面は青色へと変化。これでアプリを提示するだけで検疫所を通過できるようになりました。もし黄色のままだとファストトラックは使えても、入国時に検査証明書を紙等で提示する必要があります。また入国時点で国や地域の区分変更によってアプリ画面の色が変わる場合もあるそうです。

●ファストトラック初体験。空港での検索もなく約30分で空港ロビーに

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いよいよ日本へ帰国。朝陽を浴びて機体が光り輝く姿はいつ見ても美しい

さて、バンコクから日本へ向かうこの日の日本航空34便はほぼ満席でした。約5時間半のフライトの後、バンコクから羽田に到着。降機の指示が出るまで5分ほど機内で待たされた後、まずはトランジット客から降機することを指示されました。続いて日本で入国する人たちがクラス別に降機。過去には1時間以上も機内でまたされたこともあったようですが、それに比べるとかなりスムーズになっていると感じました。

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羽田に到着後は赤色のビブスを着用した係員の指示に従って進んでいく

ボーディングブリッジを過ぎて空港内に入ると、曲がり角ごとに係官が立っていて進行方向を案内されます。そこでMy SOSのアプリ画面を確認され、青色のカードを渡されました。その後、延々と歩かされ、しばらくするとMy SOSの色ごとに分けられる分岐点に到着。そこではファストトラック利用なし(赤)/陰性証明登録なし(黄)と、ファストトラック利用(緑)(青)に分けられました。“運命の分かれ道”を指示されたような気分です。

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アプリの色によってファストトラックの利用/利用なし、あるいは陰性証明の提出に区分けされる
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陰性証明が登録済みということで「B-141スポット」へ向かうことを指示する青色のカードが渡された

検疫所ではパスポートとMy SOSのアプリ画面でQRコードを提示すると、係員がそれを読み取り内容を確認して終了。これで検疫はすべて完了となりました。あとはこれまで通り、日本人向けに用意されている顔認証ゲートでパスポートを提示し、荷物を受け取って税関を通過してすべてが終了。ここまで、降機してから30分程度でした。想像以上にスムーズだったと言えるでしょう。

●検疫前にトイレが使えない。飛行機で済ませておこう

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この距離がとても長く、1キロは歩かされる。途中のトイレも封鎖されていて使えない

最後にアドバイスをひとつ。コロナ禍前とはトイレの環境が違っていました。もちろん設備はあるのですが、検疫所を通過しないとトイレが使える状況になっていないのです。検疫所までおそらく1キロ(スマホの万歩計では2000歩超え)はあったと思います。その間、トイレを使うことはできません。降機前にトイレは必ず済ませておくことをオススメします。

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検疫所では、入国審査官に渡すよう指示された青い紙を渡されたが、自動チェックインだったため使わなかった
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自動チェックインの入国審査と税関を通過し、長い距離を歩かされたものの、約30分で日本への帰国が完了した

「My SOS」を使うようになって、しかも6月からは「青」区分の国からの入国であることと、「黄」区分でもワクチン3回接種していれば入国時のPCR検査は不要となりました。これで入国時のハードルは大幅に下がりました。とはいえ、「My SOS」への登録は初めて体験する人にとってハードルが高いことも事実。やっとスマホを使っている今回の同行者は、証明書のアップロードで先へ進めなくなっていました。

外国人旅行者への規制緩和もスタートし、もうすぐ海外との往来がコロナ禍以前戻る日も近いでしょう。早く陰性証明書なしで帰国できる日が来ることを祈りたいと思います。

(文と写真/会田 肇)

※このレポートは実際の個人の体験談ですが、出入国の時期や地域によって、ルールが異なる場合があります。

この記事の著者

会田 肇 近影

会田 肇

1956年、茨城県生まれ。明治大学政経学部卒。新卒で自動車系出版社に就職した後、フリーランスとして独立。カーナビゲーションやドライブレコーダーなど車載電化製品を中心にレポートする一方で、自動運転をはじめとするITS分野での取材活動を行う。
読者の立場に立った分かりやすいレポートを心掛けている。趣味は車か飛行機を使った旅行。写真撮影。音楽を聴くこと。日本自動車ジャーナリスト協会会員。
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