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●2022年までに施行される改正道路交通法、二種免許の資格取得条件が大幅緩和される
旅客自動車を運転する際に必要な二種免許は、バスやタクシー、介護タクシーやハイヤー、運転代行業などでクルマを運転する際に必要な資格です。先日閉幕した通常国会で、二種免許の取得に関して、条件が大幅に緩和された改正道路交通法が成立しました。
今回は、二種免許とは一体何なのか、また条件緩和によって何が期待されるのかを考えていきます。
■二種免許とは?
自動車の免許の中には、第一種運転免許と第二種運転免許があります。
第一種免許は、普通・中型・大型などの各自動車そのものを運転する資格を与えるもので、第二種免許では、その自動車を使って「乗客(旅客)」を運ぶ資格を与えています。つまり、お客様を乗せて走ることができる資格が二種免許です。
たとえばタクシー、路線バス、介護タクシー、民間救急車、運転代行など、「お客様を乗せて」運転をする際に必要な資格となっています。ただし、無料送迎車を運転する場合には、二種免許は必要ありません。
現在、第二種免許を取得するためには、年齢が満21歳以上で他の二種免許を取得しているか、普通・中型・大型・大型特殊の一種免許を取得している者で運転歴が3年以上経過している必要があります。
■改正道路交通法で何が変わったのか
先日の通常国会を通過した改正道路交通法では、二種免許取得に関する年齢制限の壁が大きく撤廃されることになりました。
これまでの、年齢条件「満21歳以上」が「満19歳以上」に変更され、運転経験年数も「3年以上」から「1年以上」へと短くなっています。この法改正により、より若い年齢で二種免許を取得できるようになりました。これは二種免許制度が始まった1956年以来、初めての要件緩和です。
なお、この法令は2022年までの施行を目指すこととなります。2020年6月現在では現行法のままなので二種免許の取得要件は変わりませんが、2年後までを目途に、取得要件が大きく緩和されることになるでしょう。
■タクシーやバス運転手の若返りに期待
今回の法改正は、数十年前からハイヤー・タクシー業界で熱望されてきた内容です。特にタクシー運転手の若返りを急務としているタクシー業界にとっては追い風となりえる改正内容です。
全国のタクシー運転手の平均年齢は60歳と、高齢化が進んでいます。この改正により、早ければ高卒1年目での二種免許取得が可能になることから、若者の人材確保に大きな期待を寄せています。
人口当たりのタクシー台数が全国でもトップクラスに多いのが宮城県仙台市です。仙台市のタクシー事業者も参加している東北ハイヤー・タクシー連合会は、2015年1月に東北六県商工会議所連合会に二種免許の要件緩和への協力を相談し、2015年6月には日本商工会議所を通じ、政府の規制改革会議に意見書を提出しています。
東日本大震災以降、被災地を中心に広がる人手不足のあおりを大きく受けている中で、東北の業界団体と経済団体が連携して若年層の地元定着も視野に入れた法改正の提案が、5年の月日を経て実現することとなりました。
今後、新規高卒者の採用に向けて高校への積極的な訪問活動や、若者が働きやすい環境を整えていき、ドライバーの若返りを図っていくようです。
一般ドライバーの中でも高齢ドライバーによる事故が連日のように報道され、タクシーに限らず旅客業の中でのドライバーの高齢化は、大きな社会問題になってきています。
今回の法改正により、ドライバーという職業にも若返りの傾向が表れていくことで、安全安心な旅客業が今後も継続できることでしょう。
■まとめ
少子高齢化の進む中、仕事の担い手を若者にシフトしていくことは必要不可欠です。より若い年代から二種免許を取得できるようになれば、旅客ドライバーの高齢化にも歯止めがかけられるのではないでしょうか。
改正道路交通法の施行と旅客業界の働きやすさの改善が急務となりますが、今後の動向に注目してきましょう。
(文:佐々木 亘)