【自動車用語辞典:燃料「ガス燃料」】代替燃料として注目される天然ガスと液化石油ガスのメリットと課題

■ガソリンに比べて安く、排出ガスもクリーン

●供給インフラが脆弱で普及には壁が

ガソリンや軽油の代替燃料として、ガス燃料のCNGとLPGがあります。石油の枯渇問題が取りざたされた20年以上も前には、安く入手できてクリーンな代替燃料として注目されていました。

最近は、エンジンの環境対応技術や電動化技術が進み、その存在感が薄れつつありますが、CNGとLPGのメリットと課題について解説していきます。

●CNGとLPGの基本特性

CNG(Compressed Natural Gas)は、圧縮天然ガスの略称です。

天然ガスは石油よりも埋蔵量が多く、世界中の地下に存在するため、安く入手することができます。メタンガスを主成分として、家庭用のガス燃料「都市ガス」に使用されています。クルマ用としては、天然ガスを気体のまま20MPa程度まで圧縮して、専用ボンベに貯蔵して使用します。

LPG(Liquefied Petroleum Gas)は、液化石油ガスの略称です。

プロパンとブタンの混合ガス燃料で、原油精製で得られる最も揮発しやすいガス成分です。0.2~0.8MPa程度の圧力をかけて液化して専用タンクに貯蔵して使用します。日本のタクシーのほとんどは、LPG車です。

石油ガスの分留温度
石油ガスの分留温度

CNG車とLPG車とも、市販のガソリンエンジンとディーゼルエンジンをベースにしています。噴射系をガス燃料用に変更するエンジン改造で対応しますが、改造費は数十万円以上かかります。

車両価格(イニシャルコスト)は高くなりますが、いずれも燃料価格(ランニングコスト)が安いので、走行距離が多ければ多いほど、コストメリットは大きくなります。

ただし、どちらも燃料ガス供給スタンドが少ないので、一般のユーザーが日常的に使うのは難しいです。

●CNG車のメリットと課題

CNGエンジンでは、気体のまま200MPa程度まで圧縮されたCNGを、減圧して専用の噴射弁で吸気マニホールドに噴射します。気体で燃料を供給するとその分吸入空気量が減少するので、通常は出力が若干低下します。

CNGの主成分メタンは、ガソリンと比べて単位重量当たりの発熱量が多く、オクタン価は120と高いアンチノック性を持っています。また燃料中の炭素量が少ないため、燃焼によるCO2発生量はガソリンに対して20%少なく、PMやNOxも減少します。
燃料価格はガソリンの約70%で燃費がガソリン車と同等だと、燃料費はガソリン車の70%程度ですみます。

最大の課題は、常温で気体なので満タン時の走行距離が短いことです。乗用車クラスで150Lのボンベを搭載しても航続距離は150km程度と短く、実用的ではありません。

CNG燃焼時の生成ガス
CNG燃焼時の生成ガス

●LPG車のメリットと課題

LPGは0.2~0.8MPaの圧力で液化して、ガスの1/250にしてタンクに充填します。液体噴射方式と気体噴射方式があり、専用の噴射弁で吸気マニホールドに噴射します。

LPGの単位重量当たりの発熱量は、ガソリンよりも多くオクタン価は約105と高いです。CNGと同様、燃料中の炭素量が少ないため、燃焼によるCO2発生量はガソリンに対して15%程度少なく、またPMやNOxも減少します。

燃料価格はCNGよりも低くガソリンの約60%(80円/L)程度なので、燃費がガソリン車と同等だと燃料費はガソリン車の60%程度と圧倒的に安いです。乗用車クラスでは80Lタンクが搭載可能で、1回の充填で600~800km走行できます。

燃料費が安く航続距離も長いので、走行距離が長いタクシーやトラックではコストメリットは大きく、有効な燃料です。


クリーンで燃料費も安いCNG車とLPG車は、ガソリンと軽油の代替燃料として注目されていました。ただし、エンジン自体の進化やHEVなどの電動化技術が加速する中で、その存在感は薄れています。

年間10万km以上走るようなタクシーやトラックでないと燃料費メリットが享受できない、燃料インフラ整備が不十分なことなどの理由により、CNG車とLPG車は一般車には普及しづらくなっています。

(Mr.ソラン)

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