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■A110の歴史に刻まれたピュアスポーツの世界を、井出有治&clicccarやすのが初体験
世の中には、超有名ではないけど「一生に一度は乗ったほうが良い、乗る価値のあるクルマ」というのがあるそうで…。まぁその対象車種は人それぞれではあるでしょうが、スポーツカー好きならば「絶対に一度は乗れ! 良い冥土の土産になる!」とソコココで聞く車名があります。
それが、2017年に復活、発表された「アルピーヌA110(エーワンテン)」。
ルノー/アルピーヌからリリースされるクルマって、コアなファンが多いように感じます。日本車で言うところの「スバルのスバリスト」みたいな感じで。でも、そんなコアファンでなくても、一度触れるとその魅力にドップリはまってしまう…そんな魅惑なクルマがA110なのだそうです。
かつて1960〜1970年代に、世界ラリー選手権のモンテカルロや世界耐久選手権のル・マン24時間レースなどモータースポーツの世界でも活躍し、その名を轟かせてきた旧A110ファンにとって、待ちに待たされた21世紀の新A110の登場には、涙ナミダの感動がある…らしいのです。
●綺羅星のごとく登場した21世紀のA110
新A110の誕生…まず、2016年ジュネーブモーターショーにてA110復活を発表。2017年に特別仕様のローンチエディションの「プルミエールエディション」が世界限定1955台、日本へは2018年6月に50台のみの限定発売が発表されるやいなや、あっ!という間に予約がいっぱいに。その後、フランス大使による厳正なる抽選の上リリース。
そんなキラッキラに登場したプルミエールエディションから遅れること約3ヵ月、待望のカタログモデルとして、「スポーツ派のピュア」と「プレミアム派のリネージ」の2バージョンが2018年9月に発表されました。プルミエールエディションの抽選に漏れてしまったA110ファンにとって、手にするまで焦らしに焦らされた、まさに待望のカタログモデル登場なのでした。
●え…A110を知らないって?「はい…」(井出)
が、しかし…。clicccarテストドライバー&プラチナレーシングドライバーの井出有治さんも、私clicccarやすのも揃って「エンスーじゃないし昔のクルマはそれほど詳しくない…」。
しかも「A110ってどんなクルマだっけ?」(井出)「(画像送付)コレなんだけど…」(やすの)「へぇ〜」(井出)…。かつての輝かしい歴史を刻んだ旧A110はもちろん、新A110についてもほぼ知らない上に、街中では滅多にその姿を目にできないため触れる機会は皆無。
実は、2019年2月・メガーヌR.S.カップ試乗会、4月・モーターファンフェスタ2019・メガーヌR.S.カップ タイムアタック、そして10月のメガーヌR.S.トロフィー試乗会と、2019年メガーヌR.S.ファミリーに乗る度に、「え、井出さんって一度もA110に乗ってないの? それはそれは、ぜひ乗ってください!」と、アルピーヌ/ルノー・ジャポンさんよりお会いするたびにお誘いいただいていたのです!
ってことで、井出有治さんと私clicccarやすの、しばしのA110体験スタートです!
●室内空間は広々! でもリヤのトランクは「保温庫」って、どーいうこと?
「このクルマって2シーターなのに室内広いですね~」(井出)。カラーがホワイト系だからか、パッと見は大きく見えるA110ですが、ジ~ッと見ているとそのボディの小ささが分かります。でも、井出さんが言うように室内空間は想像以上に広いのです。足の長い井出さんと横に狭くない私の2名が乗っても、窮屈感はまったく感じません。
が、前後のトランクは「とりあえず、ある」程度に思っておいたほうが良さそうです。フロントは薄いもの、もしくは薄く潰せるもの…コートとか薄く潰せるソフトバッグならひとり分くらいは入るので、井出さんのレーシングスーツ、シューズが入るバッグは入りました。でもヘルメットはどう角度を変えても入らない! じゃ、リヤトランクへ。
が、リヤトランクには少々の深さはあるものの、ミッドシップエンジンの真後ろに位置するため、熱の影響がハンパない! 女性用のバッグを入れたらポーチ内のリップはドロドロに溶けそうです。
「ヘルメットも熱に弱いのでNG!」(井出) マジでトランク内がホッカホカ〜になるため、ココは出来立てお弁当やHOT缶コーヒーの定位置? ワインを入れたら速攻で酸化し廃棄です。あ、冬場はコートを入れておけばホカホカ状態で着られるのでイイかも! ってことで、ヘルメットはシートを一番前にスライドさせなければ足が届かない(私の場合ね)運転席後ろのヘッド部分にハメ込み状態です。
よくトランク容量をゴルフバッグの個数で表現しますが、2名乗車のA110には1個も入りません! ゴルフバッグは1名乗車で助手席にドーン!です。
●最新システム満載で(多分)旧型の面影は無し?
