プジョーから日本市場では初のBセグメントBEV「e-208」が登場。リーフより大きなバッテリーが超魅力【週刊クルマのミライ】

■日産リーフの標準車は40kWh、e-208のバッテリー総電力量はなんと50kWh!

e-208メーター
3D表示となった新世代「i-Cockpit」は新型208の特徴。航続可能距離が190kmと表示されているのも確認できる

プジョー208の新型が日本上陸しました。1.2L 3気筒ターボを基本としつつ、BEV(電気自動車)のe-208も設定しています。BEVの価格は同等グレードで比べるとガソリンエンジン車の130万円高となっています。

プジョーでは「補助金や各種税金や保険、電気代とガソリン代の違いなどランニングコストでみると同じくらいの負担で済むはずです」といいます。つまり、好きな方を選べばいいというわけです。

とはいえ、BEVといえば航続可能距離が気になるところですが、e-208のバッテリー総電力量は50kWhもあります。このクラスのBEVとしては十分な電力量を持っているといえます。

プジョー208は車格的にはBセグメントに分類されますが、ひとつ上の車格であるCセグメントのBEVとして知られている日産リーフの標準車のバッテリー総電力量は40kWhなのです(62kWh仕様もありますが)。

筆者は個人的にバッテリー総電力量30kWhの旧型リーフを普段の足としていますが、その経験からいってBセグメントで50kWhもあれば、まず日常的には不満に思わないレベルの航続性能が確保されていると考えます。

プジョー208とプジョーe-208

しかもe-208には次に示すように3つのドライビングモードが用意されているのです。

• Sport:パフォーマンスとフィーリングにプライオリティ (100kW/260Nm)
• Nomal:日々の利用における快適性の最適化  (80kW/220Nm)
• Eco:航続距離の最大化 (60kW/180Nm)

スイッチひとつで、ここまで出力を変えることができるというのもモーターならではといえますが、Ecoモードを選べば航続可能距離を確保することができますし、それでも60kW、180NmというスペックであればBセグメントとしては十分な動力性能といえます。

我慢を強いる仕様とはいえないでしょう。また、充電方式は日本で普及しているチャデモと普通充電に対応しているので、充電しながら遠出する際にもインフラ整備の点で不満に思うこともなさそうです。

e-208充電口
充電リッドを開けると、急速充電(右)と普通充電が並んで置かれている

ところで、プジョーe-208は「日本市場で初のBセグメントBEV」だとプジョーは説明します。たしかに、プロトタイプを除く量産EVとしてみると、国内で正規販売されたコンパクトモデルというのは三菱アイミーブ、スマートedともにAセグメントに分類される車格ですし、前述の日産リーフはCセグメントです。たしかにBセグメントのEVというのは日本では初めてかもしれません。

そして、アイミーブとリーフという異なるセグメントのBEVと比べるとe-208のコストパフォーマンスが際立って感じられます。

[e-208]
バッテリー総電力量:50kWh
航続可能距離:340km(欧州WLTPモード)
価格帯:389万9000円~423万円

[アイミーブ]
バッテリー総電力量:16kWh
航続可能距離:164km(JC08モード)
価格帯:300万3000円

[リーフ]
バッテリー総電力量:40kWh
航続可能距離:322km(WLTCモード)
価格帯:332万6400円~418万9900円

一充電での航続可能距離については、それぞれ計測モードが異なるので単純に数字を比較するのは難しいのですが、参考までに欧州仕様のリーフ(40kWh)のWLTPモードの航続可能距離は270kmとなっています。そこから想像すると、e-208の日本仕様の航続可能距離は400km前後になると想像できます。

いずれにしても、BセグメントのEVとしては50kWhのバッテリー総電力量というのは距離を気にせずにカーライフを楽しめると期待できるのではないでしょうか。

そして、あらためて注目してほしいのは価格帯です。これほどのバッテリーを積んでいながらグレード次第では日産リーフよりも安価な設定となっているのは、いくらセグメントが異なるといっても驚きです。

はっきり言えば、BEVの高コスト要因といえるバッテリーをこれほど積んでいて、この価格帯というのは現時点での基準からすればバーゲンプライスといえます。それはエンジン車との価格差からもいえます。

単純にエンジンとトランスミッションとタンクを降ろして、モーターとインバーターとバッテリーを積んだと考えると、その価格差が130万円というのも驚きです。50kWhというバッテリー総電力量からすると従来のイメージではバッテリーコストは1万ドル級となるからです。

リチウムイオンバッテリーの調達費用はどんどん下がっているといいますが、e-208の価格設定からもそうした状況が実感できるのです。

e208タイヤ
GT Lineのタイヤは205/45 R17 ミシュランプライマシー4  ホイールには整流効果を狙った樹脂製のブレードがインサートされるのはe-208専用品

(自動車コラムニスト・山本晋也)

この記事の著者

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山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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