■すべてを刷新したエンジンは上質な仕上がり
2020年10月15日に発表が予定されているスバルの新型レヴォーグ。すでに8月初旬に日本自動車研究所のテストコースにて体験イベントが行われていますが、今回は千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイでの試乗会での印象をお届けします。
まずはメインイベントであるサーキット試乗です。前回の日本自動車研究所での試乗では、全開走行を避けるように指示されていましたので、フルスロットルで試乗するのは今回が最初ということになります。
今回の試乗も現行モデルとの比較試乗となりました。新型の試乗モデルはGT-HとSTIスポーツの2種となりました。
スバルは水平対向エンジンにこだわり、連綿とその技術を継承しています。今回搭載されたCB18型はボアピッチまで新設計した完全なる新型で、現行の1.6リットルターボに比べトルクで50Nm、パワーで7馬力アップされています。
またCVTの変速比を従来よりもワイドレンジとし、低速側の変速比を下げていることもあり、とくに低速からのトルク感が強く、発進加速での力強さを感じます。
試乗は編集長を後席に乗せて行いましたが、トルク感にあふれるエンジンはフル乗員、フル積載でも十分な力強さを示してくれることでしょう。100km/h時のエンジン回転数を計測しようと思いましたが、CVTのためサーキットのストレートでは回転数が安定せず目測は不可能でした。
そこでギヤ比とタイヤサイズから計算したところ、100km/hで約1580回転、120km/hで1890回転で1.8リットルで1.5トンオーバーのクルマとしては優秀です。
発進加速や高速走行時の安定したトルク感はもちろんですが、コーナー脱出時のトルクの掛かり方もまた気持ちのいいものです。このあたりのトルクの掛かりがいいのはAWD(4WD)の強みでもあります。
とくにSTIスポーツでは「ドライブモードセレクト」によってAWDのセッティングも変更できるため有利だと言えます。試乗に際しては“コンフォート”、“ノーマル”、“スポーツ”、“スポーツ+”、“インディビジュアル(組み合わせ自由の設定)”のうちもっともスポーティな“スポーツ+”を基本にしています。
というのも、前回の日本自動車研究所での試乗で“コンフォート”を選んでいても必要とクルマが判断すれば“スポーツ+”にクルマ側が設定を自動変更する……という話を聞いていたからです。サーキット前提ならば当然“スポーツ+”で走り出すでしょう。
その“スポーツ+”での乗り心地ですが、これが思っているよりずっといいのです。現行モデルSTIと比べてもずっとしなやかな乗り心地確保しています。
ちょっとした段差を乗り越えた際も、路面からの入力をキレイに逃がしてドライバーにイヤな印象を与えません。クルマ好きならば“スポーツ+”のまま乗りつづけても何の不満も覚えないはずです。
“コンフォート”にするとダンパーはよりしなやかなセッティングになり、パワステやACCの動きもコンフォートな味付け、エアコンもマイルドになります。ACCをオンにして長距離を移動するにはこのモードなのでしょうが、そのレポートは次回以降に持ち越しましょう。
さて、もっとも気になるであろうハンドリングですが、レヴォーグのハンドリングはスポーティで正確です。
コーナー入り口でステアリングを切ってクリップへクルマを向ようとすると、遅れのない反応でクルマが向きを変えていきます。現行モデルも基本的に同じ動きなのですが、その反応速度に若々しさを感じるのです。その最大の要因はプラットフォームの進化でしょう。
現行レヴォーグは旧世代のプラットフォームを使っていますが、新型は新世代のプラットフォームであるスバルグローバルプラットフォームを用いています。サスペンションからボディに入った入力をしっかりと受け止めるため、クルマの動きが正確になるのです。この傾向は現行モデルでも十分に持っていましたが、より正確さを増した印象です。
新型レヴォーグの走りは1段階上にシフトしたとともに、その厚みを増したという印象です。室内空間を広くしつつも、走りに磨きを掛けたレヴォーグ。
日本自動車研究所、袖ヶ浦フォレストレースウェイと我々レポーターはその実力を小出しにチェックする状況ですが、乗るたびに奥深さを感じずにはいられません。次はどんな試乗でしょうか? 早く一般道、そして長距離でのレポートをお届けしたいところです。
(文/諸星陽一・写真/井上 誠)