マニュアル車にしか乗ってこなかった私にとっては、スイッチ式のシフト操作部も不思議〜な感じ…というかイマイチまだ慣れません。ドライブもリバースも丸いスイッチ…オートマでもレバー操作でガチッ!と入れたいところです。
電動パーキングにいたっては、いまだに「ホントにP効いてんの?」と不安になること度々。ソロ〜っとブレーキペダルから足を離す動作を見て「なにビビってんの〜?」(井出)って笑われるほど。やっぱレバーをガシッ!と引いて停めたい!!…でも今ドキのクルマはみんなこんな感じなんですよね。
シートはグレードがピュアなので「漢のフルバケ」です。そう、非リクライニングのSabelt(サベルト)製軽量モノコックバケットシート! コレはやる気が湧き立ちます!! シートの上下調整はシートレール部分の取り付けボルトでの位置調整のみ。足とフットペダルの位置でシートポジションを決めたら、あとはステアリングのチルト&テレスコピックでドライビングポジションを決めます。
このシート、フルバケですが疲れ知らず。筑波サーキットのタイムアタックでも「ヨレ、ネジレ感もありませんでした」(井出)。
●パワーウェイトレシオ的にはGRスープラ(RZ)とほぼ一緒…
筑波サーキットでも首都高でも、A110はヒュンヒュンと軽〜く飛ぶように走ります。これがウワサの「軽快・軽量だからこそのA110の走り」なのでしょう。重心位置が真ん中…というよりもドライバーの位置が重心、そんな感じ。ドライバーを中心にピュンピュンとコーナリングをしていく感覚です。
1.8Lターボエンジンが横置きされるミッドシップならではの回頭性の良さ。しかも車重1110kgという重さが走っているとはまるで感じられないのです。軽すぎるくらいに軽い!
人馬一体になり過ぎてる? それともミッドシップってみんなこんな感じ??(私はン十年ぶり、初代NSX以来のミッドシップ ドライブ)。
最近はあまり「パワーウェイトレシオ」を指標としないようですが(あまり見かけない)、この数値をよく目にしていた年代(!)にとって「車重(kg)÷エンジンパワー(ps)」で分かる加速性能は、なんとな〜く感覚的にそのクルマの性格みたいなものが分かりやすいんです。
で、このA110のパワーウェイトレシオは4.4kg/ps。
ちなみに、2019年に井出有治さんに試乗いただいたクルマの中で比較すると、一番数値が良いのはGT-R NISMO 2020の2.86kg/ps、悪かったのは(でも井出さんは2019年に乗った中で1番のお気に入り!)がメガーヌR.S.カップの5.23kg/psでした。「なるほど〜!」(井出)
まぁ、この数値は加速性能の目安なので「クルマはなんといってもトータルでのバランスが重要!」と力説する井出さんが言うとおり、数値が小さければすべてがいいクルマ、というものではないです。でも、2020年2月から予約がスタートとなる「A110S」のパワーウェイトレシオ=3.8kg/ps、楽しみですね!
■アルピーヌ A110 井出有治ドライブ 筑波サーキット
ベストラップ=1分06秒822!
●筑波サーキット2000でA110と比較したのはメガーヌR.S.トロフィー・ライト改
ノーマルの市販車でこのタイムは速いのかそ〜でもないのか…50秒切りをターゲットにしている筑波アタックが頭にこびりついているので正直、ノーマル車のタイムはよく分かりません。まぁサーキットはドライバー・気温・路面温度・湿度などによって全く変わってくるため、この日同じく井出さんが走らせたメガーヌR.S.トロフィー(※しかし、タイヤ、ブレーキパッドが社外品へ変更されていた)は1分7秒299。コンマ4ほどA110のほうが速かったことになります。
「まぁまぁなタイム、かな? でもなんかね、A110は筑波サーキット2000のコースレイアウトには合わないような感じ。筑波って回り込むヘアピンコーナーが多いでしょ? もちろん、A110って軽いのでコーナリングマシンではあるんだけど、回り込む…っていうのは一緒に走ったメガーヌR.S.トロフィーのほうが得意ですね」(井出)
「R.S.トロフィーにはコーナリング性能に効く4コントロール(リヤのトーコントロール制御)が装備されているので、これが回り込むタイプのコーナリングに物凄く効くんです。A110はその点、軽さのあるコーナリングマシンではあるので、細かいコーナーが連続するようなワインディングのほうが得意なんじゃないかと思いますね!」(井出)
それでもタイム的にはA110のほうに軍配が上がったので、軽さって重要なのだと実感します。
「今回乗ったメガーヌR.S.トロフィーは、タイヤとフロントのブレーキパッドが交換されていたんです。ノーマルタイヤはブリヂストン、今回はグッドイヤー。この差は大きかったです。
今回のタイヤが良い悪いではなく、バランス的にR.S.トロフィーと合っていなかっただけ。ボクはタイヤの性能にプラス、クルマとの相性を重要視しています。どんなハイパフォーマンスタイヤであっても、クルマとの相性が悪ければなんにもならない! クルマの開発と同時にパフォーマンスアップされた純正のBSタイヤと比べたら、そりゃ相性の差は歴然でしょう。
フロントのブレーキパッドも変更されていたのですが、これもR.S.トロフィーとはバランス的に合わない感じ。R.S.トロフィーはローターにスリットが入っているので、まだパッドのアタリが出ていなかったのか、ローターとの相性なのか、ゴリゴリしてました。ライフ的にも悪そう?
