●「運転アシスト」プロパイロット2.0は、ドライバーや同乗者を一切不安にさせない仕上がり
クルマが進む新たな道のひとつ「自動運転」。そうした自動運転への道のりのなかで、一歩抜きんでたのが日産のスカイラインです。国産初となるハンズフリードライブを体験しました。
試乗車は2019年7月にマイナーチェンジが行われたスカイラインです。現行スカイラインはデビュー時に日産エンブレムではなくインフィニティエンブレムで登場しましたが、今回のマイナーチェンジでエンブレムをふたたび日産に戻しました。それと同時にハイブリリッドモデルに進化したADAS(先進運転支援システム)のプロパイロット2.0を搭載しました。
プロパイロット2.0の最大の特徴は高速道路でのハンズオフドライブを可能にしたことにあります。従来はステアリングから手を離すと注意されたものが、プロパイロット2.0では条件を満たしているときには、ステアリングから完全に手を離してドライブができるようになったのです。
試乗会のベースは山梨県の河口湖周辺です。まずはナビゲーションで目的地を設定します。今回は大月インター近くの大月市役所に設定しました。
ナビの案内に従って、河口湖インターから中央自動車道河口湖線に流入します。料金所ゲートを通過し、本線に入るまではドライバーが速度、ステアリングともに操作します。本線流入後に右ステアリングスポークにあるプロパイロットのスイッチをオン、続いてセットボタンを下向きに操作してプロパイロットを作動させます。
セットボタンの操作とほぼ同時というタイミングでメーター内のプロパイロット系インフォメーションが緑色となり、ハンズオン、つまりステアリングから手を離さないでのドライブが可能である状態となります。
この状態は従来型プロパイットと同じ作動となります。およそ2秒後、インフォメーションが青に変わり、ハンズオフつまり手放し運転が可能な状態となりました。その印象は「マジすげえ」です。
躊躇せずにステアリングがから手を離すと、何もなかったかのようにクルマが走り続けます。クルマは車線の中央を維持し続けますが、その際の動きがまったく無理がないのです。ドライバーがクルマの動きを調整しながらステアリングを切っているような感じです。
これが実現できているのは、スカイラインのステアリング機構がバイワイヤであることと、3D高精度マップによる緻密なコントロールが生かされた結果と言えます。
プロパイロット2.0が作動するためにはいくつかの条件があります。なかでも大きな条件が60km/h以上でかつ制限速度内で走行していること、3D高精度地図データが存在する高速道路であることなどです。システムが道路標識を読み取って速度を調整しますので、プロパイロット2.0を利用して走るということは、渋滞でない限りつねに制限速度で走ること(設定で+10km/hにできますが、標識検知で速度が下がるときは標識速度まで下がります)になります。
中央道河口湖線を大月方面に向かって走り、新設された富士吉田西桂スマートICに近づくと、インフォメーションの表示が青から緑に変わりステアリングに手を添えるように促されます。この部分の3D高精度地図データが存在しないかららしく、ICを過ぎてしばらくするとふたたび表示が青になり、ハンズオフ走行が可能となりました。
都留ICを過ぎ、少し進むと大月方面に行くために右に車線変更を促されます。この際もステアリング右スポーク上のスイッチを押すだけで自動的に車線変更を終わらせます。車線変更の動きはじつにスムーズで人間が運転しているときと変わらない動きです。
そのままトンネルに入り、少し走ったところでインパネ内の表示が青から緑になりステアリングを持つことを促されます。トンネル内はGPS信号が受信できないので、ハンズオフ走行はできないというわけです。
トンネルを出るとすぐに流出路となるため、ハンズオフのままでの流出路への車線変更は試せませんでしたが、復路で河口湖インターを出る際は、手前1km程度から案内が発せられ、手順に従ってステアリング右スポーク上のスイッチを操作すると絶妙のタイミングでウインカーが作動、続いてステアリング、速度が制御されスムーズに流出しました。
日産はカタログにこのプロパイロット2.0について「自動運転ではありません」と明記しています。確かに自動運転ではなく、運転支援ではありますが、間違いなく自動運転へ踏み出していることはたしかです。
長距離運転時の単調な高速走行をアシストしてくれるのは、かなり助かります。そして、その運転アシストがドライバーや同乗者を一切不安にさせない仕上がりになっているところは大きく評価されるべきでしょう。
(文/写真・諸星陽一)