三菱 GTOは超ワイドフェンダーボディにコンパクトキャビンの本格4WDスポーツ【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判「個性車編」第23回】

■BNR32スカイラインGT-Rに対抗!? 鎧兜をイメージしたインテリアも有機的

80~90年代の日本車のうち、チョット変わった個性派のデザインを振り返る本シリーズ。第23回は、好景気の波に乗り欧州の名門メーカーに対抗するべく登場した、本格的4WDスーパースポーツ、三菱 GTOに太鼓判です。

gto・メイン
FFベースながら、あたかもミドシップ風のボディに

●コークボトルラインの本格派ボディ

1982年に発売された「スタリオン」の後継となるスポーツカーを模索していた三菱は、来るべき3ナンバーおよび280馬力解禁の時代を見据え、本格4WDスポーツを計画。1990年、往年の名車の名称を復活させて登場したのが「GTO」です。

スポーツカーとしての「力強さ」と「未来的イメージ」をコンセプトとしたボディは、1840mmの超ワイドボディにフォワードキャビンを基本とし、いわゆるコークボトルラインを持ったスーパーカールックを目指しました。

長いオーバーハングをできるだけ短く見せるよう、フロント左右は強く絞り込み、リトラクタブルランプも曲線にカット。ターンランプを結ぶブラックのモールは、殺風景になりがちな顔に適度なアクセントを与えています。

gto・サイド
低いボンネットにはサスペンションがギリギリに収まる

新世代のV6エンジンを載せつつ低く抑えたボンネットですが、左右に置かれた「フタ」はストラットタワーバーが入りきらなかったため。これは設計上、デザインチームとしても当初から想定していたといいます。

サイド面では、超ワイドフェンダーの迫力を含め「スーパーオーガニックサーフェス」と名付けられた、Z形を描くショルダー面のハイライトが自慢。このボディに載るキャビンは、贅沢な3次元曲面ガラスを使うことでカプセル状のコンパクトサイズに収まりました。

一方、サイドウインドウ後端はガラスでなく実は黒の樹脂パーツだったり、有名なところではエアインテークがダミーだったりなどは、これもまたスーパースポーツボディを成立させるための構造的な制約が理由だとされます。

gto・リア
巨大なバンパーに、これもまたミドシップ風のディフューザーが

リアは、高い位置に置かれたガーニッシュ一体型のランプがスリムでシンプルな表情を作り、下部では巨大なバンパー中央に配されたミドシップ風のディフューザー表現が迫力を感じさせます。

●重厚感のあるインテリア

インテリアでは、何と鎧兜をイメージしたという有機的なインパネが目を引きます。ゴーグルタイプの大型メーターパネルや、日産「フェアレディZ」のような3連メーターが戦闘的で、やや圧迫感も。スポーティなシートも厚みのある堂々としたものです。

gto・インテリア
重厚かつ戦闘的なインパネは鎧兜がモチーフ

クライスラーとの協業により実現したGTOは、「3000GT」の名で北米を主力市場としました。「スポーツカーはライバルがいるから、面白い」というキャッチコピーは当然フェラーリなどを想起させますが、それは市場を意識したものなのかもしれません。

ただ、同時期の初代「ディアマンテ」や6代目「ギャラン」が、筋肉質で非常にオリジナリティ溢れるスタイルであったことを考えれば、スーパースポーツとしても三菱らしい個性を期待したかったとは言えそうです。

■主要諸元 GTOツインターボ(5MT)
形式 E-Z16A
全長 4555mm×全幅1840mm×全高1285m
ホイールベース 2470mm
車両重量 1700kg
エンジン 2972cc V型6気筒DOHC24バルブツインターボ
出力 280ps/6000rpm 42.5kg-m/2500rpm

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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