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■花粉と黄砂のシーズン到来!正しいケアで、シミやキズを予防しよう。
厳しい寒さの冬が終わり、暖かな空気で春めいてきました。天気予報でもスギ花粉情報を毎日のように目にし、花粉症には厳しい季節となっています。また、大陸からの黄砂が日本にも届くようになり、視界が悪くなる地域も増加中です。
人がくしゃみや鼻づまり、目のかゆみに苦しんでいるのと同様に、クルマのボディも、花粉や黄砂と戦っています。クルマの花粉対策、黄砂対策は、対処を間違うとクルマを傷だらけ、シミだらけにしてしまうこともあるでしょう。今回は、元自動車ディーラー営業マンの筆者が、今からでも間に合う、花粉と黄砂に対してのボディケアについて解説していきます。
●花粉や黄砂で、春のクルマは黄色くなる
朝、クルマに乗り込もうと近づくと、白や黄色っぽく汚れていることがあります。風の強い日や、昼間晴れていて夜間に雨が降った次の朝などは、特に汚れがひどくなるでしょう。この汚れは、黄砂や花粉が原因です。
ディーラーで営業マンだった頃、春先に迎える納車には非常に気を使いました。花粉や黄砂で新車はあっという間に汚れ、傷つき、シミだらけになってしまうからです。特に黒や紺など、暗く濃いボディカラーのクルマを納める時には毎日のように手洗い洗車していたことを思い出します。対策としては、まずはこの厄介者である、黄砂と花粉の素性を知るところからスタートです。
黄砂は、中国の内陸部から飛んでくる鉱物粒子です。簡単に言うと中国やモンゴルの砂漠地帯から飛んでくる小さな砂になります。風によって巻き上げられた小さな砂の粒が、偏西風に乗って日本に飛来します。日本に飛んでくる黄砂の粒子は、0.5マイクロメートル(500ナノメートル)から5マイクロメートル程度の大きさです(1マイクロメートル=0.001mm)。
組成を調べると、石英、長石、雲母、石膏、方解石などが入っており、これらは非常に硬くて鋭利な鉱物です。水分を含むと粘土質になり、乾くことでボディなどに強く吸着します。
また、もう一つの厄介者が花粉です。年中飛散している花粉ですが、特に春先に多く飛散します。代表的なのはスギ花粉です。大きさは30マイクロメートルから40マイクロメートル程度で、黄砂と比べると、粒子が大きいことが分かります。
花粉は乾燥状態でも粘着質です。空気中を浮遊している際には殻が付いていて、この殻は水に濡れることで破れ、中からペクチンというたんぱく質が出てきます。このペクチンがボディ塗装に侵入し吸着、そして乾燥する際に収縮して、塗装を引っ張るので、ボディ塗装面に変質を起こすのです。
花粉も黄砂も、クルマのボディに吸着する仕組みは、水分を受けてからの乾燥です。ボディに付着したら、雨や朝露などの水分にさらされる前に、流水で洗い流せば、比較的簡単に取り除けます。しかし、水分を含んだのちに乾燥した花粉や黄砂への対処は、一歩間違えると、ボディに傷やシミを付けることになりかねません。
●黄砂は水とコーティングで対策できる
黄砂や花粉の付着は、クルマを使用している限り避けられません。付着した黄砂や花粉をできるだけ水に近づけないことが大切です。濡れないように屋根付きのガレージにしまうというのは、対策の一つです。
また、花粉や黄砂への最も有効な対策は、吸着する前に水で洗い流すことです。高圧洗浄機などを使って、強い流水で洗い流してしまいましょう。
黄砂が十分に洗い流されていない状態でボディを擦ったり、拭きあげたりすると、傷がつきます。黄砂が付着したままで拭きあげる行為は、ボディ全体を紙やすりで擦っているようなものです。非常に小さな粒子で、単体を目視することが難しい黄砂ですが、しっかりと水で流せば落ちてくれます。ボディ表面を軽く撫で、ザラッとした感覚が無くなるまで流し切りましょう。
黄砂対策として頻繁に水洗いができないという方は、ボディコーティングを施工するといいでしょう。黄砂が水で洗い流しやすくなり、強いこびりつきも予防してくれるので、降り積もった黄砂を洗い流すのが非常に楽になります。
●花粉のシミは「お湯」で取り除く
厄介なのは花粉です。前述の通り、たんぱく質を含む花粉はボディの表面に吸着するだけでなく、塗装の内部に侵入します。まずは、このたんぱく質が塗装内部に侵入することを防がなければなりません。タンパク質除去に効果的なのは、濃度の高いカーシャンプーで洗うことです。虫取り剤なども効果的です。
しかし、少し対処が遅れただけで花粉は簡単に塗装面に入り込み、変質を進めます。こうなるとシャンプーや研磨では簡単に落とせません。仮にボディ研磨を行い一時的に見た目が改善しても、内部にはペクチンが残っているため、再度シミが生成されます。シミになってしまった場合には、強く擦る・コンパウンドで磨くといった行為はNGです。
ペクチンに対して有効な対処方法は「熱」を加えることです。変質の原因となるペクチンは、60℃以上に加熱すると分解されます。
熱を加える簡単な方法は、お湯をかけたり、ドライヤーやスチーマーなどで温める方法です。ただし、クルマの外装部品には、熱に弱いものもあるので、施工箇所には注意しましょう。
ランプ類やバンパー、そしてガラスなどは急激な温度変化や高温に耐えられないものもあります。80℃程度を上限の目安とし、それ以上に高温のものを扱う際には、専門業者に依頼すると安全です。
ボディコーティングの施工は、塗装面に直接入り込む花粉のペクチンに対して、確実な対策とは言えません。クルマを洗いやすくするといった意味では効果はありますが、直接的なシミ予防にはならないので、過信しすぎないようにしましょう。
春先に付着してしまい、シミになった花粉がとれない時には、無理に除去せず、夏まで待つのも一つの方法です。新たなシミを作らないように、こまめに洗車を行いながら、夏の直射日光が、ペクチンが分解する60℃以上までボディを熱してくれます。ペクチンが分解されたところで、改めて花粉除去を行うと良いでしょう。
特に、クルマのボディに影響が大きいのが黄砂と花粉です。早めに除去して、愛車を綺麗なままで保ちたいですね。
(文・写真:佐々木 亘)