ホンダの燃料電池車もついに一般向けリース販売開始。そのコストは?【週刊クルマのミライ】

■補助金を考慮すると月々のリース料金は10万円が目安。意外に現実的!

走行中の排出ガスがないゼロエミッション車で、なおかつ航続距離が長く、エネルギー充填もスピーディという特徴を持つことから、一時は「究極のエコカー」という言葉とセットで紹介されることの多かったのが「燃料電池車」です。

世界でも量産・一般向け販売しているケースはほとんどなく、少なくとも日本国内で誰もが購入できる燃料電池車は、トヨタMIRAIだけでした。

ハイブリッドカーの時代からエコカーで競うライバル、ホンダも燃料電池車「クラリティFUEL CELL」を2016年3月に発表していますが、これまでは企業や官公庁向けのリースのみで、一般ユーザーの利用は難しいという状況でした。

しかし、そのクラリティFUEL CELLがついに一般向けリース販売を開始すると発表されました。

プラチナホワイト・パール
一充填での走行距離は約750km。世界で初めて5人乗りを実現したセダンタイプのFCVだ。画像のボディカラーはプラチナホワイト・パール

一般向けになるからといって何かマイナーチェンジを受けたわけではないのですが、これまで企業向けなどにリースしてきた経験で蓄えた知見により、一般向けのリース販売をしても問題ないとゴーサインが出たということのようです。

なお、クラリティFUEL CELLは2019年12月に、UV/IRカットガラスの採用ほか細かい部分のマイナーチェンジを受けています。その際に低温域での性能を向上させるなど、どの地域でも燃料電池車を問題なく扱えるよう改良を受けているということですから、一般向けの販売に向けて心強いといえるのではないでしょうか。

価格は783万6400円(消費税込み)
全国メーカー希望小売価格は783万6400円(消費税込み)

さて、一般向けリース販売が始まるとはいっても、気になるのはコストが現実的かどうかになるでしょう。

メーカー希望小売価格は税込み783万6400円と非常に高価ですが、国からの補助金は210万円ほど期待できます。さらに地方自治体によっても補助金が用意されていることもありますから、意外にリーズナブルに乗ることができそうです。

そうした補助金も加味するとリース料金はどれほどになるのでしょう。契約内容などによってもリース料金は変化しますから、正確な金額というのはケース・バイ・ケースになるということですが、ひとまずホンダ広報部に質問してみたところ「補助金などを平均的に考慮した60か月の契約で、おおよそ月々10万円強が目安です」という回答がありました。

年間120万円程度で、夢の燃料電池車とのカーライフが送れるのです。けっして安い金額ではありませんが、夢を買うと思えば手の届かない金額ではないと感じる人もいるのではないでしょうか。

プレミアムディープロッソ・パール
クラリティFUEL CELLのボディカラーは3色設定。プレミアムディープロッソ・パールはブラックルーフとの組み合わせで、4万4000円高

とはいっても、燃料電池車は日本全国どこでも販売するというわけではありません。

現実的な運用が可能な、水素ステーションのある都道府県の一部Honda Cars(2020年6月11日時点:35法人)のみで取り扱いが始まっています。

参考までに、6月11日時点で取り扱い販売店のある都道府県は、北海道・宮城県・福島県・茨城県・栃木県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・山梨県・静岡県・新潟県・富山県・愛知県・三重県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・岡山県・山口県・徳島県・香川県・福岡県・佐賀県・大分県となっています。

生活圏内に水素ステーションがないと実際に愛車としてストレスのないカーライフを送るのは難しいでしょうが、もし近所で水素が充填できる環境にあるのならば、ついに一般向けリース販売の始まったクラリティFUEL CELLを検討してみてはいかがでしょうか。

(自動車コラムニスト・山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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