新型フェアレディZのメカニズムは完全新設計? ドアのインナーハンドルが共通部品に見えるということは…!?

■日産はデザイン一新とアピールするがインテリアの各所に現行Z34型の面影が感じられる新型プロトタイプ

環境や自動運転ばかりに注目が集まりがちな昨今、「スポーツカー冬の時代」などと言われることもありますが、どっこいスポーツカーによってブランド価値を高めようというのが日産自動車です。

2020年9月16日、世界の「Z-car」ファンが見守る中、新型フェアレディZプロトタイプのデジタルアンヴェールイベントが開催されました。ステージ上の新型フェアレディZプロトタイプから日産自動車の内田誠 社長が颯爽と降り立るシーンから始まるオンラインイベントの模様を、じっくりと見ていたというファンも少なくないのではないでしょうか。

新型フェアレディZプロトタイプ
エンジンはV6 ツインターボ、トランスミッションは6速マニュアルトランスミッション。スパルタンな走りが期待できるプロフィールだ

そのオンラインイベントにおいて、新型フェアレディZプロトタイプの内外装についてはほぼ市販バージョンに近いという発言もありました。日産自動車のニュースリリースにおいても『内外装のデザインを一新するとともに、V6ツインターボエンジンとマニュアルトランスミッションを組み合わせたパワートレインを搭載しています』と記されています。

たしかに初代Zをオマージュしたスタイリングは、まさしくフェアレディZのヘリテージを感じさせるもので、それでいて新しいフェアレディZであることがひと目でわかるルックスとなっています。では、このボディを支えるプラットフォームも完全新設計なのでしょうか。

Z34フェアレディZ
現行型のZ34フェアレディZ。3.7L V6エンジンを搭載している

そうしたメカニズムやアーキテクチャに関しては、現時点では日産自動車から公式見解は発表されていません。エンジンについてもV6ツインターボということが明記されているだけで、排気量やスペックについては未公開です。しかし、新型フェアレディZのプラットフォームを知るヒントがインテリアの写真に隠れていました。

新型フェアレディZプロトタイプ
ステアリングホイールは新型フェアレディZ用のディープコーンタイプ。センターコンソールの意匠は現行型とほど同じに見える

新型フェアレディZプロトタイプは左ハンドル仕様、現行型の画像は右ハンドル仕様なのでわかりづらいかもしれませんが、注目してほしいのはドアのインナーハンドルです。その特徴的な形状は新型・現行型を見比べてみても、まったく同じように見えます。

Z34フェアレディZ
現行型Z34フェアレディZのインテリア。特徴的なドア・インナーハンドルやセンターコンソールのドリンクホルダーの位置は新型プロトタイプに受け継がれているようだ

レバーやスイッチは世代を超えて流用することは珍しくないのですが、エアコン吹き出し口が備わっている点も共通しているということは空調の設計が共通しているといえ、骨格レベルで共通性の多いボディを使っている可能性が高まります。

新型フェアレディZプロトタイプ
プロトタイプが発表された新型フェアレディZ。ダッシュ上の3連メーターなど古典的なスタイルだが12.3インチの液晶メーターを採用する

さらに手引きのサイドブレーキや一個しかドリンクホルダーの用意されていないセンターコンソールも、新型と現行型で基本骨格が似た部品を使っているように見えます。ドリンクホルダーを一個だけに絞るというのは守るべき伝統とは思えないからです。

Z34フェアレディZ
Z34フェアレディZのコクピット。サイドブレーキやセンターコンソールの意匠はプロトタイプと似て感じる

そして、さすがにセンターコンソールの設計が同じものだとしたら、フロア形状が共通と考えるのが妥当です。つまり、プラットフォームはキャリーオーバーで使っていると考えられるわけです。

プラットフォームが同一かどうかのヒントとして、チェックする項目としてブレーキキャリパーの位置関係があります。新型フェアレディZプロトタイプのブレーキキャリパーは、前後とも進行方向側についています。その点においては現行型でも同様に進行方向側にブレーキキャリパーをレイアウトしていますから、同じ系統のプラットフォームである可能性は否定できません。

もちろん、だからといってブレーキキャリパーの位置関係だけで同じプラットフォームと言えないのも事実です。あくまで否定できないというだけです。

新型フェアレディZプロトタイプ
ボディサイズは全長4,382 mm・全幅1,850 mm・全高1 ,310 mmと発表された

とはいえ、現時点では公表されていないホイールベースが新型と現行型で同一だとしたら、ますますプラットフォームが共通である可能性は高まります。経営状況としてはけっして芳しいとはいえない日産自動車ですから、スポーツカー用プラットフォームをゼロから開発するのは負担が大きく、従来型をブラッシュアップするという判断をしても不思議な話ではありません。

そもそもフェアレディZは初代のコンセプトからして、けっして完全専用設計のスポーツカーではありませんでした。実用的なSOHC 6気筒エンジンを主力としていたのは、その証です。

そのかわりにリーズナブルな価格を実現することが最大のテーマでした。メカニズムに凝り過ぎて価格が上昇してしまってはフェアレディZの本懐から離れてしまいます。新型フェアレディZがどのようなメカニズムを採用しているにせよ、手の届くスポーツカーと感じられるレベルの価格に抑えていることを大いに期待しましょう。

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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