フォグランプはいつ使う? 法律上の定義と本来の使い方

■必ずしもクルマに必須ではない「フォグランプ」について考える

自動車にはさまざまなランプがついています。前から車幅灯、ヘッドランプ、ウインカー、後ろにまわればテール/ストップランプ、ウインカー、後退灯。サイドにもウインカーがあります。

これらは必須のものですが、そのいっぽうで、周囲のクルマを見渡すと、あったりなかったりするのが「フォグランプ」です。

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いったい、いつ使うのが正しいのかいな?

今回はこのフォグランプについて解説していきましょう。

●保安基準に記されているフォグランプの定義&規定

「フォグランプ」。道路運送車両法の保安基準では補助灯のひとつと位置づけられ、日本語では法律上の呼称らしく実に硬い「霧灯(むとう)」という言葉で記されています。

実は筆者は、このフォグランプについてよくわからないでいます。フォグが「fog・霧」で、霧の中で使うランプであるということは知っています。しかしよく見れば、白いフォグランプならその電球はヘッドライト用と同じハロゲン球のクルマがあったり(事実、市販バルブの中にはロービームにもフォグランプにも使える製品がある)、「日本のクルマの『フォグランプ』は『フォグランプ』とはいえないもので、日本のクルマの場合は『ドライビングランプ』だ」という人もいます。いったいフォグランプとはどのようなものなのでしょうか?

道路運送車両法の保安基準の中では、このフォグランプ、すなわち「前部霧灯」はこのように定義されています。

「前部霧灯とは…(中略)…濃霧そのほか視認性が低下する状況が発生した場合に、自動車の前方の道路上の照度を増加させることを目的とした灯火装置をいう。」

そしてフォグランプに関する保安基準を調べてみると「霧の中で使うランプごときに、こんなに決め事があるの?」といいたくなるほど、事細かにいろいろと規定されています。

自動車の規定はランプひとつにしても大量なので、わかりやすい点だけ挙げていきます。また、この記事の対象車両は一般的な乗用車であり、特殊な車両は除きます。

・数は2個でなければならない。ただし、同時に3個以上点灯しない構造であればこの限りではない。
・色は白色または淡黄色であること。
・取り付け位置は照明部の最外縁が自動車の最外側から400mm以内、高さは照明部の上縁が地上800mm以下であること。
・照射範囲は上方5度および下方5度、外側45度および内側10度。
・点灯していることが運転席からわかる装置を備えていること。
・単体で点灯できない構造であること。

こんなところでしょうか。

foglamp three or more
素人技の画像加工でフォグランプを10個にした自分のクルマ。自分で見ても気持ち悪いが、仮にこのようにしたとしても違法にはならない。3個以上点灯しなければ合法なのだ。

おもしろいのは個数の点です。一見、クルマのフロント周辺には2個超え、すなわち3個以上取り付けてはいけないように思えますが、フォグランプを3個以上取り付けても構わないのです。フロントバンパー横方向をフォグランプでずらりと埋め尽くしても、「同時点灯が3個以上」になってはいけないだけで、これだけなら違法にはなりません。

normal foglamp
スモール+フォグランプの状態。絶対にフォグランプだけを点けてはいけないことになっているのだ。
normal
オール消灯状態。

また、単体で点灯できない構造でなければいけません。

すべてのランプが消灯している状態でフォグランプスイッチのみONにした場合、同時にスモールランプが点灯します。この場合、フォグをOFFにするとスモールとともに消灯。

メーカーによってはヘッドランプスイッチ位置がスモール以上になっていないとフォグスイッチを入れても無反応のクルマもあります。この場合、ライトスイッチをスモール以上にして初めてフォグランプが点灯します。

これらはメーカーによりけりで考え方が異なるからですが、いずれにしてもすべてのランプが消灯のままフォグランプだけが点灯することは、法規を満たすべく、構造上できないようになっています。

fog-lamp swich on-off
消灯中か点灯中か、運転者からフォグランプの状態がわからなければならない。このクルマの場合はスイッチ内のランプで表示する。いまの多くのクルマはメーターでその状態を示す。

そしてフォグの点消灯状態が運転者からわかるようになっていることが定められています。今のクルマならメーター内に点灯するフォグランプ点灯表示灯のことで、うっかり点灯しっぱなしであることに気づかず、周囲を幻惑させていることにも気づかなくなってしまう可能性があるので、この表示がなければ困ることになります。

angle
照射角度は外側45度、内側10度、上方、下方にそれぞれ同じ5度と規定されている。他のランプもそうだが、保安基準にはその規定の根拠が知りたくなるものが多い。

照射範囲の規定は上下方向に薄く、内側はほどほどに、外側に広く、要するに車両のフロントバンパー付近を浅くボンヤリと照らすということがわかります。

ごく一部のクルマで、ウインカー点灯(実際には点滅)と同時に点灯した側のフォグランプを点灯させ、コーナリングランプ機能を与えたものがありましたが、これも「外側45度」、すなわち斜め前方照射を右左折時にも利用しようというアイデア。

本当はフォグとは別立てで、かつてのようなコーナーリングランプがあるといいのですが、今のクルマもせめてフォグランプ装着車にはこの機能を採り入れればいいのに。実際、フォグランプをコーナーリングランプ化するキットも売られています。

●いつ使う? その名の意味を考えれば、自ずとわかるはずなのに

霧も出ていないのに平気でフォグランプを点けて走っているクルマをよく見ます。では本来いつ使うのか? 当たり前の話ですが、霧の中で使うのです。先にも書きましたが、「フォグランプ」とは「fog(霧)」の「lamp(灯火・ランプ)」。

raining
周囲が極度に見えなくなることもないのだから、フォグランプを点けるのはたとえ雨でも筆者には抵抗がある。むしろ夜の雨の日運転にはガラスのはっ水処理のほうがずっと有効だ。

取扱説明書にも、メーカーによって表現は多少異なりますが、「…霧や雨、雪など、悪天候時に使用」と書いてあります。これが晴天時であるにもかかわらず、フォグランプをつけて走っている対向車がやって来ようものならこちらは大迷惑。

ヘッドランプのローやハイのほか、自車のすぐ前を照らすフォグランプを点けると、雨も雪もない夜間、特に街灯の少ない夜道を走るときは実際以上に明るく感じられ、見やすくなることにはなるのですが、いくらフォグランプ点灯表示灯があるとはいえ消灯することを忘れ、先行車、対向車に不要な光を与えてしまうことを思うと使うべきではありません。

余計な光が車両前方の、たとえば歩行者などを対向車から見えなくしてしまう「蒸発現象」を引き起こすことにもなりかねないのです。

コロナ禍の「不要不急」ではありませんが、フォグランプは霧・雨・雪以外では不要不急のランプです。このような天候以外では使わないようにしましょう。

(文・写真:山口 尚志