80〜90年代の日本車デザインを振り返る本シリーズ。今年6月、あらたにカローラ スポーツが登場したのを機に、番外編として歴代カローラのデザインを振り返ります。
FF化を果たした先代(5代目)は、広く快適なジャストフィットセダンとしてヒット作に。バブル経済を目前に日本全体が贅沢さを享受し始めた1987年、先代のイメージを継承しつつ、ユーザーの満足度アップに目を向けたのが6代目カローラです。
テーマである「クラスを越えた世界のハイクオリティセダン」を実現するため、まずは全長・全幅を広げつつ全高を20ミリ減(4ドアSE)。ワイド&ローという分かりやすいスタイリッシュさに加え、クサビ型だったキャビンは緩やかなカーブを描いて落ち着き方向に。
さらに、徹底した質感向上は「感性品質」をキーワードとし、エクステリアにおいては空力にとどまらない面一化を追求します。そのため、パネル間のすき間は極力少なくされ、角Rを柔らかにしたボディは高い凝縮感を獲得。
前後ランプは先代を基本としながら、ボディに準じスリム化することで質感を上げます。とくに、リアランプは横に広げてパーツの品質感を上げ、さらにメッキモールを加えることでマークⅡレベルの高級感を表現。
インテリアは、80年代初頭の直線基調から曲面を使った一体成形で次の世代につながるもの。フルトリムの精緻な作りと、応接間のようなエンジ色のシートはボディ同様「感性品質」がテーマで、カタログには「香りまで計算した」と謳われました。
全高減など、機能よりも上級感を優先したかのような6代目は、自動車デザインとしては後退にも思えます。しかし、低く優雅で、陶器のような輝きを持つボディは多くのユーザーが支持、ここは商品企画による総合力と言えそうです。
●主要諸元 トヨタカローラ 4ドア SEリミテッド(4AT)
型式 E-AE91
全長4195mm×全幅1655mm×全高1365mm
車両重量 960kg
ホイールベース 2430mm
エンジン 1498cc 直列4気筒DOHC
出力 85ps/6000rpm 12.5kg-m/3600rpm
(すぎもと たかよし)