水素の価格1210円/kgの現在、トヨタ新型MIRAIで1000km走ると高い?安い?他の乗りものと比べてみた!

■水素自動車、ハイブリッド、ディーゼル、その他・・・1000キロ移動にかかる燃料代はどう変わる?

新型MIRAIの満充填走行距離記録1003kmにチーム国沢が挑む。弊サイト小林編集長も参戦!」の記事をご覧になりましたでしょうか。
国沢光宏さん率いる「チーム国沢」の10名が、水素自動車MIRAIで1000km走行記録に挑んでいる最中。この記事が出る頃も、ひたすら走り続けていることでしょう。

ところでこの水素自動車っていうやつ、話題には挙がるものの、いまひとつピンときません。いくら世の中が「脱ガソリン」だ「電動化」だと掲げていても、街を走っているクルマ(ここでは乗用車)を眺めてみれば、いまのところはハイブリッド車も含め、ガソリンを燃料とするクルマが主流で、その合間に電気自動車かディーゼル車がちらほらまぎれているというのが実情です。電気自動車でさえまだまだ普及途上にあるのに、水素自動車ならなおのこと、なじみが薄いという人のほうが多いのではないでしょうか。

クルマの所有や移動をする上で、普通のクルマユーザーが気にするのはまずはかかるお金でしょう。筆者もガソリン車を使用していますが、これが水素となると何がどれだけ変わってくるのか?

今回の「新型MIRAIの満充填走行距離記録1003km」トライアルに付随(便乗ともいう)し、1000km移動するのに、MIRAIと他の乗りものとで、燃料代その他費用がどう変わってくるのかを比較してみました。

東京から1000km離れた都市はどこか? NAVITIMEで調べたら、さすがに1000kmキッカリというわけにはいきませんでしたが、東京駅から新下関駅(山口県)がクルマ移動で1008kmの距離にあることがわかりましたので、この区間をクルマおよび他の乗りもので移動すると想定してシミュレーションしてみましょう。

まずは主役のMIRAIから。そのうちの上位機種のZを選びました。

●トヨタMIRAI Z

MIRAI
トヨタMIRAI。初代のFFから現行2代目ではFRとなった。電気自動車同様、水素ステーションの広まりがMIRAI普及の鍵を握る。

WLTC燃費は水素1kgあたりの走行距離で示され、MIRAI ZのWLTC総合値は135km/kg。タンク容量は総計141Lですが、これを重量に置き換えると5.6kg。したがって、フル充填では756km走ります。東京から新下関駅まで1トリップというわけにはいかず、厳密に計算するなら水素は7.28kg必要となり、現在の一般的な都内での税込み水素価格1210円/kgで計算すると燃料代は8809円となります。

したがって、MIRAI Zで東京から新下関へ行くには・・・

・燃料代:8809円
・首都高:1320円(ETC:610円)
・高速道路(東名~新東名~伊勢湾岸~新名神~名神~山陽~(広島岩国)~中国各自動車道):計2万1140円(ETC:2万0810円、深夜割引:1万4570円、休日割引:1万5260円)
★総額:3万1269円(ETC:2万9428円、深夜割引:2万3989円、休日割引:2万4679円)

PRIUS
ハイブリッドの老舗。1997年の初代登場から早くも24年、現行で4代目。いまではトヨタにも他車にもハイブリッドが増え、自我のポジションが不明瞭になってきたが、燃費の優秀さはまだ光る。

●トヨタプリウス Aプレミアム

MIRAIを迎え撃つクルマとして、同じトヨタから、ハイブリッドの老舗・プリウスにご登場いただきました。
こちらのWLTCの総合値は27.2km/L。レギュラーガソリンの東京価格147円(2021年6月28日現在)で計算すると、燃料タンク容量は43Lなので、1トリップで1169.6km走ります。ということから、新下関についた時点で、タンクにはガソリンが5.94L残る計算に。このクルマは燃料が約6.4L以下になると燃料残量警告灯が点灯するので、新下関駅12.48km手前の995.52km走った時点でランプが点くのでしょう。

というわけで、プリウスでの東京から新下関までかかる費用は、

・燃料代:5448円(レギュラーガソリン)
・首都高:1320円(ETC:610円)
・高速道路(東名~新東名~伊勢湾岸~新名神~名神~山陽~(広島岩国)~中国各自動車道):計2万1140円(ETC:2万0810円、深夜割引:1万4570円、休日割引:1万5260円)
★総額:2万7908円(ETC:2万6868円、深夜割引:2万0628円、休日割引:2万1318円

MAZDA6
国内ではディーゼルエンジンを積む唯一のセダン。燃料が値段の安い軽油なので期待できそうだが、いかんせん重量が・・・

●マツダ6 XD

ガソリン車で計算するならディーゼル車にもご登場いただかないと公平とはいえません。ディーゼル壊滅状態の中、最初、同じトヨタのランドクルーザーをと思いましたが、まるでカテゴリー違いのクルマなので、MIRAIと同じセダン型でディーゼルエンジンを搭載するマツダ6に登板いただきました。
少し前までアテンザ、さらに遡れば元カペラなのですが、アテンザへの改名以降はモデルチェンジのたびに大きくなり、もはやMIRAIといくらも変わらないサイズになった現行マツダ6、この記事を書く身としてはディーゼルも載せたセダンであってくれて助かりました。

MIRAIもプリウスもATですから、MTもあるマツダ6ですが、ここはフェアにATで比較します。マツダ6 XDのAT車のWLTC値は17.8km/L。東京価格の軽油単価は127円(2021年6月28日現在)。燃料タンクは62Lなので、満タン1回で1103.6km走ります。燃費は17.8km/Lなので、消費する軽油の量は約56.6L也。タンクに軽油を5.4Lほど残しての到着となります。

