■FWDと4WDで想像以上に異なる走行フィール
バッテリーEV専用プラットフォームを使うトヨタbZ4Xは、フロントモーターを駆動するFWD、リヤモーターも備える4WDを設定しています。
bZ4Xは、モーター、トランスアクスル、インバーターを一体化したe-Axleが開発され、ボンネット内にフロントユニットが収まります。
ESU(Electric Supply Unit)が開発され、従来はバッテリーパックに収まっていた機器がESUに統合され、バッテリー容量の拡大に寄与しています。
なお、バッテリーは、プライムアースEVエナジー製。
この電池パックは、床下に平積みされていて、低重心化を実現すると共に、バッテリーEVに最適な骨格配置がされているのをはじめ、主要骨格部品にホットスタンプ材、超ハイテン材を使った軽量ボディ構造が採用されています。
電池パックを保護するため、衝突時の入力荷重を複数の骨格に分散させる構造のほか、バッテリーも冷却液が万一漏れてもバッテリーパック内の部品に漏れないように、別室構造(高抵抗タイプの専用クーラント液を使った水冷式)が採用されています。
リチウムイオンバッテリーは、総電圧355V・総電力71.4kW。FWDのフロントモーターの最大出力は150kW。4WDのフロントモーターは80kW、リヤモーターも80kWで、システム最大出力は160kWとアナウンスされています。
なお、0-100km/h加速は、FWDが8.4秒、4WDが7.7秒となっています。
クローズドコースでは、FFと4WDに試乗する機会がありました。FF、4WDともにモーター駆動らしく立ち上がりから欲しい加速感が得られるのはもちろん、スムーズでアクセル操作に対するレスポンスも良好そのものです。2t前後という重さは、ほとんど抱かせません。
FWD、4WDともに18インチと20インチ仕様が用意されていて、前者は軽快感、後者はコーナーでのグリップ力の高さを存分に感じさせてくれます。
印象的なのが「X-MODE」を採用した4WDの安定感。リヤモーターの使用範囲が拡大されているそうですが、コーナーから立ち上がる際のレスポンスに優れ、同じ速度でコーナーに侵入しても4WDの方が安定しています。
一方のFWD(18インチ仕様)は、ややコーナーでのロールが大きめで、前下がりの姿勢でコーナーをクリアしていきます。
ICE(内燃機関)のような、従来のガソリンエンジン車などの走行フィールに近いのがFWDの18インチといえそうです。4WDは安定感、FFは軽快感が印象的。
また、バッテリーパックを車体骨格の一部として使う構造により、ねじり剛性を高めているそうで、路面のいいサーキットとはいえ、圧倒的といえる剛性感や乗り心地の良さ、高い静粛性であることが伝わってきます。
bZ4Xの開発主査を務めた井戸大介氏は、東京オリンピックでも活躍したコンセプトカー(EV)のLQも担当されています。
「トヨタ」ブランドで事実上、初の量産バッテリーEVとなるbZ4Xは、「バッテリーEVが初めてでも違和感なく乗れるように」という想いを込めて開発したそう。
そのため、回生レベルセレクター(パドルシフト)や、いわゆるワンペダルで停止までは至りません(メカブレーキを踏んで停止)。FWDは500km前後、4WDは460km前後の航続距離を確保するなど、日常使いでの実用性も十分に担保されています。
トヨタらしいスムーズな加速フィールや乗り心地の良さ、高い静粛性など、初出のBEVとしては、プロトタイプとはいえ期待以上の性能を披露してくれました。
(文:塚田 勝弘/写真:井上 誠)