ここでは、新型ダイハツ・タントのシートアレンジと積載性についてチェックしていきます。 注目は、運転席の超ロングスライドです。540mmもの前後スライド機能を備えており、後席近くまで運転席を移動させることができます。これにより、車内ウォークスルーが容易になるだけでなく、助手席側の後席に座る子どものお世話や荷物へのアプローチが格段に楽になります。また、助手席も380mmと十分な前後スライド量を確保しています。 荷室側は、580mmという低めのフロア高と1061mmという大開口高が特徴で、開口幅も1007mmが確保されています。 後席の格納は、リヤドア側からも荷室側からも操作できる左右分割ワンモーション格納を採用。背もたれにあるレバーを操作するだけで背もたれの前倒しが可能になります。 後席はもちろん左右別々にスライドが可能で、スライド量も240mmと十分。ただ、後席スライドを最後端にしていると手提げバッグが積める程度の奥行きしかありませんから、荷物をラゲッジに積む際は、4名乗車時でも後席スライドを少し前寄りにする必要があります。とはいえ、最後端にしなくても広い足元スペースが確保されているので、心配は無用です。 スタッフ3名乗車でスチールや動画の撮影機材を積み込んでみると、後席は240mmのうち半分くらい前に位置させて、ラゲッジと1名分空いた後席のスペースに積むことでクリア。容量的には日常使いなら不足はないはずです。 多彩なアレンジが可能な新型タントですが、疑問に思ったのは、後席のスライドが荷室側から操作できない点です。後席のスライド用のレバーは室内側にしかないため、リヤドア側に回って操作する必要があります。 その理由について、新型タントのチーフエンジニアである田代正俊氏に伺ってみました。 タントのユーザーの場合、リヤゲートを開けずにスライドドア(ミラクルオープンドア)側からすべての操作を完結させる人が少なくないそうです。確かに、ミラクルオープンドアだったら大きな荷物も出し入れしやすいし、シート操作も十分にできます。 もちろん荷室側からも後席スライドができれば便利ではあります。しかし、「軽自動車の価格帯」を守ることを大切にしている新型タントは、「良品廉価なクルマ作り」を掲げています。荷室側からも後席の前後スライドを可能にするのは容易でしょうが、それを実現すると、数千円、数万円のコスト高が発生します。 「良いクルマを廉価で届ける」ためには、円単位以下、銭単位でのシビアなコスト計算が必要(もちろん軽自動車だけではありませんが、より厳しいコスト管理が必要)。そのため、あまり使われないリヤゲート側からの操作性向上を図るよりも、運転席の超ロングスライドなど、室内側の装備にお金を掛けることを決めたというわけです。もしも今後ユーザーニーズが高まれば、荷室側からも後席スライドができるよう改良が施されるかもしれませんが。 新型タントは、122万400円〜187万3800円という比較的リーズナブルな設定といえます。売れ筋では、ノーマル仕様のNAモデルは150万円以下、ターボも約155万円、カスタムのNA/2WDは160万円台後半、最上級のカスタム(ターボ/2WD)も175万円程度に抑えられています。 少しであっても価格アップを避けることで、勝負をかけているタント。その評価は、今後のモデルライフを通じて問われることでしょう。 (文/塚田勝弘 写真/長野達郎)●タントはスライドドア側からすべての操作を行うユーザーが多い
この記事の著者
塚田勝弘
1997年3月 ステーションワゴン誌『アクティブビークル』、ミニバン専門誌『ミニバンFREX』の各編集部で編集に携わる。主にワゴン、ミニバン、SUVなどの新車記事を担当。2003年1月『ゲットナビ』編集部の乗り物記事担当。
車、カー用品、自転車などを担当。2005年4月独立し、フリーライター、エディターとして活動中。一般誌、自動車誌、WEB媒体などでミニバン、SUVの新車記事、ミニバンやSUVを使った「楽しみ方の提案」などの取材、執筆、編集を行っている。
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