スズキ ツインはリアルチョロQ!? 曲面と球体で構成された「私のハイブリッドスモール」【ネオ・クラシックカー・グッドデザイン太鼓判「個性車編」第17回】

■市販軽四輪初のハイブリッド車「スズキ ツイン」

●時代の先を行き過ぎた?

ツイン・メイン
丸いタイヤハウスに球体を載せたイメージのボディ

80~90年代の日本車のうち、チョット変わった個性派のデザインを振り返る本シリーズ。第17回は、コロリと丸い表情の超省燃費2シーター・ミニマムコミューター「スズキ ツイン」に太鼓判です。

●コンセプトカーを再現したスタイル

カプチーノやX-90など、2シーターのユニークなコンパクトカーを輩出してきたスズキは、1999年の東京モーターショーに3種類のパワーユニットを表す「Pu-3 コミュータ」を発表。その市販版として、2003年に発売されたのが「ツイン」です。

コミュータらしく全長は当時の国産軽四輪車最小の2735mm。「前後の丸いタイヤハウスに丸い球状の車体を載せる」というコンセプトのボディは、思いの外長い1800mmのホイールベースによって、タイヤを四隅に配した安定感のある佇まいとなりました。

フロントは、車体同様丸形の大型ランプが目を引きますが、バンパーに大きく食い込ませた大胆さも見所。簡素に見えながら、ボンネットの左右はランプに沿って「ちゃんと」膨らみを持たせています。

ツイン・フロント
左右非対称のグリル表現がアクセントに

フェンダー一体型の素材色バンパーは、先述のとおり徹底して曲面で構成され、ボンネットとの境界もカーブを描いています。また、初代のフィアット「パンダ」や現行「アルト」に似たスリット状のグリルは、このシンプルなボディにアクセントを与えています。

サイドビューは「チョロQ」的なプロポーションがいちばんよく分かるところ。Aピラーを前に出したワンモーション的な基本形に加え、大きなプレスドアとの組み合わせが球体のカタマリ感を強調します。

さらに、ボディ同色のホイールカバーや、ドアに沿ったクオーターウインドウの軽妙な形状など、最小限の工夫で、この廉価な2シーターの質感確保に努めているところがスズキらしいと言えます。

●インテリアも斬新で合理的

リアは、開閉をガラスハッチのみとし、空いたリアパネルの上部にフロントに準じた丸形のランプを配置。広い下半身は分厚く大きなバンパーで支え、強力な安定感を生み出しています。

ツイン・インテリア
機能を集約させた合理的なインパネ

インテリアは、センターメーターの採用で低くフラットなインパネを実現。そのメーターパネルは空調口や操作部を一体にした合理的な形状。2トーンのシートなど、ここでも最小限の工夫で最大の効果を目指しているようです。

「この手があったか!」という新機軸で常にユーザーを驚かせるスズキですが、ツインは市販軽四輪初のハイブリッド車という、機能面での新提案も打ち出しました。つまり、見た目も中身も斬新なわけで、そこに多くのユーザーは困惑したのかもしれません。

最終的には3年弱で約1万台の販売に止まりましたが、しかし2人乗りのコミューターとして、デザインに破綻があったとは思えません。超廉価のシンプルなガソリン車として登場すれば、もしかしたら2代目が企画されたかもしれませんね。

■主要諸元 ハイブリッドA(4AT)
形式 UA-EC22S改
全長2735mm×全幅1475mm×全高1450mm
ホイールベース 1800mm
車両重量 700kg
エンジン 658cc 直列3気筒DOHC 12バルブ+モーター
出力 44ps/5500rpm 5.8kg-m/3500rpm

(すぎもと たかよし)

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すぎもと たかよし

東京都下の某大学に勤務する「サラリーマン自動車ライター」。大学では美術科で日本画を専攻、車も最初から興味を持ったのは中身よりもとにかくデザイン。自動車メディアではデザインの記事が少ない、じゃあ自分で書いてしまおうと、いつの間にかライターに。
現役サラリーマンとして、ユーザー目線のニュートラルな視点が身上。「デザインは好き嫌いの前に質の問題がある」がモットー。空いた時間は社会人バンドでドラムを叩き、そして美味しい珈琲を探して旅に。愛車は真っ赤ないすゞFFジェミニ・イルムシャー。
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