VWは完全にEVへシフト。10年以内に75車種の100%電気自動車を市場に投入すると宣言【週刊クルマのミライ】

■グループ全体で2029 年までに約75車種の電気自動車と約60車種のハイブリッド車を市場に投入

フォルクスワーゲン(VW)グループが、2020年からの5か年計画「プランニングラウンド68」を発表。今後5年間で、ハイブリッド化、e-モビリティ、デジタル化といった分野に約600億ユーロの資金を投じる予定であることを明らかにしました。

とくにe-モビリティ領域には330億ユーロを投じる予定で、次世代のモビリティは電動化にシフトすることを明確にしています。なお、この600億ユーロという数字は、グループ全体の研究開発費の40%強に相当する規模ということです。

5年間で600億ユーロを投資
フォルクスワーゲン・グループは2020年~2024年の5年間で将来分野に600億ユーロを投資する。

電気自動車へのシフトはVWブランドのモデルに限った話ではありません。アウディなどVWグループに属するブランドのすべてにおいての話になります。その主役は100%電気自動車(All-electric models)となるということも宣言されました。

具体的には2029年までに75車種の電気自動車(ハイブリッドは除く)をローンチ、累計2600万台の生産を予定しています。ハイブリッド車については同時期で600万台の販売を見込んでいるということです。つまり、電動化においては電気自動車が中心となるわけです。

10年間で生産予定となっている2600万台の電気自動車のうち2000万台はMEB(モジュラー エレクトリック ドライブ マトリックス)に基づくもので、残りの600万台はハイパフォーマンスプラットフォームを用いたモデルになるといいます。これは、ポルシェやアウディの上級モデルでも電気自動車シフトが進むということを意味しています。

この計画は机上の空論ではありません。VWグループは生産拠点も確保しています。具体的には。ドイツ国内のツヴィッカウ、エムデン、ハノーバー、ツッフェンハウゼン、ドレスデンの各工場のほか、ムラダー ボレスラフ(チェコ)、チャタヌーガ(アメリカ)、仏山(フォーシャン・中国)、そして安亭鎮(アンティン・中国)において電気自動車の生産を開始する予定です。

また、それぞれの工場はグループに属する複数のブランドを混流生産するマルチブランド工場になる可能性があるということです。

電気自動車の生産についてはバッテリーなどのサプライチェーンをどのように確保・整備するかという課題もありますが、そうした部分をクリアにできたことが、今回の発表につながったと捉えるのが妥当でしょう。

技術的には、ほとんどの国産メーカーでも電気自動車の生産は可能です。しかし、これだけ一気に量産計画を展開するVWの勢いは、世界の自動車メーカーの中でもトップクラスと感じます。VWグループの動きは未来の自動車がBEV(バッテリーEV)中心になると判断したからと考えられます。

日本では再生可能エネルギーのストレージ機能も考慮した上で、将来的には水素社会へシフトするのではと考えている向きもあります。未来予測というのは、何が当たるのかわからない部分もありますが、はたして2029年にはVW以外の自動車メーカーはどのようなラインナップで生産しているのでしょうか。そもそも、何社(どのブランド)が生き残っているのでしょうか。

Volkswagen breaks ground on expansion for electric vehicle production in United States
アメリカでも電気自動車の生産を開始する。チャタヌーガの工場には8億ドルを投資予定。

(山本晋也)

この記事の著者

山本晋也 近影

山本晋也

日産スカイラインGT-Rやホンダ・ドリームCB750FOURと同じ年に誕生。20世紀に自動車メディア界に飛び込み、2010年代後半からは自動車コラムニストとして活動しています。モビリティの未来に興味津々ですが、昔から「歴史は繰り返す」というように過去と未来をつなぐ視点から自動車業界を俯瞰的に見ることを意識しています。
個人ブログ『クルマのミライ NEWS』でも情報発信中。2019年に大型二輪免許を取得、リターンライダーとして二輪の魅力を再発見している日々です。
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