とにかく、筑波での乗りやすさ、楽しさで言ったらメガーヌR.S.トロフィーなんだけど、タイヤとブレーキというタイム的に重要な要素が変更されていたこともプラスされ、軽さで勝るA110のほうが速かった、ということも考えられるかな」(井出)
A110とメガーヌR.S.トロフィーでは共通点も見られ、M5P型1.8Lターボエンジンも同じ。が、A110は252ps(参考値)に対してR.S.トロフィーは300ps。これはR.S.トロフィーに装着されるツインスクロールタービンの差でもあるのかな? フロントのアルミ製ハブ+鋳鉄製ローターのバイマテリアルブレーキは一緒です。
●あ〜ちょっと残念…A110は筑波サーキットにギヤ比が合わない!?
「それとね、A110って7速のEDCなんだけど、そのギヤ比も筑波の回り込む系コーナーに合わなかったんだよね。もちろん、パドルシフトのトラックモードで行きましたけど、コーナリング中にココでシフトチェンジ〜!と思っても、レッドに入れないような制御があるのか、待ち時間がまどろっこしいような。あとパドルシフトがステアリングと連動して動かないので、コーナリング中のパドル操作が出来ない。ちょっと残念…」(井出)
●A110の軽快さはドライビングの楽しさを魅せてくれた!
筑波サーキットは井出有治さんが、街中+首都高含めた高速は私がドライブ(あ、全開ではなくお買い物風ドライブで!)した3日間。歴史的背景を噛み締めて…とはいかなかったふたりのA110体験でしたが、それでも21世紀のA110の持つ軽快感は、ウワサどおりのものでした。
ホント、難しいことは一切抜きにして、乗って楽しい、いつまでもドライブしていたい! そんな気にさせてくれるドライビングプレジャー、A110でした。
(試乗インプレッション:井出 有治・永光 やすの/文:永光 やすの/画像:REV SPEED 伊藤 嘉啓・宮越 孝政・高松 弘・ウナ丼/取材協力:REV SPEED編集部)
【SPECIFICATIONS】
車名:ALPINE A110 PURE(アルピーヌ・エーワンテン・ピュア)
ボディサイズ:全長4205×全幅1800×全高1250mm
ホイールベース:2420mm
トレッドF/R: 1555mm/1555mm
車両重量:1110kg
エンジン:M5P/直列4気筒直噴ターボエンジン(横置き)
エンジン排気量:1798cc
ボア×ストローク:79.7×90.1mm
圧縮比:8.9
エンジン 最高出力:185kW(252ps参考値)/6000rpm
エンジン 最大トルク:320Nm(32.6kgm参考値)/2000rpm
パワーウェイトレシオ:約4.4kg/ps
駆動方式:後輪駆動(MR)
トランスミッション:電子制御7速AT(7EDC)
変速比:1速 3.615/2速 2.368/3速 1.515/4速 1.156/5速 0.926/6速 0.843/7速 0.707/後退 3.246
最終減速比:3.789(1,2,6,7、後退)/4.235(3.4.5)
サスペンション F/R共:ダブルウィッシュボーン・コイル
ブレーキローター F/R共:アルミ製ハブ+鋳鉄製320mmベンチレーテッドディスク
ブレーキキャリパー :ブルーアルピーヌ F ブレンボ製4P/Rブレンボ製 1P
タイヤサイズ F/R:205/40ZR18 86Y/235/40ZR18 95Y
燃料消費率 JC08モード:14.1km/L参考値
0-100km/h加速:4.5秒
最高速度:250km/h
乗車定員:2名
車両本体価格(税込):8,110,000円(ブランイリゼM[ホワイトメタリック])
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