というわけで、

・燃料代:7189円(軽油)
・首都高:1320円(ETC:610円)
・高速道路(東名~新東名~伊勢湾岸~新名神~名神~山陽~(広島岩国)~中国各自動車道):計2万1140円(ETC:2万0810円、深夜割引:1万4570円、休日割引:1万5260円)
★総額:2万9649円(ETC:2万8609円、深夜割引:2万2369円、休日割引:2万3059円

う~ん、燃費のいいディーゼルで安い軽油が燃料ということから期待していましたが、燃料代はプリウスをうわ回りました。重量差がすべてに響いてしまったのでしょう。これがディーゼルエンジンでのハイブリッドならどれくらい好転するのか? 興味を惹かれるところです。

JPN TAXI
シエンタをベースにLPGエンジンでハイブリッド化。燃料価格の安い優位性が現れるか?

●ジャパンタクシー

トヨタに舞い戻りまして、同じトヨタでも別カテゴリーのジャパンタクシーを舞台に掲げます。タクシーだけに、燃料は当然LPガス。筆者が幼少の頃、タクシーに乗ったときには、あの独特のにおいを楽しんだものですが、いまどきそんなタクシーはなくなりましたな。
ジャパンタクシーはLPGエンジンのハイブリッドで、WLTC総合値は16.8km/L。重量はプリウスと30kgしか変わらないのに、燃費はそれほどでもないなというのがもっかの感想。

それはともかくとして、燃料タンク容量を調べたら52Lとあったのですが、「LPG車は全容量の75~80%程度しか入れることができませんのでご注意を・・・」という注意書きが! というわけで、最悪の75%として計算してみました。え~、パチパチパチと計算して・・・タンク容量は39L、この状態では655.2kmしか走れません。東京駅~新下関駅間1008キロを走るのに必要なLPガスの量は60L。LPガスの東京価格95円(2021年5月現在)で計算すると・・・

・燃料代:5700円
・首都高:1320円(ETC:610円)
・高速道路(東名~新東名~伊勢湾岸~新名神~名神~山陽~(広島岩国)~中国各自動車道):計2万1140円(ETC:2万0810円、深夜割引:1万4570円、休日割引:1万5260円)
 ★総額:2万8160円(ETC:2万7120円、深夜割引:2万0880円、休日割引:2万1570円

と、これは運転する側の話。これが乗る側、つまり乗客になったらどうなるかを試算してみました。都合よくタクシー料金検索サイトなんていうものがあるのですな。かかる費用は運賃のみ。有料道路代も含みます。
結論から申し上げましょう。

★運賃:約 34万5700円!

いや、時間は11時間36分と出たので、まあまちがいなく深夜割増(22時~翌5時)が加わると見て・・・

★深夜割増運賃:約41万5140円!

となることがわかりました。

タクシーで1000キロ離れた場所に行く場合、周囲のひとを巻き添えにし、フル乗車(乗客4名)の割り勘にするべきです。1人あたり10万3785円ですみます。

さて、お次は番外編。

●新幹線

筆者は公共交通機関、特に電車が大嫌い。隣の家に回覧板を届けに行くにもクルマで行きたいほどなのですが、まあ新幹線と寝台車だけは好きなので勘弁してあげましょう。といってもできるだけ安く、乗り換えも少なめにしたいところです。という条件でシミュレーションしてみました。条件は自由席、乗り換えは少なめに。

・乗車券:1万3420円
・自由席:7600円
 ★総額:2万1020円

最後はさらなる番外編。

●徒歩!

かかる費用は燃料(=食費)分だけ。ずっと歩きっぱなしなので1日3食に1食を加えた4食で計算してみました。筆者は作るのにも食べるのにも時間をかける方ですが、ここはトライアルですから、「早い・うまい・安い」でおなじみ、吉野家で燃料補給です。
人間の歩行速度は時速4キロ。したがって東京駅から新下関駅まで252時間、すなわちきっかり10日半かかることになります。
最近は行っていませんが、筆者が吉野家で選ぶメニューは決まっています。

・牛丼 大盛り 574円
・お新香みそ汁セット 162円
・玉子 74円
・お茶 タダ

1食につき810円(2021年6月28日現在・しばらく行っていない間に高くなったような・・・)

吉野家以外では飲まず食わずでひたすら歩く! 1食あたり810円を10日半ぶんかけると、

★総額:3万0420円

時間の差は比べものにならないほど長引くにせよ、意外なことに新幹線で行く場合よりも高くなりました。

さて、これらの計算結果を、「東京から新下関へ1000km移動する者が移動のためにお金を払う」という観点で価格が安い方から並べる(安いほうが優秀)と、

1位 新幹線(2万1020円)
2位 プリウス(2万7908円・内、燃料代は5448円)
3位 マツダ6(2万9649円・内、燃料代は7189円)
4位 徒歩(3万0420円)
5位 MIRAI(3万1269円・内、燃料代は8809円)
6位 ジャパンタクシー(41万5140円)

という並びに相成りました。

・・・・・・・。

自動車のサイトなのに、新幹線が1位になるとは・・・。

ただし、ジャパンタクシーの名誉のために、このクルマを自分の愛車として使うなら2万8160円(内、燃料代は5700円)となり、たちまち3位に浮上する(それでも3位ですが)ことを申し添えながらこのシミュレーションを終わらせていただきます。

やっぱり計算してみないとわからないもんだ!

と、ここで、1000kmチャレンジ中の編集長小林から、「高速道路をまともに走るような速度では、MIRAIで満タン1000kmはムリ」との情報が入ってきましたので、MIRAIワンチャージで下関を目指すときは、下道でガンバってください!

(文:山口尚志 写真:トヨタ自動車/マツダ)

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