超ハイパフォーマンスなバイクの維持費は激安。税金は「年額6000円」って知っていますか?【週刊クルマのミライ】

■コロナ禍に二輪が売れているのはコスパがいいから? 300km/hに届かんとするモデルでも維持費は安い

コロナ禍において二輪が売れています。たとえば軽二輪(125cc超~250cc以下)の上半期(1月~6月)の販売実績を4年前から並べてみると、ここ数年で明らかに増加しているのがわかります。

●軽二輪 上半期販売台数
2018年 2万7805台
2019年 2万9087台
2020年 3万1626台
2021年 3万7562台

その理由として、新型コロナウイルスの影響から密を避けるためにバイクという移動手段が再評価されたという見方があります。また、ここ10年ほどのトレンドとして中高年のリターンライダーが増えています。そうした影響もありそうです。

さらに個人的には経済的なメリットに気付いた人が多いからではないかという印象もあります。今どきの言い方をすると二輪はコスパがいいのです。

HAYABUSA
アルティメットスポーツという独自の立ち位置でスズキのフラッグシップとなっている「ハヤブサ」。排気量1339ccのエンジンで、価格は215万6000円と意外に安い

たとえば、世界最速バイクとして知られるスズキ・ハヤブサは、138kW(188PS)を発生する1339ccの4気筒エンジンを積んでいますが、メーカー希望小売価格は215万6000円です。

軽四輪のスーパーハイトワゴンにオプションをつけると、200万円を超えてしまうことも珍しくありませんが、それと比べると、圧倒的にリーズナブルに見えてきます。

二輪を中心に見ている長年のバイクファンからすると「最近のモデルは高くなった」と言いたくなるかもしれませんが、ことリターンライダーの目線でいうと真逆の印象になるでしょう。四輪でいえば日産GT-Rに匹敵するほどのブランド力を持つハヤブサが215万円と聞くと「四輪に比べて激安」と感じるはずです。

さらに、二輪は維持費も激安です。その最たるものが自動車税です。

たとえば自動車税、四輪車の場合は、乗用車で年額2万5000円~となっていて、前述したGT-Rの場合は5万7000円です。しかも月割で購入したときから課税されます。

一方、二輪の場合は軽自動車税なので毎年4月1日時点の所有者に課される税金となっていますし、その年額は250cc超は年額6000円で統一されています。400ccクラスの単気筒モデルだろうと、200馬力オーバーのリッターモデルだろうと、二輪の自動車税は6000円なのです。これは、四輪の軽自動車税1万800円よりも安いのです。

ちなみに、125cc超~250cc以下の二輪の自動車税はさらにリーズナブルで3600円、125cc以下の原付二種になると2400円、90cc以下は2000円となっています。

CBR1000RR-R
筆者の愛車でもあるホンダのリッタースーパースポーツ「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」。218馬力で278万3000円。しかし軽自動車税は6000円だ

当然ながら、いま国産二輪の中でもっともパワフルな218馬力のエンジンを積むホンダCBR1000RR-R FIREBLADEであっても、二輪としての軽自動車税は年額6000円です。

CBR1000RR-Rのメーカー希望小売価格は、標準グレードで242万円、オーリンズのサスペンションなど装備を充実させたSP仕様でも278万3000円です。四輪的な感覚でいうとアンバランスなまでに税額が安く感じるのではないでしょうか。

ところで、車両価格も正しい意味でリーズナブルです。ホンダの四輪でいうとコンパクトカー「フィット e:HEV」に追加設定されたモデューロXのメーカー希望小売価格が286万6600円です。実質的に一人乗りのスーパースポーツと5名乗車のハッチバックを比べるのはフェアではありませんが、フィット・モデューロXと同じ予算感で、218馬力のハイパワーエンジンを積むスーパースポーツが手に入ると聞くと、これまたコスパ抜群と感じるのではないでしょうか。

じつは筆者も、そうしたコスパの良さに魅了された一人。新型コロナウイルスが猛威を振るいはじめた昨年、CBR1000 FIREBLADE SPを購入してしまいました。

当時、「シビックより安いから」と友人に話したこともありました。また、一年ほど所有してきた経験からいうとメンテナンスに関する維持費もリーズナブルな印象です。趣味の乗り物ということで走行距離が四輪ほど伸びないというのもありますが、ほとんど交換するパーツはありません。コケてしまうと、カウルやマフラーなど修理費は高くついてしまうかもしれませんが……。

筆者の場合は、半年ごとのメンテナンスと車検整備までを含めたメンテナンスパックに加入していて、3年間のメンテナンス料金は13万円足らずとなっています。タイヤを交換するようなことがなければ、これ以上のメンテナンス費はかからないわけで、ハイパフォーマンスモデルの維持費としては十分に納得できるものではないでしょうか。

もっとも、コンパクトカーで同様のメンテナンスパックに加入した場合のコストは9万円弱といったところになりますから、メンテナンスについては四輪と同等かそれ以上にかかってしまうといえるかもしれません。

TRACER9_GT
フルモデルチェンジしたばかりのヤマハ・トレーサー9(145万2000円)。2022年度から休日のETC割引が始まるだけに、こうしたツーリングの得意なモデルの人気は高まりそうだ

このように車格やイメージからすると車両価格や自動車税がリーズナブルに見えるだけが二輪のメリットではありません。2022年度になると、さらにコスパの良さを引き上げる施策が用意されています。それが高速料金の割引です。

ニュースになっているのをご存知の方も多いでしょうが、2022年4月から二輪の高速料金が37.5%も割引になることが発表されています。ETCの利用、土日祝のみ、100km以上、事前登録が必要などいくつもの条件はありますが、二輪でツーリングを楽しむコストがグッと下がることになるのです。

一例を挙げてみましょう。東名高速道路で御殿場から浜松まで走ると、距離は約150km、料金は3080円となります。この37.5%というと1155円です。余裕でランチ代が浮いてしまうのです。こうしたキャンペーンを利用すれば、ますます二輪ライフが楽しくなること請け合いです。

高速料金の割引が始まる2022年4月に向けて、ツーリングの得意なタイプのモデルが人気を高めていくかもしれません。そうなると、ますます二輪市場は活況となりそうです。

自動車コラムニスト・山本晋也

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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