防げなかった?関越道で発生した大雪による車輌の立ち往生、事前に通行止めにできなかった要因は?

●関越道の大雪障害、国道事務所が通行止めに同意できなかったのは…

大雪による関越道通行止めで、多くの滞留車両が閉じ込められていることで、高速道路を運営する東日本高速が急遽、会見を開いて説明をしました。

「多くの利用者にご迷惑をおかけしました」と、冒頭で同社社長の小畠徹氏と取締役の髙橋知道管理事業本部長が謝罪しました。

大雪に埋もれる大型車の車列(提供=東日本高速)
大雪に埋もれる大型車の車列(提供=東日本高速)

関越道塩沢石内IC~小出IC(新潟県南魚沼市)間には、18日16時現在で585台(国土交通省発表)が閉じ込められたままです。この区間を含む月夜野IC(群馬県みなかみ町)~小出ICは現在通行止めですが、滞留車両が移動できて通行が再開されるのは「19日早朝」という見込みを示しました。

「当社、国、県、市町、自衛隊の700人態勢で夜間作業を行っています。大型機械だけでは滞留車両を動かすことはできず、スコップを使った人海戦術で車両周囲の雪を取り除き、その後除雪用トラックなどでけん引して1台1台、人海戦術で移動をさせているところです」(高橋知道管理事業本部長)

関越道では24時間で113cmの大雪で、進むこともできなかった(提供=東日本高速)

路上の滞留車両は大雪による視界不良とスリップで、走行不能に陥った車両(=スタック)に後続車両が連なることで被害が拡大します。

滞留した車両は17日13時30分ごろに最大で上下線あわせて約2100台にも上っています。同社は地域自治体や自衛隊と連携してドライバーに対して食料、水、ガソリンの供給を実施。体調不良を訴えた人のための宿泊施設も確保しています。除雪には新潟支社だけでなく首都圏からの応援も送り、最大限の態勢を整えていたと言います。

「まだ12月ということもあり、スタックした大型車の中には使い古した冬用タイヤを装着していることもありました。しかし、最大の要因は24時間で113センチという観測史上いちばんの大雪が湿って重く、このような結果を招いてしまいました」(小畠社長)

関越道の大雪通行障害について会見に臨む東日本高速・小畠徹社長 撮影/中島みなみ

大雪による大規模な交通障害は2016年1月24日~25日、新潟県長岡市と見附市でも発生。国道8号線を中心に中越地方の広範囲で渋滞が発生しました。この教訓を受けて、高速道路会社と国道を管理する国土交通省の事務所、沿線自治体などでは今年も合同訓練を実施しています。

今回の運転者への物資供給などは、その連携で実現したことです。しかし、閉じ込められた多くは大型車両で、物流は事業者の判断だけで止めることはできません。高速道路会社は滞留車両を発生させないための通行止めはできなかったのでしょうか。

●なぜ国道事務所は通行止めに同意しなかったのか?

高速道路の通行止めは、基本的には必要性を高速道路会社が判断し、交通管理者である警察が同意することで実行されます。しかし、今回の現場のように並行して国道などが走っている場合は幹線道路の管理者と合意しなければ、警察に話をすることができません。

「大雪による通行止めは、16日の夜間に国道事務所と最初に協議しましたが、一般道でも障害が発生しているため通行止めの判断に至りませんでした」(前述・髙橋管理本部長)

滞留車両を排出した後に除雪作業をしないと再開はできない(提供=東日本高速)

関越道が最初に通行止めになったのは17日早朝5時40分頃。関越道に並行する国道17号を管理する長岡国道事務所も16日の時点で通行止めの希望はあったと話をします。過去の大雪の教訓は生かされなかったのでしょうか。

「高速道路会社とは今回に限らず、常に情報交換しています。ただ16日の時点で国道でも積雪は同じような状況で交通障害が発生していました。高速道路を通行止めにすると、通行止めになると高速道路の車両は国道に迂回するため、地域と直結する国道は受け入れ態勢ができていないと住民が影響を受けます」(長岡国道事務所)

国道17号では16日昼頃から断続的に通行車両がスタックを繰り返していました。滞留車両を排除して通行しやすい状態が確保できなかったため、長岡国道事務所は国道の窮状を訴えて、最後まで関越道の通行止めには同意しなかったようです。

その間、17日深夜2時頃には関越道湯沢IC付近で大型車が走行不能に陥りました。そのスタック車両が先頭になり、料金所からあふれた車両が国道17号を止める事態が発生。湯沢市内まで渋滞が拡がりました。国道17号は通行止めに陥ります。

●通行止め決定 早急なプロセス見直し必要

同事務所の担当者はこう振り返ります。

「そのため災害対策基本法に基づく道路指定を湯沢町~南魚沼市の7.4kmにわたって実施。同日11時~17時にわたって車両を排除して除雪を行いました」

さらに東日本高速広報担当者も「国道と比較すれば通行を確保しているのでがんばれると思ったが、結果的に事実上通行止めになってしまったことによる判断は大きい」と、判断の遅れを認めます。

東日本高速 小畠社長
小畠徹社長(左)と髙橋知道管理事業本部長(右)撮影/中島みなみ

関越道の通行止めは、国道への迂回が絶望的となるまで判断できず、交通障害を深刻にしてしましました。高速道路と一般道が共倒れになるほどの大雪災害の直前に道路管理者がどのように判断しなければならないのか。東日本高速の小畠社長は「大雪対応が終了した後に検証する」と話しましたが、意思決定のプロセスを緊急に見直す必要がありそうです。

(文=中島みなみ)